1月12日の早朝、大雪で立ち往生したJR信越線の電車から降りる乗客(写真:共同通信社)

新潟県のJR信越線で1月11日夜、大雪のため列車が動けなくなり、乗客約430人が15時間半にわたって車内に閉じ込められた。このトラブルは、菅義偉官房長官が翌日の記者会見で「乗客にとって最善の対応だったのか」と疑問を呈し、国家的関心事にまで発展した。一方で、車内に閉じ込められた乗客の1人が帰宅後、応援が来るまで1人で除雪作業に当たった運転士に「お礼を言いたい」とツイッター上で感謝の気持ちを表し、そのツイートが瞬く間に拡散するなど、JRの対応をめぐって賛否両論の様相だ。


1月12日の早朝、新潟県内で大雪のため立ち往生したJR信越線の車内で、運転再開を待つ乗客。運転再開には15時間半を要した(写真:共同通信社)

記録的な大雪だったのだから運転を見合わせるべきだったという指摘もあった。とはいえ、運休すれば、帰宅の足を奪われた乗客の不満が出るのは確実。JR東日本にとってはぎりぎりの判断だったに違いないが、結果的には裏目に出た。

JR東日本新潟支社は19日に開いた会見で、大雪などで長時間の運転見合わせが生じる場合に備えた再発防止策を発表した。具体的には、近隣バス会社などと乗客救援用バスの手配について協力体制を構築する、除雪作業と平行してバック運転するための計画を検討する、線路の積雪状況を把握するための監視カメラを設置するなどの策を挙げている。

脱線事故を契機に速度規制を徹底

日本海側で起きた冬季のトラブルとして大きなものといえば、JR羽越線脱線事故だ。2005年に山形県庄内町を走っていたJR羽越線の特急列車が突風にあおられて車両が傾き脱線し、5人が死亡、31人が重軽傷を負った。


山形県庄内町を走るJR羽越線に設置された防風さく。2005年に起きた特急列車の脱線事故を契機に設置が進んだ(写真:共同通信社)

この事故を契機にJR東日本は強風対策を強化し、防風さくやドップラーレーダーの設置を進めた。風に対する規制値も見直し、従来よりも風速が遅くても早めに速度規制を行ったり運転を中止したりするという「早め規制」も導入した。規制の徹底ぶりには事故を目の当たりにした地元の住民ですら、「飛行機は飛んでいるのに鉄道は止まる」(タクシー運転手)とぼやくほど。

安全を重視して列車を止めれば、今度は足止めを食らった乗客から不満が出る。過酷な自然環境における鉄道運行は難しい。

今回の信越線のトラブルは、車内に閉じ込められた乗客の多さも注目を集めた理由の1つだ。幹線輸送を担うJRは輸送人員がほかの鉄道事業者よりもずば抜けて多いだけに、何かトラブルが起きればその影響は甚大だ。


では、JRの路線が被る自然災害を原因とする輸送障害は、ほかの鉄道事業者の路線と比べて多いのか少ないのか。今回は、国土交通省が毎年公表する「鉄軌道輸送の安全に関わる情報」を基に、2016年度の大雨、大雪、強風などの自然災害を原因とする輸送障害の件数をランキング形式で並べてみた。輸送障害とは旅客列車が運休または30分以上遅延した事態を指す(旅客列車以外の場合は1時間以上)。JRについては在来線と新幹線を区別して掲載した。

まず、件数のランキングから。JR旅客6社およびJR貨物が1位から7位までを占めた。1位はJR東日本(在来線)の294件。2位はJR西日本(在来線)の173件、3位はJR北海道(在来線)の148件、4位はJR九州(在来線)の143件、5位はJR貨物の141件、6位はJR東海(在来線)の114件、7位はJR四国の37件である。各社とも営業エリアが広いだけにある意味当然の結果である。

