ぴあが公表した音楽アリーナの完成予想図

横浜市のみなとみらい地区。JR京浜東北線の桜木町駅に近いオフィス・商業街の一角で、昨年12月から大型のコンサート施設の建設が始まった。

チケット販売大手のぴあが、自ら手掛ける「音楽アリーナ」の建設である。土地を三菱地所から借り受け、音楽に特化した地上4階・地下1階建ての施設とする。観客席は1万人規模、投資額は100億円で、2020年春の完成予定だ。

ライブ市場の拡大が追い風に


横浜市のみなとみらい地区では建設が始まっている(編集部撮影)

ぴあによると、民間企業が単独で大型アリーナを建設するのは初めて。ほかの施設はスポーツとの併用が多い中、音楽に特化することで効率的な運用が可能となり収益性を高められるという。

同社が自前でアリーナを建設する背景には二つの要因がある。一つは音楽ライブを楽しむ「コト消費」の堅調さだ。ぴあ総研によると、国内の音楽ライブ市場は16年に約3300億円と10年に比べて約2倍の規模に拡大。

音楽だけではなく、スポーツ観戦や演劇やお笑いといったライブイベントも人気で、チケット販売が好調だ。こうした状況を追い風に、ぴあの業績も2018年3月期は営業利益18億円と過去最高を見込む。自社で会場を保有・運営することで、チケットの販売増にもつなげる狙いがある。

もう一つは2020年以降に予想される施設の不足だ。東京五輪の期間中は競技会場や関連イベントの会場となるため、大型施設でのコンサート開催はかなり制限される。首都圏で1万人規模を収容できる会場の新設は2000年完成のさいたまスーパーアリーナ(さいたま市)が最後。大型施設に限ったことではないが首都圏の音楽施設は老朽化で改修が相次いでいる。


株価は最高値を更新

ぴあは昨年7月にアリーナの建設計画を発表。株価は4000円前後で推移していたが、昨年9月から急騰し、同12月には上場来高値となる7670円をつけた。「特に大きな株価材料が出たわけではないが、アリーナの件を機に好業績株として見直しが進んだ」(大手ネット証券)という。

業績に気掛かりな点があるとすれば、チケット販売システムのセキュリティだろう。チケット予約の大半がインターネットを通じたものになっているが、昨年、不正侵入によって個人データ約15万件の情報漏洩が起き、前2017年3月期決算で2億円の特別損失を計上した。ネット上の決済が増える中、セキュリティ対策は永遠の課題である。


当記事は「週刊東洋経済」1月27日号 <1月22日発売>からの転載記事です

課題はもう一つ。アリーナ建設に投じる100億円は、これまで有形固定資産をほとんど持ってこなかったぴあにとって、大胆な投資案件だ。

イベントの誘致について、ぴあは自信を見せるが、同じみなとみらいでは不動産会社ケン・コーポレーションが2万人規模のアリーナを2021年度に建設する計画だ。

株価がさらに上値を追うには、アリーナの事業採算について投資家の信認を得ることが必要になる。