「遅すぎた」21歳での海外挑戦 ハリルの“秘密兵器”加藤恒平が痛感「勇気だけじゃ足りない」

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【直撃インタビュー|後編】東欧を渡り歩く“雑草魂”の男、「海外移籍」の持論を語る

 ドイツの名門ハンブルガーSVでプレーする20歳のMF伊藤達哉や、昨夏にオランダ1部フローニンゲンへ渡った19歳のMF堂安律など日本の若手選手が欧州で躍動している。

 彼らに続き、21歳にして日本代表のレギュラーに定着したMF井手口陽介も、ガンバ大阪からイングランド2部リーズ・ユナイテッドへ完全移籍。すぐにスペイン2部クルトゥラル・レオネサに期限付き移籍され、現地時間21日のオサスナ戦でデビューした。

 井手口は6月に開幕するロシア・ワールドカップ(W杯)での活躍が期待される一人だが、本大会まであと半年という時期に出場機会を失うリスクを犯してでも海外移籍を選択。かねてから“できるだけ早く海外で”という強い意志を公にしていた。

 こうした20歳前後で海外移籍を決断する選手が増えるなか、立命館大学在学中の2010年に21歳でアルゼンチンへ渡った加藤恒平(PFCベロエ・スタラ・ザゴラ)は、自身の体験を基に「(海外移籍が)21歳ではすごく遅い」と話す。

「僕が21歳でアルゼンチンに行った時、例えば20歳の選手でもすでに3チームぐらい渡り歩いている選手がいました。アルゼンチンの国内だけでも3クラブ目だよっていう選手がいたりして。早い段階でプロの厳しい世界に飛び込み、そこで生きていく力とか、生き抜いていく力を持っていた。アルゼンチンで生き残るって、すごく大変なことですからね」

“覚悟”がなければ海外での成功はない

 試合に勝たなければお金がもらえず、家族も養えない。そうしたアルゼンチンの厳しい環境で過ごすなかで、「15、6歳の頃からそういう世界にいる選手を見ていたら、21歳はすごく遅いなと感じました」と危機感を覚えた。まだ10代の若者たちが、ピッチの上で命を削るようにして高みを目指す姿に加藤は猛烈な刺激を受けたという。

 そこから実際に海外へ飛び出した加藤はモンテネグロ、ポーランド、ブルガリアと渡り歩き、欧州でのプレーは今年で5季目を迎えた。「特に育成年代で代表に入っている選手は、自分と同じ世代の選手がプレミアリーグなどでプレーしているのを見て、もっと若いうちに(海外に)出ないといけないというのを自然と肌で感じているんじゃないかなと思います」と、日本の若手に意識の変化が訪れていると感じ取った。

 ならば……と、加藤には海外に出る上での心構えを聞いた。環境や文化の異なる場所での挑戦は、どれだけ実力があろうと、どれだけ高い意識を持っていようと“覚悟”がなければ成功はないと、言葉に力を込める。

「特に海外の場合、言い訳なんていろいろと見つけられるんです。サッカーって自分以外に21人の選手がピッチにいるし、審判や監督もいる。ピッチ状況や天候もそうです。食事が合わない、監督が分かってくれないとも言うことができます。でも、言い訳を探してしまったら、そこで成長は止まると思っています。そういう時にこそ、自分をしっかり見つめ直して、『試合に出られないのはなんでだろう』って自分と向き合います。

 極端な話、(リオネル・)メッシだったらどこのクラブでも出られるじゃないですか。それはなんでかといえば、もちろん誰よりも上手いし結果を出しているから。単純に自分が下手だから出られないだけなのに、それを環境のせいにするのは違う。そうなったら結局、努力するしかないんですよ。

 勇気を持って海外に行くことはすごく大事です。でも、勇気を持って行くだけだったら途中で帰ってしまう選手が多い。僕が海外に行く時に一番大事にしていたのは、プロとしてやっていくという覚悟。それがないと厳しい。自分がその仕事で食っていくとなった時には、勇気だけじゃ足りないんですよね」

ピッチ外の振る舞いも「すごく大切」

 そうしたキャリアが認められる形で、昨年5月に日本代表のバヒド・ハリルホジッチ監督から“サプライズ招集”された加藤だが、元々海外志向は強かったという。今では海外メディアのインタビューに堂々とした英語で受け答えするなど、ピッチ外での振る舞いも含めてしっかりと適応している。こうしたところにも、揺るがない覚悟と弛まぬ努力がにじみ出る。

「本当に毎日100%で練習して、練習以外のところでもサッカーのことに費やしています。ただ良いプレー、悪いプレーだけじゃなく、ピッチ外のところもクラブの人にしっかり見てもらうこともすごく大切だと思います。クラブの人がしっかりと見てくれて、信頼にもつながる。そして、そういう噂はファンの耳にも届きますからね」

 加藤はこれから海外へ挑む選手たちにも「海外でサッカーをすること」について、真摯に向き合ってほしいと語った。

<Profile>
加藤恒平(かとう・こうへい)
1989年6月14日生まれ。ブルガリア1部PFCベロエ・スタラ・ザゴラ所属。立命館大在学中に21歳でアルゼンチンへ留学。その後、FC町田ゼルビアを経てモンテネグロ、ポーランド、ブルガリアと東欧クラブを渡り歩いている。2017年5月、バヒド・ハリルホジッチ監督により日本代表に初招集された。

石川 遼●文 text by Ryo Ishikawa

フットボールゾーンウェブ編集部●写真 photo by Football ZONE web