東海道新幹線は雪が大敵

意外にも14位にJR東海(新幹線)が入っている。自然災害を原因とする輸送障害の件数は13件。その多くは米原・関ヶ原付近の雪による遅れや富士川の増水による運行規制によるものだ。


豪雪地帯の関ヶ原を通過するJR東海道新幹線。伊吹山の積雪量は世界一とされる(写真:railstar/PIXTA)

新幹線は安全に高速走行できるよう高規格で造られており、北海道新幹線や東北新幹線では万全の雪対策が施されているが、東海道新幹線では米原・関ヶ原付近の雪がネックとなっている。冬場、東京や大阪が好天でもこの付近では大雪という日も少なくない。当地にそびえる伊吹山は山岳地の積雪量世界一としてギネスブックに掲載されているほどだ。

雪が降る日に新幹線が高速走行すると、新幹線が巻き起こす風で線路に積もった雪が舞い上がり、車両床下や台車に着雪。これがしだいに大きくなって雪塊となり、落下した際の衝撃で線路の砂利(バラスト)を飛散させ、周囲に危険を及ばす。このため雪の日に米原付近を走る新幹線は徐行運転せざるをえないのだ。JR東海は除雪を行う専用車両を導入するなどの対策を取り、開業当初と比べ雪による遅延時間を大きく減らしているが、ゼロにするまでには至っていない。

営業エリアが広ければ、それだけ自然災害に遭遇する確率は高まる。そこで、各鉄道事業者における自然災害を原因とする輸送障害件数を営業キロで割った、営業キロ比での件数を算出してみた。営業キロが5km未満の規模が小さい鉄道事業者は除外した。

ランキングの結果は、1位福島交通(福島県)、2位くま川鉄道(熊本県)、5位錦川鉄道(山口県)、7位万葉線(富山県)など地方都市の鉄道事業者が上位に数多く並んだ。東北地方や北陸地方は冬季に大雪で悩まされるし、九州や中国地方は近年、夏季に豪雨に見舞われることが多い。地方の鉄道事業者が上位に多く見られるのは、ある意味仕方ないことといえる。

JRでは65位にJR東海(在来線)が初めて顔を出す。次いで70位にJR九州(在来線)、78位JR北海道(在来線)、91位JR東日本(在来線)、94位JR四国、95位JR西日本(在来線)、103位JR九州(新幹線)、106位JR東海(新幹線)、114位JR貨物、119位JR北海道(新幹線)121位JR西日本(新幹線)、123位JR東日本(新幹線)という順になった。

JRよりも順位の低い鉄道事業者は、大都市圏を営業基盤とする大手私鉄、公営の地下鉄、路面電車が多数を占め、そのすべてが件数ゼロ。逆に言うと、地方の鉄道事業者であるほど自然災害に見舞われる可能性が高い。

全体的には自然災害トラブルは減少傾向

輸送障害にも原因はいろいろあり、車両故障や係員のミスによるものは自助努力で減らせる。人身事故に起因する輸送障害もホームドア設置などである程度は防げる。では自然災害を原因とする輸送障害は減らせるのか。

JRの在来線よりも新幹線のほうが営業キロ比の発生件数が少ないことからわかるとおり、線路などのインフラがしっかりしていれば豪雨で地盤が崩れるようなリスクは少ない。JR東海の新幹線雪対策のように自助努力で遅延時間を減らすこともできる。


鉄道事業者は自然災害への対策を積極的に講じている。JR東日本の在来線を例に取れば、自然災害を原因とする輸送障害は2012〜2016年度の5年間で431件から294件に3割ほど減少した。鉄道事業者全体でも同時期に2014件から1624件まで、2割近く減らしている。

弓なりに約3000kmの長さがある日本列島。多様な気象条件を抱え、災害の多い国だ。台風や雪害に加え、近年はゲリラ豪雨などで自然災害のインパクトが高まっていることを考えれば、どの鉄道事業者も奮闘しているといえる。それでも、信越線の乗客閉じ込めのようなトラブルは起きる。自然災害との戦いにゴールはない。