(写真提供=SPORTS KOREA)

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想像を超える広範囲でなされている南北合意

1989年の夏、平壌では前年に開催されたソウル五輪に対抗すべく、世界青年学生祭典が開催された。

平昌五輪の開幕前に、北朝鮮の金剛山で南北合同文化行事を開催することを南北間で合意したということを聞き、規模はまったく異なるのであろうが、ソウル五輪と世界青年学生祭典の関係を思い出した。

平昌五輪を巡る南北間の合意が、想像を超える広範囲でなされている。

開会式での南北合同行進には、韓国では保守派を中心に強い反発があるという。2002年の釜山アジア大会のときもそうだった。

まして今回はオリンピックなので、反発はもっと強いだろう。

行進する南北の人数をどう調整するか、課題もある。ただこれに関しては、韓国の人たちがどう判断するかの問題である。

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厄介な問題を押し付けられたのは…

しかし、女子アイスホッケーの合同チームには、スポーツを愛する者として、不快感を禁じ得ない。

IOCがブレーキをかけることを期待したが、追認しただけだった。

しかも、韓国選手の23人に、北朝鮮選手12人を加えて構成し、ベンチ入りは22人で、北朝鮮選手を最低3人はベンチ入りさせるというものだ。

結局、メンバー構成の一番微妙な問題を、セラ・マリー監督に押し付けた格好だ。

本番に向けて選手のコンディションを引き上げ、相手チームの分析に力を注ぐ大事な時期に、気の毒なことである。


(写真提供=SPORTS KOREA)セラ・マリー監督


合同チームに関しては、昨年6月に北朝鮮の張雄(チャン・ウン)IOC委員が、「アイスホッケーなどを単一チームにする問題もそうです。千葉の卓球世界選手権のとき、会談は22回でした。5、6カ月かかりました」と発言したときに、諦めるべき事案であった。

今回の合同チームを含めたIOCの合意に張雄委員は、「満足している」と記者団に語ったようだが、本心なのだろうか。

文大統領の思いやりのない発言

そもそも今日のオリンピックの球技種目は、開催国枠が保証されているわけではない。

日本のバスケットボールも、2年後の東京五輪に出場できるかまだ決まっていない。

韓国のアイスホッケーについても、国際アイスホッケー連盟は開催国枠に消極的だったといわれる。

そのため韓国の男子チームでは、カナダ人などを相次いで帰化させ、強化に本腰を入れていることを示して、出場資格を得ている。現在男子は7人、女子は4人の帰化選手がいる。帰化選手が多いことに批判もあるが、そうしなければ韓国の出場はなかった。

加えて、男子の韓国系アメリカ人、ジム・ペク(韓国名:ペク・ジョンソン)、ペクの紹介で韓国に来た女子のセラ・マリーの指導で、男女とも実力が目覚ましくアップしている。特に環境に恵まれない女子の場合は、その苦労は並大抵ではない。

とはいえ平昌五輪では、1勝でもすれば快挙。

現実的には、次はいつ出場できるか見当もつかないオリンピックの舞台で、必死のプレーで足跡を残すことに意味があるはずだ。

にもかかわらず韓国の李洛淵(イ・ナギョン)首相は、「女子のアイスホッケーはメダル圏にない」と発言している。

韓国ではメダルに関係のない種目は全く相手にされないので、いかにもという発言ではあるが、それならば、最初から出るべきではなかった。

しかも文在寅大統領は選手たちの前で、「不人気種目の悲哀を払拭する良い機会になる」と語っている。

2003年の大邱ユニバーシアードなど過去の例から考えて、平昌五輪では、北朝鮮に振り回されてトラブルが起きる可能性は十分にある。そうした中での政治リーダーのスポーツに対する思いやりがない発言は、トラブルが起きたときの解決を、より困難にさせるのではないか。

英文表記上は2つの「KOREA」が存在することに…

さらに疑問なのが、今回の合同チームの名称は「KOREA」で国旗国歌に代わるものが統一旗と『アリラン』ということになるようだが、そもそもオリンピックで「KOREA」といえば、先にIOCに加盟した韓国を指す。

北朝鮮の呼称は紆余曲折を経て、「DPRK」となっている。

すべての競技種目で合同チームなら「KOREA」の呼称で問題ないのだろうが、女子アイスホッケーだけなので、女子アイスホッケーの合同チームはフランス語表記の「COREE」となる。しかしIOCの公用語の第1言語であるフランス語では、北朝鮮の表記以外はいずれも「COREE」となり、やはりややこしい。

一般論として、合同チーム、統一チームを結成したからといって、南北融和が大きく前進するとは思わない。

しかしながら、朝鮮戦争など朝鮮半島の苦難の歴史、そして何年先になるか分からない統一にしても、混乱は避けられないことを考えると、南北が協力して汗を流した経験は、やはり意味がある。

だからこそ、やるときは国民、少なくとも韓国人の多数から歓迎されるものでなければならない。

今回のような拙速で、強引なやり方だと禍根を残し、統一チーム結成のもっと良いチャンスが来たときに、実現するうえでの阻害要因になりかねない。

(文=大島 裕史)

初出:ほぼ週刊 大島裕史のスポーツ&コリアウォチング