医学博士●加藤俊徳氏

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些細なことにイライラする自分に自己嫌悪する。そんなときに感情を抑え込もうとするのはよくない。「自分は今イライラしているな」と、その感情をいったん認め、そのうえで受け流すことが重要だ。イライラを解消するにはどうすればいいか。脳科学者と心理学者に聞いた――。(第5回、全5回)

※本稿は、雑誌「プレジデント」(2016年10月3日号)の特集「毎日が楽しくなる脳内革命」を再編集したものです。

■わけもなくイライラしたときの対処法

自動改札で前の人がつっかえた。コンビニのレジがなかなか進まない。そんな些細なことですぐイライラする自分に自己嫌悪……。

「そんなときは性格うんぬんというより、まずは寝不足ではないか、食事のバランスが崩れていないかどうかをチェックしてみてください」

と言うのは医学博士の加藤先生だ。栄養バランスの偏りがイライラの原因になるというとカルシウム不足を連想するが、たんぱく質やビタミンが不足しても、怒りっぽく情緒不安定になるという。このところ忙しくて外食が続いているという人は、魚や野菜、果実不足を疑ってみよう。

仕事を抱え込みすぎて、何をどの順番ですべきかが整理できていないときもイライラしやすくなるし、朝、出がけに夫婦ゲンカをしたりしても、ちょっとしたことで感情を爆発させやすくなってしまう。

以上のようなケースはイライラの原因がはっきりしているので、それを解決すればいい。問題はそれ以外のケースだ。わけもないのにイライラして怒りっぽくなっているとすれば、やはり脳の使い方が偏っている可能性があると加藤先生は言う。

これを解消するには、青春時代に好きだった音楽を聴くのが効果的だ。

「たとえば高校生のころに好きだった曲を聴くと、当時の楽しかった記憶がありありとよみがえるでしょう。これが記憶系脳番地を刺激するのです」

■3秒で鼻から息を吸い、8秒ですぼめた口から吐く

さらにいいのは、「今はこうだが、あのころはこうだった」というように、現在と過去を比較し、現在の自分を相対的にとらえ直すことができることだ。

「普通に生活していると、目の前のことで精一杯。昔のことを思い出す余裕はありません。定期的に懐かしい曲を聴いて、脳のコンディションを整えるようにしてください」(加藤先生)

「イライラしているな、と思ったら、それを無理に抑え込もうとするのではなく、『今、自分はイライラしている』と認めるようにするといい」

と言うのは心理学者の諸富先生だ。今の世の中は便利になりすぎて、人々の欲求不満耐性が下がっている。不満を自分の内側にためておくことができず、ちょっと不便なことがあるだけで、いらだつ人が増えているのだという。

そこで、森田療法(※)の考え方を、「イライラする気持ち」にも応用してみる。

「感情は抑え込もうとすると逆に大きくなります。『イライラしないようにしよう』ではなく、『ああ、自分は今イライラしているな』とちょっと離れたところから眺めるようにして、その感情を認める。それからそれを受け流す練習をしましょう」

具体的には、可能ならすぐにその場を離れること。場所が変われば気分も変わるからだ。そして、鼻から3秒かけて息を吸い、すぼめた口から8秒かけてゆっくりと吐く。

「これを完全呼吸と言います。感情コントロール法のひとつです」(諸富先生)

種類は何でもいいので、自分の好きなアロマオイルをオフィスの引き出しに常備しておき、その香りを嗅ぐのも即効性がある。イライラが頂点に達しそうになったらトイレに行くふりをして席を立ち、完全呼吸をしつつアロマオイルを嗅ぐ。ぜひ覚えておきたい。

(※)細かいことを気にしすぎる人に向かって、「気にするな」と言うのではなく、気にしていることを認め、それでも日常生活でやるべきことを淡々とやらせるという治療法

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加藤俊徳
医学博士。加藤プラチナクリニック院長。「脳の学校」代表。昭和大学客員教授。1万人以上のMRI脳画像とともにその人の生き方を分析する。
 

諸富祥彦
心理学者。明治大学文学部教授。臨床心理士。千葉大学教育学部講師、助教授を経て現職。中高年を中心に仕事、子育て、家庭関係などの悩みに耳を傾けている。
 

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(ライター&エディター 長山 清子)