森友学園元正副理事長の籠池泰典氏(Rodrigo Reyes Marin/アフロ)

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 昨年日本を騒がせた森友・加計学園、「もり・かけ」問題は、今年も初頭から引き続き国会やメディアで再燃することが確実視される。忘れてはならないのは、年末から初春にかけて、安倍晋三首相と夫人・昭恵氏の縁故者として当初は優遇措置を受けてきた森友学園元正副理事長の籠池泰典・諄子夫婦が、暖房のない拘置所に勾留され年を越したことだ。

 籠池氏が安倍首相の縁故者から“敵対者”へ転換したきっかけは、単に寄付を受け取ったという事実を述べたことにすぎない。安倍首相が、“私や妻が森友問題に関与していれば安倍首相が議員を辞職する”と国会答弁したことに端を発し、籠池氏が昭恵夫人から100万円の寄付を受け取ったことを証言したことにある。籠池証言では、昭恵氏は首相から渡してほしいと言われたという。明らかに安倍首相夫妻の関与を示す内容だった。籠池氏は、偽証が犯罪に問われる国会で証人喚問に立ち、100万円を受け取った旨の証言した。それに対して昭恵夫人はその事実を否定しつつも、証人喚問はもちろん記者会見にさえ応じていない。その意味では客観的には、籠池氏の主張に軍配があがっている。

 森友問題は国会で野党による追及が続いたが、政府は情報隠蔽を続けた。そうしたなかで数々の情報提供を行い、格安払い下げの森友問題の闇に光を当ててきたのは、籠池氏である。その情報提供する協力者である籠池氏を、なぜ大阪地検特捜部は逮捕・勾留するのか。たとえば元東京地検特捜部検事の郷原信郎弁護士は、詐取したとされる補助金は返却し、捜査資料は家宅捜査で根こそぎ持ち去りながら、籠池夫妻逮捕を罪証隠滅や逃亡の恐れで逮捕したことに疑問を投げかけている。

 昨年7月31日、大阪地検は校舎建設費用への補助金を過大に請求したとして籠池夫妻を逮捕し、8月21日には幼稚園への補助金で詐取があったとして再逮捕した。しかしこの補助金は、森友学園の核心である国有地の格安払い下げの問題とは異なり、校舎建設に木質系素材を利用したことに関する補助である。また幼稚園運営の中での補助金も、自治体行政との問題であり、これまで行政指導が正しく行われてきたかなどの点検が先であり、巨悪を許さないための特捜検察が乗り出す問題なのか、先の郷原弁護士も批判している。つまり明らかに別件逮捕である。

 不当逮捕の怖れがある容疑者を、猛暑の夏から厳寒の冬まで半年も拘置所に拘置しているのである。自由に発言し森友問題の裏が明かされるとまずいということで拘留を続けているとしたら、これはもう国家権力による弾圧といえる。

 一方、森友問題で当時払い下げの承認権限を持つ財務省理財局長だった佐川宣寿氏は国税庁長官に就任し、当時財務省事務次官だった田中一穂氏は政府系金融機関の日本政策金融公庫総裁に就任している。すでに、森友問題は、会計検査院が財務省による格安払い下げの根拠について「根拠不十分」「不適切」と報告し、新たな局面に入った。何人もの官僚たちが法令に違反し不当に処分を行っていたことが、特別国会での会計検査院院長の答弁でも明らかになった。関与した財務省、国交省の官僚たちの行為は、財政法9条「国の財産を適正な対価なく、譲渡・貸付を行ってはならない」に違反する行為であることも、指摘されている。

 ところが、これら官僚たちを訴えた告発状(背任罪と公用文書毀棄罪)は、東京地検特捜部で受理され、大阪地検特捜部に移送されているはずが、捜査や逮捕の動きはいまだ聞こえてこない。結局、安倍首相に逆らう者は逮捕し、恭順を示すものは恩賞にあずかるという不公平な采配に検察自体が加担し、放置しているようにみえる。森友問題を捜査する大阪地検特捜部は、籠池夫妻を拘置所に閉じ込め、不正関与の官僚たちは家族と共に正月を祝う。巨悪を許さない検察特捜部の存在すら問われる事態になっている。

●なぜ大阪地検は事件解明の協力者、籠池氏を逮捕したのか

 森友問題の捜査は、籠池氏を逮捕すれば道が開けるのであろうか。格安払い下げの権限は、財務省や国交省の官僚にあり、一民間人である籠池氏が左右できるものではない。籠池氏が企て要請したとしても、なぜ籠池氏に財務省、国交省の官僚たちが従い、ただ同然の払い下げが実現したのか。安倍昭恵氏が、森友学園が設立する小学校の名誉校長であったことや安倍首相の存在なくして実現するはずはない。

