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研光通商は化学工業薬品、健康・栄養補助食品などを扱う専門商社で、創業50年を超える。同社は今年、構造改革の一環として、10年以上利用していたERPシステムを「Oracle Enterprise Resource Planning(ERP) Cloud」にリプレースした。

○経営基盤強化に向け、新たなシステム導入を決定

このプロジェクトを一手に担っているのが、執行役員 経営企画室長を務める松田仁氏だ。同氏は、ERPシステムのリプレースを検討するに至った背景について、次のように語る。

「2015年には創業50年を迎えるということで、新中期経営計画の策定を控えていた一方、国内外のグループ企業全体のガバナンス強化や事業拡大に向けて、経営管理基盤の強化が求められていたことから、基幹システムの刷新を主要プロジェクトの柱の1つに据えることにしました」

経営・事業環境における課題に加えて、システムにおいては、「経営情報を活用する機能の不足」「セキュリティや運用にまつわるコストの増加」「事業拡大への対応の限界」といった課題を抱えていた。

同社はこうした課題の解決に加え、「経営に関わる迅速な意思決定や業務の標準化と自動化」「経営情報の見える化」「ビジネス拡大の基盤の整備」といったことまでを計画していた。

こうしたことを実現するため、「新たなシステムが必要」と判断したというわけだ。

○6つのポイントからOracle ERP Cloudを選択

研光通商は10年以上、経営基盤を支えるシステムとして、国産のERPを利用していた。その間、機能などに不満は抱きつつも、ハードウェアとソフトウェアの保守契約を更新しながら、だましだまし使っていた状況だったという。

しかも、「もともと使っていた国産のERPは導入企業が少なかったので、機能拡張もあまり行われない状況でした。また、対応しているクライアント環境のブラウザのバージョンも古く、セキュリティの問題もありました。さらに、運用のコストも上がる一方だったのです」と松田氏はいう。

リソースを十分確保できないという理由から、なかなかリプレースに踏み切れなかったが、今回、経営側のタイミングとうまくあって、話が進んだというわけだ。

松田氏は、Oracle ERP Cloudを選んだ理由として、次の6点を挙げる。

クラウド型ERPであること

リアルタイムなグループ経営管理ができること

柔軟なグローバル他拠点展開ができること

BIツールが備わっていること

多彩なデバイスが利用できること

将来にわたるトータルのシステムコストの削減

同社は国内の5拠点に加え、海外でも3拠点を展開している。そのため、海外拠点からの利用、国内外の関係会社で同一のシステムを利用可能、グローバル拠点での柔軟な展開といった点から、Oracle ERP Cloud一択となった。

なお、クラウドの導入を検討する際、コストが重要な条件となる場合が多いが、研光通商の案件においては比較検討したクラウドのコストはほぼ並んでおり、採用の決め手にはならなかったという。

さらに、松田氏は、Oracle ERP CloudはBIツールが統合されている点も魅力だったと語る。他のERPの場合、サードパーティのBIツールを連携しなければならず、その開発や運用にかかる負担が生じる。

「BIツールによって、経営層と現場にあるギャップを埋めたいと考えていました。また、ミドルのマネジメント層の理解がバラバラであり、それらを統一させる必要もありました。BIツールによって、企業内の課題を視覚的に見せることで、アクションに生かしていきたい」

コストについては、機能面でのメリットを考慮しなければ、導入後5年で回収できるという。「新システムには、現行のシステムでは使えなかったBIツールなどが含まれており、これまでやっていなかったことに取り組めます。この点を考えると、1、2年でコストは取り返せると考えています」と、松田氏は語る。

○10年に1度のプロジェクトだからこそ、ゼロから全社基盤構築を

今回のERPのリプレースにあたって、松田氏は「現状に固執することなく、ゼロベースで全社最適を目指す」ことを方針としている。その理由を同氏は次のように話す。

「ERPの導入プロジェクトは、10年に1度の大きなプロジェクトとなります。だからこそ、既存の業務に合わせたシステムを構築するのではなく、これから当社がどうあるべきかを考え、それを実現するシステムを構築することを目指しています」

ゼロベースの全社最適――文字にするだけなら簡単だが、実行に移すとなると相当な困難が伴うだろう。今回、執行役員である松田氏が中心となってプロジェクトを進めたことで、ERPのリプレースを全社課題としてとらえて、取り組んでいくことが可能となっている。しかし、IT部門がシステムの都合でERPシステムのリプレースの検討を提案するとなると、経営基盤を作るという全社課題にまで持ち上げることは難しいだろう。

なお、松田氏はクラウドにもデメリットはあると語る。「これまでやってきたことをクラウドだけで実現することは難しい。クラウドを使いこなすには、業務の効率化を図る必要があります」

松田氏は、これからクラウドの導入を検討する企業に向けて、次のようなアドバイスをくれた。

「ボトムアップで行うと、ボタンの掛け違いが起きる可能性があります。トップダウンから現場を巻き込んでいったほうがよいでしょう。また、業務プロセスよりもKPIのレポートといったアウトプットを優先して検討することを薦めます。クラウドであるからこそ、いろいろなシーンで利用することが可能になります。そのメリットを前面に出していったほうが、プロジェクトがスムーズに進むのではないでしょうか」

プロジェクトは本稿執筆時点で進行中であり、作業はスケジュール通りに進んでいるという。

クラウドの導入を単なるシステムのリプレースに終わらせず、企業の構造改革にまで昇格させるには、大きな努力を伴う。だが、そこには新たな局面でビジネスを展開できる世界が待っているのではないだろうか。