タワマンはブームが去り「売れずに困っている」との声があがっている(写真はイメージ)


 最近、「東京のタワーマンションは30年後にスラム化」などという物騒な記事が目につくようになった。2000年以降、東京では新築のタワーマンション(以下、タワマン)が湾岸エリアを中心に続々と供給され、活況を呈した。だがここに来て、東京五輪を前に売却を図る所有者から「売れずに困っている」という声も聞かれる。

 筆者も先日、ある個人投資家からこんな話を聞いた。

「湾岸エリアのタワマンを購入した中国人やロシア人が五輪を前に売却しようとしているが、売るに売れない状況だという。調べてみたら、そのタワマンではかなりの物件が売りに出ていて、8000万円で取得した物件なら2割減の6400万円にしないと売れないらしい」

 数年前から、日本の居住用不動産市場には中国人をはじめとする外国人が数多く参入している。しかし、以上の話が本当なら、外国人投資家らは「東京の不動産市場でババを引いてしまった」ということになる。

 実際のところはどうなのだろうか。不動産専門のデータ会社、東京カンテイに尋ねてみると、次のようなコメントが返ってきた。

「タワマン市場はまったく動いていないわけではありません。けれども、価格を高く設定すると買い手が見つかりづらく、売却期間が長引く傾向にあります。新築、中古ともに価格が高くなりすぎているため、投資家を含めた購入検討者は様子見に転じています」

 一時期、外国人の個人投資家がこぞってタワマンに触手を伸ばしたが、中古市場ではここに来て「手詰まり感」が出てきているという。

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ブレグジットをものともせず中国人は英国に投資

 日本の住宅は2015年をピークに中国人による「爆買い」の対象となったと言われるが、某不動産業者の営業マンは「最近はすっかり下火になりました」と打ち明ける。“不動産大好き”中国人は一体どこへ行ってしまったのだろうか。

 実は、中国人投資家がいま熱い視線を向けているのが英国である。

 近年は人民元に対するポンドの下落もあり、「2017年、中国人はたった90日で36億ポンド(約5200億円)に相当する英国の不動産を購入した」(中国メディア)とも報じられた。中国人による英国での不動産投資の対象は住宅もあれば商業ビルもある。現在、「外国人による英国の不動産投資の30%近く以上が中国人や華人で占められている」(同)と言われている。

 それを象徴するのが、ロンドンの金融街にそびえ立つ商業ビルである。金融街のシティには個性的な意匠のビル群があるが、ロイズ保険組合の本社ビルと、ガラス張りタワーの「20フェンチャーチ・ストリート」はすでに中国資本に買収された。第2の金融街といわれるカナリーワーフの「20カナダ・スクエア」や「5チャーチル・プレース」も中国企業の手に落ちた。

 ロンドン市内では住宅投資も盛んに行われている。西欧で最高の高さといわれる「ザ・シャード」は、ホテル、オフィス、マンション、商業施設を持つ複合ビルだが、地上300メートル超の高層ビル内の住宅部分は、中国人をはじめとする外国人投資家に大人気だという。現地の不動産会社によれば、テムズ川沿いのウォーターフロントの新築物件も引き合いが殺到しているらしい。

 世界の投資家の間でブレグジット(英国のEU離脱)を悲観視する声は少なくないが、中国の上位の投資家たちは、そんな声はものともせずに英国に関心を向ける。米国の総合不動産サービス大手のJLLが発表した「2017年版 JLL不動産投資集中度インデックス」によれば、世界の投資家が投資する不動産は依然としてロンドン(2位)、ニューヨーク(9位)などグローバル都市に集中している。ちなみに1位はオスロで、東京は30位だ。「このまま行けば、東京の不動産は世界の投資家から見向きもされなくなる」と危惧する声も聞かれる。

日本の不動産市場の特殊性

 日本と英国は同じ島国であり、同じG7のメンバー国でもありながら、不動産市場の特性は大きく異なる。不動産投資で成功したロンドン在住の日本人であるK氏はこう語る。

「日本の不動産市場の特徴として、本来の価値、個別の価値が査定金額に反映されにくいことが挙げられます。例えば中古マンションの場合は、取引事例を元に“相場”が作られてしまいます。タワーマンションが売りにくいのも、相場が作られてしまうためです。

 また、日本の戸建ては『木造の家』を基準に制度設計されているので、建物の価値は年を追うごとに下がり続けていきます。日本の木造住宅は購入後4年経つと価格が下がり始め、減価償却の耐用年数である20年を過ぎると、上物の価値はゼロになり、土地だけの価格になってしまいます。地震や台風などの自然災害が多いのも致命的です」

 一方、英国では築何百年という歴史ある住宅に住むことがステイタスであり、むしろ「古い家」が価値を帯びるという。化粧直しをしながら売却することで、売主は売却益を得ることができるのだ。英国で過去25年以上にわたり住宅価格が右肩上がりを続けているのは、このような事情と無関係ではない。

 ちなみに、住宅投資のエキスパートであるK氏に「日本では、どこに投資物件を持っているのか」と尋ねると、「東京にはありません」という。その理由をK氏は次のように語った。「東京では、中古市場で売ろうと思ってもなかなか良い価格では売れません。日本人は新しい物件を好むので、購入者が少ないからです」

 こうした日本の不動産市場の特殊性も、外国人投資家を遠ざける一因になっているのかもしれない。さらに英国と異なるのが、人と金の流入に対する寛容度だろう。私たちはそのことを真剣に考えなければならない時期に差し掛かっている。

筆者:姫田 小夏