テレビや映画が動いている映像を再現する仕組みは、静止画を素早く連続的に切り替えていることだと知っている人も多いはず。その回数は1秒あたり24回や30回、そして近年のテレビでは60回以上という速さのため、もはや人間の目はその切り替えを認知することができません。しかし人間の目では無理なことでも、機械を使うとうまくその様子を観察できるはず、ということで、数々のスーパースロー映像のムービーを発表してきたThe Slow Mo Guysが、秒間38万コマという超高速度撮影でテレビが映像を映し出している様子を明らかにしています。

How a TV Works in Slow Motion - The Slow Mo Guys - YouTube

The Slow Mo GuysのギャビンさんがSONY製85インチ4K液晶テレビを前に登場。しかし、今回の撮影に使うのはこのテレビではなく……



この小型テレビ。いまや絶滅危惧種となったブラウン管テレビで、外観からするとサイズはおそらく14インチ。



電源を投入すると、画面には白と黒のノイズ、いわゆる「砂嵐」が表れました。その模様は上から下に暗い部分が動きますが、これはテレビの描画サイクルとカメラのシャッタスピードが同期していないため。



砂嵐を毎秒1600フレーム(1600fps)のシャッタースピードで撮影すると、このように細い砂嵐の帯が上から下へと流れていることがわかります。これは走査線と呼ばれる光の線で、ブラウン管テレビではこの走査線が画面を1秒間に30回上から下に流れて映像を映し出しています。



それでは実際の映像コンテンツを表示させた時にはどんな風になるのでしょうか。ブラウン管テレビ時代に登場したゲーム、「スーパーマリオブラザーズ」をプレイしてその様子を撮影しています。



2500fpsで画面を撮影するとこんな感じ。砂嵐の時と同じように画面の一部だけが帯状に明るくなっていますが、ちゃんとマリオの顔が認識できる状態になっているのが面白いところ。



クリボーに体当たりして死ぬ直前のマリオ。ムービーを見れば、走査線が通ったラインの光が徐々に消えていく様子がわかるのですが、これは光を発するために内部に塗られた「蛍光体」がゆっくりと消えているため。とはいっても、実際の消える速さは数ミリ秒レベルのはず。



さらにカメラのフレームレートを上げて28,500fpsにすると、こんどは横方向に素早く動いている走査線の先端が確認できるようになりました。これはムービーを見てもらうしか確認する方法がありませんが、走査線が左から右に高速で移動して見事に一行ずつ映像を映し出していることがわかります。



そしてカメラの最高フレームレート、「380,117fps」で撮影した様子がコレ。ドットの一つ一つを描きながら走査線が猛烈なスピードで画面を描画していることがわかる映像となっていました。



次にギャビンさんは、4K液晶テレビの映り方を同様にスーパースローで撮影しています。



ゲーム機「Xbox 360」の起動画面をスーパースローで撮影した様子がコレ。画面にはブラウン管のような走査線は表示されず、画面全体が画像を映し出していることがわかります。その一方で、画面が描き変わる時には上から下に順番に切り替わっている様子も確認できます。これはつまり、液晶テレビは常に画面全体を表示する点がブラウン管テレビと大きく異なるのですが、画面の書き替えそのものは同じように上から下へと行われているというわけです。



これはスマートフォンの画面描画でも一緒。iPhoneのホーム画面をスワイプする様子を高速度撮影すると、画面に表示されたアイコンが「カクカクッ」と画面の上から順番に描画されている様子がよくわかります。iPhoneなど近年のスマートフォンの画面は、じつに「ヌルッ」と滑らかに動くものですが、実際にはこのような細かい動きを超高速で行っているだけ、ということがよくわかります。



iPhoneの場合、画面の描画方向はモデルによって「上から下」と「右から左」に分かれているというのも興味深いところ。



最後にギャビンさんは、画面にグッと近づいてドットが表示されている様子を撮影。このような、白いバックに黒い文字が映し出されている画面でも……



実は「赤・緑・青」の3色で全てが表現されていることがわかります。そして、画面に映し出されているのは「黒い文字」ではなく、逆に「白い背景」であるということも面白いところ。



レンズを変え、さらにドットを拡大するとこんな感じになりました。肉眼ではほぼ認識できない液晶テレビのドットは、実はこんなふうになっていることが良くわかります。



しかもこのドットは、縦横比が3:1ぐらいになっており、それぞれが2分割されているというのが驚き。これは、各ドットの明るさの度合いを細かくすることで再現できる色数を増やそうとする仕組みです。



ちなみにブラウン管のドットを拡大表示するとこんな感じ。ドットの形状が全く異なることがわかると同時に、アナログ制御で映し出されるブラウン管テレビには、液晶テレビや有機ELテレビのような高精細度が望めないこともよくわかります。



とはいえ、液晶テレビにも弱点はあります。その一つが、バックライトの光のもれの問題。液晶テレビはその構造上、背面から真っ白な光を照射する必要があるのですが、その際に完全に光をシャットアウトすることができないために、黒く描画したい部分が黒になりきれないという弱点があります。各メーカーの上位機種では、バックライトの光源を細かく分割して制御することで黒を深く沈めようという工夫が行われていますが、それでもよく見れば以下の画像のように黒の部分でもうっすらと光がもれていることがわかります。



この問題を解決できるのは、現時点では「有機ELテレビ(OLED)」しか選択肢がありません。OLEDは各ドットが自ら光る「自発光型」のためにバックライトが不要なので、光の漏れがそもそも存在しないという構造上の強みを持っています。これと同じように自発光型のディスプレイとしては、今や見られなくなった「プラズマテレビ」などが挙げられます。そして実は、ブラウン管テレビも自発光型に分類されるディスプレイ。



有機ELテレビのドットを拡大するとこんな感じ。撮影方法のためか画面がややぼやけて発色もわかりにくくなっていますが、非常に小さなドットが整然と並んでいることはわかります。それにしても興味深いのは、赤のドットだけが面積が小さいこと。これはおそらく、各色ごとの明るさを面積で調節するためだと思われますが、大きく拡大するとこのようなことまで見えてくるというのが面白いところです。