ギリシアで見つかっていた「9000年前に18歳だった女性」の骨格をもとに、生きていた頃の顔を解剖学などの科学的見地に基づいて正確に再現する試みが行われました。

Forensic Facial Reconstruction Reveals 9,000-Year-Old Face

https://news.nationalgeographic.com/2018/01/archaeology-agvi-greek-stoneage-facial-reconstruction/

再現された女性の顔模型がコレ。「Avgi」と名付けられたこの女性は、少し険しめの表情やガッシリとした下あごなど、現代のヒトとは少し異なる顔つきをしていることがわかります。ちなみに、黒い服を着ているように見えますがそれは錯覚で、胸から上の部分だけの胸像として作成されています。



なお、彼女に付けられた名前「Avgi」は、「夜明け」を意味するギリシア語からとられたもの。Avgiが生きていた紀元前7000年ごろは新石器時代に分類される時代で、人類が「石」から「青銅器」の道具を手に入れて大きく進歩する「夜明け」の段階にあったことからこの名前が選ばれているとのこと。実際にAvgiの顔を再現する様子が以下のムービーにまとめられています。

ベースとなったのが、この頭蓋骨。1993年にギリシアで発見された化石を3Dスキャンし、3Dプリンターで再現したものが使われています。



まずは顔の部分に小さな棒を立て、筋肉を再現していきます。この棒は、解剖学などに基づいて推定された肉の厚さを場所ごとに示しているもの。きちんとした裏付けをもとに、当時の顔が再現されていきます。



唇の周りの口輪筋や、あごを動かす側頭筋などを盛り付け……



まぶたや顎の周りの筋肉をモリモリ。



あわせて首筋の筋肉を再現し……



まぶたを開けると、かなり実際の顔に近づいてきました。



そして皮膚を貼り付けていきます。



作業が進むとリアルさがどんどん増していきます。矯正歯科医であるManolis Papagrigorakis氏によって率いられたこの作業は、内分泌学者や整形外科医、神経科医、病理学者、放射線科医などの協力を得ながら進められたとのこと。



そして肌を着色し、頭髪や眉毛などで仕上げれば再現が完了。髪の色や瞳の色は、Avgiが住んでいた地域の一般的な人口特性に基づいて推測されたものです。



Avgiは女性でありながら、どこか男性を感じさせるガッシリとした顔つきになっていることがわかります。作業に協力したスウェーデンの考古学者で再建を専門とする彫刻家、オスカー・ニルソン氏は、「これまで多くの石器時代の男女の顔を再現してきましたが、時代が進むにつれて顔の特徴が弱まり、『滑らか』になってきているように感じます。一般的な言い方をすれば、現代のヒトは男女はともに顔つきから『男らしさ』が減っていると思います」と述べています。



なお、Avgiの年齢は実際には「18歳ぐらい」と推定されているとのこと。頭蓋骨には15歳ぐらいの特徴がありますが、歯を調査すると18歳であることを示す痕跡が残されているそうです。Avgiの胸像は、アテネのアクロポリスの発掘現場から出土した文化財を中心に収蔵・展示しているアクロポリス博物館で開催されたイベントで公開されています。