@AUTOCAR

写真拡大 (全3枚)

いざ富士でランボを!

おい、太朗よ。
ランボルギーニのサーキット取材、いってくれるか?

「ランボルギーニ」と「サーキット」。
魅力的な2語だけでふたつ返事をした。

ジャーナリストのかたにレポートしてもらい、
ぼくはサポートしながら「あの音」を聞ける。

最高じゃないか!

当日を楽しみにしていたら、なんと2日前に
「ぼく自身」がドライブすることが判明した。

むろんクルマの評価はジャーナリストがするのだけど
イベント全体がどんなものかをレポートするためには
主役(=ランボルギーニのサーキット試乗)の体験が
いちばんというわけで試乗枠を用意してもらったのだ。

しかし富士スピードウェイの本コースを走るのは初めて。
ウラカンだって公道で10kmくらいしか乗ったことがない。

というわけで、びくびくしながらサーキットに行った。
行ったらもっとびくびくするようなことだらけだった。

このイベントのエントラントは、
ランボルギーニのオーナーやオーナーになりそうなひと。

だから駐車場にはランボルギーニはもちろんのこと、
そのクラスのライバル車たちがひしめいている。
それだけで腰が引けてくるのに、会場につくと
これがなかなかもっと腰が引けてくるのであった。

低音が響く場内のBGM、ちょっと怖そうなひとも。
映像カメラマンはスケートですべりながら撮影している。
極めつけはコミュニケーションの主体が英語であること。

そして思いだす。僕はこれからランボルギーニに乗るのだ。
それだけではない。はじめての富士スピードウェイの走行。

貴重な体験であることは間違いない。
しかし、帰りたくなってきたぞ……。

なんて思っているあいだに、
まずは座学(伊語/英語の通訳つき)がはじまり、
あっという間にサーキット走行の時間になった。

「準備はOK?」

「まずはついてきてね」

「徐々にペースをあげてね」

無線で指示が飛んでくる。そして気づく。皆、速い……。
僕のグループは中国の顧客が数名とジャーナリストたち。
(当然だけれど)皆、走ると速いのである。

置いていかれる……。3ラップ。

オーバーテイクなしだったので
ビリになることはなかったけれど、
決して速い走りではなかったと思う。

だいたい、あんなにだだっ広いコース、
どこを走ればいいのやら。と思った。

「太朗くんさ、白のウラカン・ペルフォルマンテだった?」

声をかけてくれたのは、
ジャーナリストの吉田拓生(たくお)さんだ。
富士だってイヤというほど走っているベテランだ。

「このコーナーは、こんな感じでラインをとりがちだけど、
 いったん外にでてリセット、で、イン側に全開」といった
コースを描いた紙に、理想のラインをペンで書いてくれる。

できるかぎり頭に詰めこんで、もう1セット。
さらに1セットと、くり返し走り込んでいく。
タイムじたいは縮まなかったはずだけど、
少しずつコツが掴めて、ともなって速度もあがる。

それでも少しずつインストラクターからは離される。
それにじわりと後続車両も近づいてくる。うぅむ。

「1度インストラクターの隣に
 乗ってみるといいよ」と拓生さん。

というわけで、ムリいって1周だけドライブしてもらった。

強烈! そして……

ドライバーはレーサーの牧田克哉さんだ。

ピットをでた瞬間に、えーッ! である。

そもそもストレートの加速がまったく違う。
かなり踏んでいたと自負していたアクセルペダルを
牧田さんは蹴っているんじゃないかというくらい強く踏む。

そしてコーナー。
ドッカーンとブレーキを踏んだかと思うと、
そのままコーナーの外側に
自分がとびだすんじゃないかと思うほどのGを受けながら
矢のようにコーナーを脱出する。

コーナーの手前で反対向きに
ちょっと振って、飛びこんでいったりもする。
加速時は後ろに、ブレーキ時は前に
コーナリング時は外側にすべて血液が移動しているよう。

もうひとつ気がつく。ウラカン・ペルフォルマンテも
アヴェンタドールSも、僕が運転していたときには
聞いたことのないような音を痛快にひねり出していた。

そういうことか……。

そもそもアクセルを踏み足りていなかったのである。
ブレーキもしかり。

ライン取り、ライン取り、ライン取り。

こればかりに気を取られていて、結果、遅かったのだ。

その前に走ったのはマツダ・ロードスターで筑波サーキット。
全開でタイトなコースを走らせる楽しみはあれど、事実、
クルマのパワーとコースの速度域がまったく違うのである。
ともすれば全開まで回して「乗れてる」気分になれる前者。
富士はコースがむずかしい。「走り方」をわかっていないと
まったくトンチンカンな結果に終わるし、ましてやランボ。

むずかしさと車両の底知れぬ力を嫌というほど感じた。

「牧田さん、同乗レクチャー、
 一般のお客さんにもやるべきですね!」

「上野さん、これやるとね、そのあと、
 みんな全開で突っ込んでいっちゃうんです(笑)」

ランボルギーニって、ともすれば音や造形など
「芸術面」がフォーカスされがちだけれど
やっぱりマシンである。ガンガンに速く走るための。

いやー、爽快だったなぁ。ランボルギーニいいなぁ!

シャカイチ号に乗って
ご機嫌で帰っていたところ、自宅の手前の交差点、
ハンドルをきったあたりで、ズンと重たくなった。
回転系を見ると、針はぐったりと「0」を指していた。
エンジンがとまっていた。

あわててハザードをつけて、惰性で路肩へ。
むりやりアクセルを煽りながらキーをひねると
よわよわしくエンジンがかかった。が、へんな音がする。

つづく。

※今回も最後までご覧になってくださり、
 ありがとうございます。

 読者から届くメールを拝見したところ
 わたし(あるいはシャカイチ号)が
 病気になっているんじゃないか説が
 読者の皆さんのあいだで浮上しているそうです。

 落ちこんだりもするけれど、わたしはげんきです。

 もっと書かなやきゃね!

 今後とも、inquiry@autocar-japan.com まで、
 皆さまの声をお聞かせください。
 もちろん、なんでもないメールだって
 お待ちしております。