「Facebookは、あなたの顔が「タグ付け」されなくても見つけられる」の写真・リンク付きの記事はこちら

このほどフェイスブックは、顔認識の機能を少し“調整”した。誰かがアップロードした写真に、Facebookがあなたであると認識した顔が写っていたとしよう。その際に、あなたがタグ付けされていなくても、常に通知されるようにしたのだ。

新機能は2017年12月、世界の20億以上のFacebookユーザーの大多数に向けて提供が始まった。この機能は、あなたが見ることができるように設定された新たな投稿にのみ適用される。

なお、カナダとEUのユーザーは除外されている。これらの地域では当局がプライヴァシー侵害を懸念したため、フェイスブックは顔認識技術を使っていない。

フェイスブックは長年にわたり、顔認識機能の使用を着実に拡大してきた。同社が初めてユーザーに顔認識技術を提供したのは2010年の終わりである。そのときは、写真に写っている人物のタグ付けを提案する機能を追加した。

その機能を最初から有効に設定していたやり方が反発を買ったことが、カナダとEUにおいて現在、Facebookの顔認識機能が利用できない理由のひとつだ。それ以外の地域では基本的な機能は変更せずに、ユーザーへの通知方法について新しい試みを続けてきた。フェイスブックは15年、顔認識機能を使って一緒に写っている人と写真を共有しやすくした写真共有アプリ「Moments」の提供を開始している。

同社プライヴァシー部門の責任者を務めるロブ・シャーマンは、今回の新しい通知機能を「オンライン上にある自分の画像の管理を強化できるようにするもの」と位置づける。「この機能は、ユーザーの権限を拡大すると考えています。ユーザーがその存在を知らない写真があるかもしれませんから」とシャーマンは語る。

フェイスブックにとってのメリット

こうした写真の存在を知らせることは、フェイスブックにとっても利益になる。通知が飛び交うということは、ユーザーの「アクティビティ」が増え、広告のインプレッション数も増えるということだ。

さらに、写真に写った自分にタグ付けする人が増えれば、Facebookのキャッシュに追加されるデータが増える。つまり、同社の運営を支えるターゲティング広告ビジネスの利益がさらに増えることになる。

Facebookは、あなたが写っている写真を見つけると通知を表示し、その通知から新しい「Photo Review」ダイアログに移動できる。「Photo Review」では、写真に写った自分にタグ付けしたり、写真を投稿したユーザーにメッセージを送ったりといった選択ができる。自分ではない場合はFacebookに知らせることができ、サイトの規約に違反している写真を通報することも可能だ。

「あなたの顔が写っていると見られる写真が、約1分前に、ゲイリー・チャヴェスによって投稿されました」。IMAGE COURTESY OF FACEBOOK

新しい機能の一部として、ユーザーの写真を誰かほかの人がプロフィールに使おうとした場合は、通知もしてくれる。なりすましを難しくするためだという。顔認識機能の追加は、視覚障害があるユーザーのためでもある。友人から送られてきた写真を言葉で説明してくれるのだ。

Facebookの顔認識技術はどのくらい優れているのかといえば、世界のトップクラスである。同社のサーヴァーに保存された数千億枚の写真は、機械学習のアルゴリズムを訓練するための豊富なデータとなり、さまざまな顔を見分けられるようになっている。

フェイスブック応用機械学習部門のニプン・メイサーによると、このシステムは顔全体が見えなくても機能するが、真横からの顔は認識できないという(同氏はこのシステムの精度に関して、それ以外の情報の提供を拒否した)。

同社のAI研究グループは15年、顔が見えなくても服装や体形などの手がかりを使って、人を認識することができるシステムについての論文を発表している。しかしフェイスブックの説明では、今回の新機能に、その研究結果はまったく使われていないらしい。

「オプトアウト」方式に批判の声も

こうした機能が気に入らないという人は、同じく12月19日から改正された新しいプライヴァシー管理機能を利用したいと思うかもしれない。顔認識を使ったタグ付け提案機能は、これまでも無効にすることはできたが、設定の説明では「顔認識」という表現が避けられていた。

新ヴァージョンの設定では、顔認識全体を無効にすることができる。何が可能なのかをわかりやすくするためか、「顔認識」という表現も使われている。顔認識をオプトアウト(有効な設定を意識的に解除する)すると、あなたの顔を見つけるために使われた顔テンプレートを削除するという通知がくる。

プライヴァシー擁護派のなかには、このシステムはユーザーにオプトアウトさせるより、オプトイン(原則無効なものをユーザーが有効に設定する)させる方式にすべきだという人もいる。

米商務省は、ソーシャルメディアを含む場で、顔認識機能を商業的に利用するための行動基準作成に取り組んでいた。だが、15年にはその作業部会から、電子フロンティア財団を含む9つの団体が脱退した。電子フロンティア財団のジェニファー・リンチ上級専任弁護士は、同財団をはじめとする諸団体が脱退した理由のひとつは、顔認識機能をオプトインにすることを企業側が拒否したからだと説明している。

リンチ弁護士は、フェイスブックの現在の方針では、個人データのプライヴァシーとリスクに関することをユーザーが自分で決められない、と批判する。フェイスブックは、顔データの新しい利用法を瞬時にかつ秘密裏に展開することができ、それは数十億人規模のユーザーという広い範囲に影響を与える。

リンチ弁護士によれば、店舗の買い物客を追跡してターゲットにする顔認識技術の利用に興味を示す小売業者は、たくさんいるという。フェイスブックの食指が動くだろうビジネス分野だ。

顔認識の応用範囲はリアルな世界にも拡大?

最近公開された特許申請を見ると、フェイスブックは店舗での支払いに顔認識技術を取り入れることを考えているようだ。同社はすでに、データの仲介業者と協力し、Facebookユーザーのオンラインでのアクティビティやプロフィールと、オフラインの行動とをリンクさせようとしている。

フェイスブックの広報担当は、顔認識技術については12月19日に発表した以上の製品計画はないと説明する。また同社は、決して実行に移されないアイデアの特許をとることもあるそうだ。しかし、なぜ顔認識機能をユーザーによるオプトインにしないのか、という質問には答えなかった。

この件についてのフェイスブックの姿勢は、法廷で試されるかもしれない。同社はいま、「顔認識機能をオプトアウトにするという同社のアプローチは、イリノイ州のプライヴァシー法を侵害している」と主張するユーザーによって訴えられ、連邦裁判所で争っている。

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