チームバスに乗り込んだDF立田悠悟(たつた・ゆうご/清水エスパルス)が、取材陣の要望に応えてふたたびミックスゾーンに戻ってきた。4失点を喫したあとだけに足取りは重く、表情も硬い。

 そして、絞り出された言葉の端々に、悔根がにじんでいた。


長身を見込まれ守備ラインを託された立田悠悟だったが...

「1戦目、2戦目に出させてもらって、自分としてはビルドアップも通用する、ヘディングも通用すると思っていたんですけど、正直、今日やってみてレベルの差を感じました。自分のなかで勘違いをしていたのかなって感じていて……」

 3バックの統率者として責任を重く受け止めているのが、その口調、その表情から伝わってくる。189cmの長身の立田が、心なしか、小さく見えた。

 中国で開催されているU-23アジア選手権。準々決勝でU-23ウズベキスタン代表と対戦したU-21日本代表(森保ジャパン)はビルドアップの拙(つたな)さを狙われ、次々とゴールを割られた。

 終わってみれば0-4――。完敗だった。

 なかでも立田が悔やんでいたのが、2失点目の要因となるミスだった。

 ゴールキックからのリスタートを日本はショートパスをつないで展開しようとしたが、敵のプレッシャーが強く、ボールを前に運べない。そして、MF井上潮音(いのうえ・しおん/東京ヴェルディ)からのパスが立田にわたったとき、そのミスが起きた。

 敵をかわそうとしたところを奪われ、ゴールを許してしまったのだ。

「前半に3点を獲られて試合が決まってしまった感じですけど、やっぱり自分のミスの2点目が大きかったと感じています」

 もっともこの場面、GK小島亨介(早稲田大)がゴールキックをショートパスで3バックの左のDF古賀太陽(柏レイソル)に預けた瞬間からウズベキスタンに狙われていて、立田がパスを受けた時点で完全に「ツモられて」いた。

 しかし、立田にとって、それはなんの慰(なぐさ)めにもならなかった。


「GKとの距離も近かったので、返すにしてもとかいろいろ考えてしまって、ああなったんですけど、割り切ってしまえばよかったというのは終わったあとに話しました。DFとして、あの位置であのプレーはいらなかった」

 危険な自陣ゴール前で、なぜ、ショートパスをつなごうとしたのか――。

 その理由のひとつは、それがチームコンセプトだったからだろう。

 チームを率いる森保一監督は、GKから攻撃を組み立てることを奨励している。ショートパスという「餌」に相手が食いつけば、その後方にスペースが生じる。相手のプレスをかいくぐり、そこまでボールを運べれば、ビッグチャンスを作ることができる。

 しかし、いくらコンセプトとして掲げられているからといって、相手の罠にみすみす飛び込んでいく必要はない。古賀が振り返る。

「監督から、チャレンジしてほしい、と言われてはいたんですけど、失点したら元も子もない。その辺はピッチのなかで判断して、はっきりゴールキックを前に蹴ることも必要だったと思うので、判断力というか決断力が足りなかったと思います」

 また、立田自身も、足もとのプレーに自信を持っていた。

「長身ですけれど、自分の持ち味は足もと。縦パスやロングパスといったストロングの部分を出していきたい」

 タイとの第2戦を終えたあと、立田はこんなふうに語っていた。連続してスタメンに選ばれた1戦目、2戦目で自身のプレーに手応えを掴み、自信を膨らませつつあった。

 だが、膨らんだ自信は、ウズベキスタン戦で弾けて散ってしまった。

「アジアのなかには、上には上がいると感じましたし、今回(昨年5月のU-20ワールドカップでレギュラーだった)中山(雄太/柏レイソル)選手、冨安(健洋/シント=トロイデンVV)選手が選ばれていないなかで出させてもらったのに、こういう結果に終わって、アピールという部分で難しくなってしまったなと感じています」

 そう悔やむと、さらに、こんなふうに言葉を重ねた。

「チームとしてやろうとすることは1戦目からはっきりしていましたし、やれるというふうにも感じていたんですけど、今日は相手の速さや強さのほうが上で、後手に回ってしまった。戦術どうこうというより、個人のところで負けたと感じています」

 昨年12月、タイで開催されたM-150カップの2試合目、北朝鮮戦で3バックの中央に抜擢されて以来アピールを積み重ね、自身の立ち位置を確立しつつあっただけに、立田が気落ちするのも無理はない。

 ただ、昨シーズンの取り組みと成果を思うと、「しかし」と思わずにはいられない。

 清水ユースからトップチームに昇格した昨シーズン、公式戦での出場はルヴァンカップ3試合にとどまった。

「不甲斐ないシーズンでした」

 立田はそう振り返ったが、不甲斐ないままで終わらせなかった。身体の可動域を広げたり、瞬発力やスピードを高めたりするトレーニングやヨガに励み、根本からの肉体改造に取り組んだのだ。

 M-150カップの際、立田は自身の成長を感じ取っていた。

「自分でも身体が動くようになったな、成長しているな、っていう実感があります。自分のように大きい選手で、機敏に動けて、ボールを動かせる選手はあまりいないと思うので、そこはもっと突き詰めていきたい。違いを見せていきたいと思っています」

 昨シーズンが、試合に出ていないからこそ取り組めることに挑戦した1年だったなら、今シーズンは、試合に出なければ得られない経験を得る1年になる。

 幸い、清水エスパルスはヤン・ヨンソンを新監督に迎える。外国人監督は、過去の実績にとらわれず自分の目を信じて、若い選手を積極的に抜擢する傾向がある。それが、チーム再建を託された新監督なら、なおさらだろう。

 この大敗を糧(かて)に清水でレギュラーの座を掴み取り、J1で揉まれて成長する――。その目標が成し遂げられたとき、ウズベキスタン戦で味わった屈辱に、大きな価値が生まれる。


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