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今月のヘンタイ端末はこれだ!





オレンジ

Videophone

販売価格(当時):約21万円

デカくて重くて武骨なデザイン! 夢のスマホになることなく消え去った幻の迷機!



スーツから颯爽とスマホを取り出し予定表を確認し、ビデオ通話で取引先と会話する。今や珍しくもなんともない機能を、今から17年も前に実現しようとした製品があった。

それが2000年に発売されたオレンジの『Videophone(ビデオフォン)』である。当時はまだ日本でドコモが白黒画面によるiモードサービスを始めたころだった。

『ビデオフォン』の本体サイズは縦20×横8×厚さ3僉上部はカメラとアンテナがあるため横幅は11僂砲覆襦重量も数百グラムと重く、スーツの内ポケットに入れることは不可能だ。スマホのOSはウィンドウズCEで当時の多くのPDA(デジタルアシスタント端末)が採用したもの。ディスプレイサイズは3.9インチと大型で256色だがカラー対応。当時とすればかなりのハイスペックな仕様だ。



本体のデザインは武骨というしかなく、工業向けの製品と思えてしまう。ビデオ通話用のカメラは本体左側面から大きく飛び出してしまっている。画質は恐らく10万画素レベル。前後に約200度回転し、自分の顔だけではなく会議中に出席者やホワイトボードを相手に送るなんてことも想定していたのだろう。『ビデオフォン』があればどこでも会議が出来る、そんな夢の端末になるはずだった……。

しかし夢は現実にならなかった--。通信方式は海外でメジャーな2G(GSM)に対応し、音声回線を使うため約0.03Mpbsの速度しか出せなかった。これは今のスマホの速度の1/10000以下だ。カメラのフレームレートも12fpsと遅く、パラパラ漫画レベルの静止画を送るのがやっとだったに違いない。



それでも開発者たちはこの端末を日々使いこなしてもらえるよう所々にアイディアを埋め込んだ。ディスプレイは半透明のプロテクターで覆われており、これを後ろ側に回すとビデオ通話がしやすいように本体を立てるスタンドにもなった。



当時はスクリーン保護フィルムなんてものは無く、画面保護とスタンドを一体化させるとはなかなかいいアイデアだ。本体の右側面には握りやすい大きめのスタイラスペンが装着されており、画面の入力はこのペンを使って行なった。なお指先タッチできるスマホは、この7年後に登場したiPhoneまで待たなくてはならなかった。



『ビデオフォン』はイギリスの通信キャリア、オレンジが新たに始めた2Gの高速サービスに対応し、次世代のモバイル端末としてビジネスユーザー向けに発売された。だが、販売価格は1300ポンド、当時の価格で約21万円もしたのだ。

しかもビデオ通話をするには、相手もこの『ビデオフォン』を持っていなくてはならず、通信料金は通常料金の3倍も高かった。そして決定的な短所は、それらのコストをかけてもビデオ通話の品質は実用レベル以下だったのである。

『ビデオフォン』が市場に出た翌2001年には高速な3G方式のサービスが日本で開始。『ビデオフォン』も3Gに対応していれば商業的に成功したかもしれないが、当時のハードウェア技術では本体サイズを小さくすることはできず、結局は歴史の一ページにも名前を残せぬまま消え去ってしまったのだ。

山根康宏(やまねやすひろ):香港在住の携帯電話研究家・ジャーナリスト。世界の携帯電話事情を追い求め、1年の約半分を海外で過ごす。携帯電話1500台、SIMカード500枚以上を所有するコレクターでもある。

※『デジモノステーション』2018年2月号より抜粋。

text山根康宏