@AUTOCAR

写真拡大 (全15枚)

もくじ

どんなクルマ?
ー ソリオ/イグニスとパッケージ比較

どんな感じ?
ー 1.0ℓ3気筒ターボ ぐいぐい加速
ー 6ATを検証
ー シャシー/4WDシステムの話

「買い」か?
ー 車内の広さ/安全装備 「買い」なのか?

スペック
ー クロスビー・ハイブリッドMZのスペック

どんなクルマ?

ソリオ/イグニスとパッケージ比較


クロスビーの綴りは「XBEE」。ネットスラング的には「X兵衛」と書き出して「じゅうべえ」とか「くろべえ」なんて読ませるのもアリかもしれない。もちろん、侮辱しているのではない。そういった愛称を付けたくなるような親しみを感じさせるクルマなのだ。付け加えるなら何も外観の事だけを言ってるのではない。中身も走りもとてもフレンドリーなのである。

シャシー設計はイグニスやソリオをベースにしているが、興味深いのはパッケージングだ。車体寸法は全長3760mm×全幅1670mm×全高1705mm、ホイールベース2435mm。全高/全長比は約0.45であり、これはソリオとイグニスの中間の値。ジュークは約0.38であり、SUVではかなり背高パッケージングを採用する。カタログ室内長はソリオに比べると340mm短いが、これはソリオがメーターをインパネの奥まった所に置くアウトホイールメーターを採用しているため、メーターフードから後席バックレストで計測するカタログ室内長は30cmくらい長くなる。ペダルから後席ヒップポイントまでの有効室内長ならクロスビーはソリオと同等と考えていいだろう。


つまり、外観の印象はキュートな趣のSUVだが、パッケージングを見るとユーティリティ志向のハイト系であり、SUVの悪路対応力と合わせればアウトドア志向のレジャーワゴンが成立する。カワイイ系のキャラ売りモデルのように見られやすいが、中身は実践力重視の真面目なクロスオーバーSUVと考えるべきだ。

どんな感じ?

1.0ℓ3気筒ターボ ぐいぐい加速


搭載エンジンはいかにも経済的なスモールカーらしい1ℓ3気筒。直噴とターボにより99ps/15.3kg-mを発生する。ターボ仕様で100ps/ℓはかなり控え目な最高出力だが、最大トルクは1.5ℓ級に相当。しかも、最大トルク発生回転数は1700〜4000rpmである。実用性能最優先といったパワースペックである。


試乗した印象でも回転上昇を抑えて、浅いアクセル開度からぐいぐいと加速。過給タイムラグもほとんどない。6速ATを奢ったことも力感アップに繋がっている。巡航の回転数は1500〜2000rpm強に設定され、60〜100km/h域で流れに乗せた追い越し加速では1速ダウンシフト。その時の回転上昇は500rpm前後であり、多くの状況で3000rpmを超えることなくアップシフト。エンジン回転数の変化の少ない滑らかな加速は大排気量的だ。

6ATを検証


なお、発進時を除けば大半の領域でトルコンはロックアップ状態を維持するので、変速感はDCT並みに小気味よい。もちろん、極低速域ではトルコンならではの滑らかさと扱いやすさを示す。上級クラスで多段化を進めたトルコン遊星ギア式ATが標準化しているのも納得だ。


余談だが、オイルポンプ負荷による損失はCVTが最も高く、次いでDCT。AMTに及ばないにしてもトルコン型ATはエネルギー損失が少なく、クロスビーが車格に対して奢った6速ATを採用するのは高速巡航燃費の向上も視野に入れたと考えるべきだろう。

ただし、高回転はあまり得意ではない。レブリミットは6300rpmだが、5000rpmに近づくくらいからトルクが細り始め、そこから上は回すほどに加速が鈍る。レブリミットまで引っ張るなら1段高いギアで回転を抑えたほうがストレスなく加速する。「ターボはスポーティ」と考えるドライバーには少々残念な特性だ。

シャシー/4WDシステムの話


扱いやすさと実用性能に向けた走りはフットワークも同様。要は「何の変哲もない」。タウンユースでも和やかに走れて横風の高速走行でも不安感なく、というウェルバランス型。悪路対応か沈み込みストロークは抑え気味だが、段差乗り越えもトンッと軽やかである。


緊張感を与える事もなく据わりのいい操舵感と相まって、高速コーナリングもタイトターンの切り返しも穏やかにこなす。操る楽しみの薄いハンドリングと言ってしまえばそれまでだが、肩肘張らない自然体の乗り心地と操縦感覚は多くの人に馴染みいい特性である。


悪路対応ではドライブモードに「スノー」を設定し、個別制御でヒルディセントコントロールや電子制御LSDとも言えるグリップコントロールを採用。リアサスはリジッドアクスルながらトーションビーム型同様の効果を発揮するI.T.L.。4WDシステムは前輪のスリップに応じて後輪に駆動トルクを発生させるビスカス方式。ハードクロカン向けとは言い難いが、電子制御デバイスの積極活用により一般的なアウトドアスポーツ&レジャーには不足ないだけの踏破性を確保している。

「買い」か?

車内の広さ/安全装備 「買い」なのか?


大柄な男性の4名乗車でもゆったりとしたレッグスペース。後席に備わったスライド機構で前方にセットしても不足はなく、5名乗車でも最大荷室奥行は50cmを超える。助手席下にはスズキ得意の脱着式トレイ。荷室下には濡れ物を積んでも安心のバケツ型の大型収納ボックスを装備。インパネ周りにも小物収納が多く、チョイ置きにも常載にも困らない。軽乗用で培ったノウハウを全投入といったユーティリティである。


安全&運転支援はスズキの最新型。レジャー&ツーリング用途ではACCやLKA、BSMの設定がないのが惜しまれるものの、歩行者対応のAEBSやLDP、ふらつき警報など車格には十分以上に備わる。アクセサリー設定のナビには、斜め上から視点を移動させながら車体周辺を映し出す機能も備えた3Dビューも採用。日常用途には気軽に使える設計である。


試乗モデルは4WDの最上級仕様。OPで贅沢すれば250万円にも届く価格は1ℓ車と思えば高すぎるように思えるかもしれないが、内容を考えれば納得できる価格設定。タウン&レジャーで使って元を取るタイプであり、日常と遊びでクルマを積極的に活用するほどに「お得」。リタイア世代などタウンユースの機会が増えたダウンサイザーには多目的スモールワゴンとして注目の一車だ。

クロスビー・ハイブリッドMZ(4WD)のスペック

■価格 214万5960円 
■全長×全幅×全高 3760×1670×1705mm 
■最高速度 - 
■0-100km/h加速 - 
■燃費 20.6km/ℓ 
■CO2排出量 112.7g/km 
■車両重量 1000kg 
■パワートレイン 直列3気筒996cc 
■使用燃料 ガソリン 
■エンジン最高出力 99ps/5500rpm 
■エンジン最大トルク 15.3kg-m/1700-4000rpm 
■モーター最高出力 3.1ps/1000rpm 
■モーター最大トルク 5.1kg-m/100rpm 
■ギアボックス 6速オートマティック