東北大と共同開発した「シェフメイトグラスパー」

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 長靴やレインウエアの製造に始まり、80年以上の歴史を持つ弘進ゴム。特に業務用のゴム長靴は、国内トップの2―3割のシェアを誇る。雨の日に履くレインブーツのほかに、漁業や農業、食品工場などさまざまなシーンで使われ、それぞれに求められる性能も異なる。業界のニーズに応じた豊富な製品展開で支持を得ている。

 その一つ、調理場用スニーカーのシェフメイトグラスパーは、現場の「滑りにくい調理場靴が欲しい」との声から生まれた。潤滑、摩擦、摩耗を専門にする東北大学大学院の堀切川一男教授と靴底を共同開発した。ソールと床の静摩擦と動摩擦を高め、水や油でぬれた床でも滑りにくく、滑り出してもすぐに止まって転倒を防ぐ。このスニーカーは2012年に発売し、翌13年の「ものづくり日本大賞」で優秀賞に選ばれた。

 電子商取引(EC)サイトの普及で流通形態が変化する中、3代目社長の西井英正は「ユーザーにどう近づくか」を課題に挙げる。一般消費者だけでなく、海外の業者もホームページを通じて連絡してくることもあるため、「SNS活用やホームページの拡充による商品周知にも取りかかる」(西井)。

 売上高の6割弱を占める業務用の長靴やスニーカー、レインコートなどシューズウエア部門を柱に、近年は新事業創出にも力を入れる。産業用ホースやシート、介護用品など多岐にわたるが、すべてにおいて樹脂やゴムの加工技術が生きている。

 特に自動車や建機、農機のエンジンルーム内に使われる成形ホースの生産が前年比10%以上の割合で伸びている。中興の祖で現会長の西井弘が始めたこの事業が新たな収益源に育ちつつある。

 トヨタ自動車東日本(宮城県大衡村)のサプライヤーや域内企業が集まる「ものづくり研鑽会」に参加。そこで学んだ段取り改善や工数削減などのカイゼン活動をシューズウエアの生産にも生かし、「全社的な品質向上と生産コスト削減につなげる」(同)。

 ゴム長靴の国内トップシェアの座に甘んじず、時代や産業界のニーズに合わせた柔軟なモノづくりが会社を支えている。
(敬称略)
(文=仙台・苦瓜朋子)