この1年間、悔し涙を流すたびに成長した大坂なおみ

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昨年、四大大会で何度か大坂なおみ(日本/日清食品)の涙を見た。

「ウィンブルドン」の1回戦では、勝ったものの、試合途中、思うようにならない展開に苛立ち、コートを囲むフェンスに隠れて目頭を押さえた。第2セットだけで29本のアンフォーストエラーを記録する乱調。慣れない芝コートと相手の粘りに苦しんだ。それでも、日本のファンの「頑張れ」の声を受け、太ももを叩いて自分を励まし、なんとか勝った。

「全米オープン」では3回戦でカイア・カネピ(エストニア)に競り負け、「まったくいいプレーができなかった」と記者会見で涙を見せた。1回戦で元ランキング1位のアンジェリック・ケルバー(ドイツ)を破ったが、「自分自身への期待が大きくなり、自分で重圧をかけてしまった」と、予選から勝ち上がったカネピに足をすくわれた。

オフシーズンにWOWOWが行ったインタビューで、「選手にとって成長とは?」の問いに大坂はこう答えている。

「どんな状況でも動揺したりせず、自分がどうすべきかを知っているということだと思います」。

涙を流すほど動揺し、ネガティブな感情にとらわれたら、当然、勝利は遠のく。いかにポジティブに試合を進めるかが大坂の課題だった。前記のインタビューでは「プレッシャーやフラストレーションでうまくいかないこともありますが、その都度、イライラとの戦い方、その抑え方を学んでいます」とも話した。

勝つためには成長しなければいけないと分かっている。しかし、その手前でもがいていたのが昨年の大坂だった。昨年1年間、指導を受けたデビッド・テイラーコーチは、大坂にとって「先生」のような存在だった。一方、昨年のシーズンオフから一緒に活動するサーシャ・バジンコーチは「友だちみたいな感じ」だという。新コーチの戦術面でのアドバイスはシンプルだ。「より堅実に」。そして、試合に臨むにあたってのもうひとつの目標が「ポジティブな態度を貫く」こと。

前コーチや周囲から言われてきたことでもある。しかし、昨年、まさにこの点で苦労してきたからこそ、アドバイスがストンと心に落ちたのか。アシュリー・バーティ(オーストラリア)に快勝した3回戦で、大坂の試合態度はポジティブそのものだった。

ミスで失点しても、ほとんど動揺を見せることはなかった。ときおり笑みを見せ、相手の好ショットを拍手の仕草で称える場面もあった。そうやって、次のポイントに、また、自分のやるべきプレーに集中した。

その結果が、ブレークポイントなど大事な場面でのサービスエースであり、第18シードを圧倒した6-4、6-2のスコアだった。「去年は1年間のすべてが(ポジティブでいるための)トレーニングでした。それがしっかり行えたので、今年は少し変われると思います。成長できていたなら、うれしいです」。

涙を流し、悔しい思いをしたことも、成長するためのトレーニングだったと思えるなら、それ自体、成長のステップを一段上がったことになるだろう。

この3戦の大坂は、去年と別人のようだ。4回戦では世界ランキング1位のシモナ・ハレプ(ルーマニア)に挑む。強敵だけに、ここでもポジティブに戦うことが目標になる。

「これまで2回対戦し、どちらも3セットでした。楽しめたし、多くを学びました。ナンバーワンの選手とプレーするのは名誉なこと。何が起きてもベストを尽くします」と大坂は話した。

バジンコーチは「自分を信じること、疑わないこと」が勝利のカギと見る。四大大会で初の4回戦、しかも第1シードとの対戦は、成長の度合いを計る、最高の試金石となる。

(秋山英宏)

※写真は「全豪オープン」3回戦での大坂なおみ
(Photo by Recep Sakar/Anadolu Agency/Getty Images)