吉本芸人からトップ営業に転進できた理由
■信念を置いたのは「礼儀正しくて面白い人」
関東の人でも関西の人でも、男でも女でも、人は笑うと距離感がいきなり縮まるものです。その理由は警戒という壁が崩れてリラックスするからです。
私は吉本興業の芸人を経てハウスメーカーに営業マンとして就職し、その後独立して起業家となり、現在は笑いのスキルでコミュニケーションの活性化を目的とする「笑伝塾」を営んでいます。
私が営業マンとして就職したばかりの頃は「丁寧」をモットーにやっていましたが、営業成績はボチボチという程度で、決して褒められたレベルではありませんでした。しかし、まわりの先輩でトップ営業マンと言われる人たちは、丁寧なだけではなく、冗談や笑いを取りながら接客していることに気づき、吉本時代の笑いのスキルを積極的に出していくことにしました。その結果、1年後には全社トップの営業マンとなり、退職するまで維持できました。
私が営業マンとして信念を置いたのは「礼儀正しくて面白い人」です。そんなキャラクターに見てもらえたらいいなと思い仕事をしていました。
笑いのスキルの中で私が使っていたツカミをひとつご紹介します。初対面の席に座ってすぐ「あれ? 間違ってたらすいません。もしかしてジョニー・デップですよね?」と言うのです。すぐに笑ってくれるお客さんと照れながら笑ってくれるお客さんがいますが、どちらにしろ柔らかいムードになり、商談がとてもやりやすくなります。
もちろんジョニー・デップに限らず、性別、年齢に合わせた超トップスターを持ってくるのです。若い女性ならアンジェリーナ・ジョリーや北川景子、ご高齢なら吉永小百合や高倉健など、いくらでも言われたら嬉しいタレントはいます。
■リアクション(反応)は少し大きめに
あと、営業マンに必須の笑いのスキルは表情とリアクションです。緊張しているせいかお客さんに値段のことでツッコまれたり、値切られたりすると引きつった硬い表情で「それは厳しいです」と言ってしまう営業マンをたまに見ますが、お客さんも言うだけ言ってみようという人も多いので、こちらもマジに返すより、笑顔で「うわぁ〜、そこですか〜。厳しいな〜! ハハハ」と笑いながら言えばいいのです。
ついついシビアな話には真顔になったり、声のトーンが下がったりしがちですが、それは逆効果で、陰は陽で返すことをお勧めします。私はこれで何度も厳しいシーンを乗り切りました。
笑いは生まれ持ったセンスだと思う方も多いでしょう。しかし一般の方がコミュニケーションを円滑にする目的であれば、笑いにはスキルの部分がたくさんあります。簡単に言うと、練習すれば誰にでも身に付くということです。ただ、テクニックだけでは身に付かないのが笑いのスキルです。
人を笑わすということは要らないプライドを捨てる、つまり「格好つけない」というメンタルが重要です。緊張しているのは自分だけではなく、お客さんも緊張しているのだということを忘れてはいけません。相手のためにまず自分から心を開き、親近感を出せばお客さんも少しずつ心を開いてくれるのです。
その表現の方法として、表情は柔らかく、リアクション(反応)は少し大きめに出すことです。もしあなたが、トップ営業マンになりたいのであれば、笑いのスキルは大いに助けになるでしょう。なんせ、笑いのあるところに必ず福が来るからです。
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(ヒューマンコメディックス代表取締役 殿村 政明 構成=野崎稚恵 撮影=ミヤジシンゴ)