ルビーチョコレートを世界で初めて製品化した、キットカットの「サブリム ルビー」(記者撮影)

「1930年代のホワイトチョコレートの発明以来、ルビーは約80年ぶりの新しいチョコレートだ」――。

ルビーチョコレートを開発したスイスのチョコレートメーカー、バリーカレボー社の担当者は、そう胸を張る。ダーク、ミルク、ホワイトで知られるチョコレートの世界に、4種類目となるルビーチョコレートが加わることになった。

着色料なしで天然のピンク色を実現


左から順に、パティシエの高木康政氏、ネスレ日本の菓子事業を統括するセドリック・ラクロワ氏、バリーカレボー社のバス・スミット氏(記者撮影)

ネスレ日本は1月18日、翌19日から「キットカット」ブランドの「サブリム ルビー」としてルビーチョコレートを世界で初めて販売すると発表した。価格は1本400円(税抜き)。

開発元のバリーカレボー社からルビーチョコレートの独占販売権を得て、キットカットの高価格帯製品を扱う「キットカット ショコラトリー」の店舗とネット通販で期間・本数限定で販売する。

ルビーチョコレートの最大の特徴はその色と味だ。着色料を使わずに天然のピンク色を実現した。味も、チョコレート自体からほのかにベリー系の酸味が感じられる。

ルビーチョコレートの原料には特殊なカカオ豆が使われる。加工するのにも技術的なハードルが多く、開発には10年以上が費やされた。

製品化の話は、開発に成功したバリーカレボー側からスイスのネスレ本社に持ちかけられたという。そのルビーチョコレートを、ネスレ日本が世界で初めて独占的に販売する。世界191カ国で事業を展開するネスレが、なぜ日本市場を選んだのか。

ネスレが事業を行っている世界各国の市場の中で、日本市場はキットカットの売上高が最も多く規模は十分。また、日本の消費者は新しいものが好きなため、これからのバレンタインデー商戦に向けて世界初のルビーチョコレートの投入市場としては最適だった」(ネスレ日本)

新製品は1本400円と決して安くはない。ネスレ日本で菓子事業を統括するセドリック・ラクロワ執行役員は、「ルビーチョコレートの投入は現在ネスレ日本が追求しているキットカットの高級化の流れをさらに継続するものだ」と説明する。

キットカットの売上高は公表されていないが、英調査会社ユーロモニターによれば、2017年の国内でのキットカットブランド全体の売上高は188億円と、この5年間で3割ほど増加した。

ネスレ日本はこれまでに、わさび味や日本酒味など350種類以上もの種類のキットカットを発売してきた。「(ルビーチョコレートのような)高価格帯の製品が成長を牽引しており、1年間に出る30〜40種類のキットカットの新製品の中で、高価格帯の製品は半分を超えている」(ネスレ日本)。

2000年からフレーバーを展開


キットカット ショコラトリー」の銀座本店。開店から30分で「サブリム ルビー」65本は完売していた(記者撮影)

ネスレ日本は、新しいものが好きな日本の消費者に合わせる形でキットカットの多くのフレーバー展開を行ってきた。

最初のフレーバー展開は2000年のストロベリー味だった。

それまではキットカットが多数入った大袋をスーパーで販売するのが主だったが、商品の改廃が激しいコンビニが今後重要な販路になっていくと位置づけ、小分け製品の多品種展開で対応するようになった。

だが、国内市場は少子高齢化が進み、胃袋のサイズも数も減っていく。基本的には、製品の販売単価を上げて利益を確保していくしかない。そこで同時に力を入れてきたのが高価格帯のキットカットの強化だ。

2014年1月に1号店をオープンさせた、高価格帯製品のみを取り扱う「キットカット ショコラトリー」は着々と店舗数を増やし、現在は百貨店内などに7店舗を構える。有名パティシエの高木康政氏とコラボするなどして認知度の向上を図っている。

さらに、韓国向けには2016年10月から一部の高価格帯製品の輸出を開始。翌2017年10月にはソウルで日本製キットカットの専門店をオープンさせている。訪日客にお土産としてしか販売できなかった日本独自のキットカットを現地でも売り込むほか、同時に認知度を高めさらなるお土産需要も喚起する狙いだ。

こうした需要増に応えるため、ネスレ日本は2017年8月に、神戸でキットカットの新工場を稼働させている。少量多品種生産が可能な、高価格帯製品専用の工場だ。

「海外にはないフレーバーも多く、特に高価格帯製品は訪日外国人観光客のお土産としての引き合いも強い」(ネスレ日本の竹内雄二ビジネス開発部長)。

「サブリム ルビー」のようなチョコレートも、国内での売れ行き次第では今後の展開としてアジア各国への輸出も視野に入れているという。第4のチョコレートであるルビーチョコレートを起爆剤に、キットカットの高価格帯シフトをさらに加速させることは出来るのか。