トランプ政権は、減税によってさらなる経済成長が見込めるとしているが・・・・・・(写真:Joshua Roberts/ロイター)

低下する経済成長、拡大する格差、迫り来る財政危機。トランプ米大統領や共和党議員には、税制改革によってこれら3大問題に対処するチャンスと責務があった。だが、残念なことに彼らは責務を怠り、チャンスを台なしにする法案を通過させたのだ。

米国の公的債務がすでに戦後最悪の水準にある中で、この税制改革によって財政赤字は今後10年間でさらに1.5兆〜2.2兆ドル(約165兆〜242兆円)悪化する。所得と富の不平等が急拡大している中で、減税額の8割が1%の超富裕層に回ると推定されている。

成長率の押し上げ効果はかぎられている

しかも、経済が8年以上にわたって緩やかに拡大を続け、労働市場が完全雇用に近づいている中では、減税が持つ景気浮揚効果はわずかなものにとどまるだろう。

確かに、大規模な法人減税は長年の懸案だった。投資は喚起され、国内外の企業が米国で事業を行う動機も強まるだろう。しかし、成長率の押し上げ効果は、トランプ氏や同氏の経済ブレーンが喧伝する「年率1%ポイント以上」を大幅に下回ると、圧倒的多数のエコノミストが予測している。

経済成長に伴うトリクルダウン(富者が富めば貧者にも富が滴り落ちるとする効果のこと)によって「平均的な世帯の年収は極めて控えめに見積もっても4000ドル(約44万円)増加する」とトランプ政権はブチ上げるが、これを裏付ける根拠は何もない。

多くの研究が示すように、法人減税の恩恵のうち賃金に回るのは20〜25%。残りは株主のものだが、その3分の1は外国人。減税で最大の恩恵を受けるのは、発行済み株式の約半分を保有するトップ1%の超富裕層となるだろう。

代替財源は経済成長によって生み出せる、とする政権側の主張を裏付ける根拠も存在しない。法案に賛成した議員の多くはわかっているが、減税によって失われる税収のうち期待される経済成長でカバーできるのは、せいぜい3分の1。だがこれは彼らの高等戦術なのだ。

減税によって税収が減れば、低所得層や中間層に恩恵をもたらす政策のカットが今後、正当化しやすくなる。すべては財政規律や福祉改革のため、というわけだ。

富裕層へのバラマキのツケを払うのは

さらに問題なのは、トランプ減税が格差を劇的に拡大し、固定するような条項を満載していることである。個人所得税の最高税率を引き下げ、遺産税(相続税)の課税最低限を2倍へ引き上げ(=課税対象者が減る)、いわゆるパススルー企業(個人事業主やパートナーシップなど米国ビジネスの95%を占め、現在は個人所得税の対象になっている)にも減税を施すもので、富裕層へのバラマキ同然となっている。このツケを払うのは中間層と将来世代だ。

この法案は実物・金融資本への投資を優先しているが、米国が真に必要としているのは人への投資や生涯学習だ。ロボットやAI(人工知能)が労働市場にもたらす破壊的な影響に対処するためである。しかし、トランプ減税は働くことを奨励するために勤労所得控除を拡大するどころか、給与所得に対して、米国史上初めて事業主所得やパートナーシップ所得よりも高い税率を課すものとなる。

大半の米国人は、トランプ減税が欠陥だらけでウソの公約まみれなのを知っている。医療保険制度改革法(いわゆるオバマケア)の撤廃に失敗した議会共和党は大型税制改革を強引に成立させ、リッチな大口献金者の歓心を買おうとしたのだ。だが、これは共和党支持者の多くの期待を裏切るものである。トランプ減税が不評であることを考えると、11月の中間選挙で何が起きるか興味深いところだ。