 市民団体は、東京地検特捜部に以下の2点を訴える告発状を提出していた。

(1)背任罪の訴え:国有地払い下げの根拠となっていた2万トンの埋設ごみは、各種資料から考えて存在せず、埋設ごみを理由とする鑑定価格の9割引き、金額でいうと8億円の値引きは、国家財政を損なうものであり、なおかつ2万トンの埋設ごみがないことを官僚たちは知っていた。

(2)公用文書毀棄罪の訴え:森友関連の交渉経過を示す文書記録が廃棄され、また契約文書に関する資料なども廃棄されたとして公表されなかった。

 昨年5月に両告発状が出されていたが、4カ月放置され、9月に東京地検の森本宏東京地検特捜部長が就任したその週の内に受理が決まり、森友問題を所管する大阪地検特捜部に移送されたが、大阪地検特捜部では再び放置されている。

 森友問題が2017年の国会で論議されすでに1年近くになるが、それでもなお国民が関心をそらさず、世論調査でも安倍内閣による措置に納得しないが8割近くを占めている。国民が注目する問題として継続しているのは、下記の4点によると考えられる。

・あまりに非常識な値引きが、国有財産の払い下げで行われた。
・安倍首相が、昨年2月の福島伸享(民進党;当時)衆議院議員の質問に、「私や妻が関与していれば議員を辞める」旨の発言をした。
・昭恵氏が森友学園が設立する小学校の名誉校長に就任していた。
・籠池氏が上記小学校開校の見込みがなくなるなかで、安倍首相とは距離を置き、昭恵氏から100万円を受け取ったことを証言し、その後も縁故者として便宜供与を受けた立場から情報の提供を続けた。

 籠池氏は、証人喚問での証言に加え、その後も格安払い下げの経過について民進党の調査チームで証言したり、ジャーナリストの菅野保氏を通して音声データ、メモ、メールの記録などの物証を公表し、菅野氏も「週刊朝日」(朝日新聞出版)などの媒体でそれを報告した。一方、国会論議で政府は「記録は廃棄された」「記憶にない」「払い下げは適切」といった隠蔽に終始した。

 籠池氏の拘留の理由は、罪証隠滅と逃亡の怖れということであるが、証拠隠滅どころか次々と証拠を明らかにしてきたのである。また顔はすでに全国に知れ渡り、逃亡の可能性は低い、前出の郷原弁護士は「逮捕の理由はない」と指摘している。

●安倍首相の不正にメス

 東京地検特捜部は森本特捜部長の就任以来、前述のとおり森友問題をめぐる市民団体の告発状を受理し、昨年12月にはスーパーコンピュータ開発会社PEZY Computing社長の齊藤元章氏を補助金不正受給容疑で逮捕、そしてJR東海が進めるリニア新幹線をめぐりスーパーゼネコン4社による談合問題に、公正取引委員会と協力して、捜査に入っている。

 齊藤氏の事業では、強姦の疑いで民事訴訟を起こされている元TBS記者の山口敬之氏が資金集めに関与していたと報じられているが、山口氏は以前より著作本「総理」を持ち歩き、安倍首相と親しい関係であることを公言している。また、リニア工事に国は財政投融資を3兆円投入しており、談合を仕切っていた大林組社長は安倍首相のゴルフ仲間であると日刊ゲンダイは報じている。

 東京地検特捜部は、安倍首相が関与してきた数々の不正行為にメスを入れ始めたように見える。会計検査院に続き、公正取引委員会、そして東京地検特捜部が、行政が歪められている事態に対し動き出した。大阪地検特捜部もこの動きに追随し、森友問題の本格捜査に入ることを期待したい。

 森友学園への国有地払い下げに当たって役所で決済や窓口の指導など直接関与していた職員が10人を下らない点を考えると、窓口職員が個々に違法行為を犯した刑事責任という意味合いを超え、上からの命令で動いた可能性が問われる森友疑獄事件へと発展する可能性がある。まさに巨悪を許さない特捜部の出番である。籠池氏の逮捕・勾留・接見禁止がこのまま続き、官僚たちの不正行為が放置されれば、法治国家が危機にさらされる事態になりかねない。
(文=青木泰/環境ジャーナリスト)