佐藤大和氏

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米国・ハリウッドに端を発したセクハラ被害の告発運動「#metoo(私も)」は日本にも広がりを見せている。昨年には、ジャーナリストの伊藤詩織さんが告発本を出版、また、作家・ブロガーとして活躍するはあちゅうさんが、電通時代に先輩から受けたセクハラやパワハラを実名で告発

これに勇気付けられた女性たちが「#metoo(私も)」と続き、SNS上に自身のセクハラ体験を告白するムーブメントが生まれつつある状況だ。

一方で、フランス女優のカトリーヌ・ドヌーブさんらが男性にも「女性を「口説く自由」があると主張。「#metoo」が過度に広がり過ぎていると異を唱える(後にセクハラ被害者を傷つけた可能性があると謝罪)など、世界中でセクハラ告発が物議を醸している。

そんな中、「バイキング」(フジテレビ系)など数多くのメディアに出演する佐藤大和弁護士(レイ法律事務所)も、セクハラ告発が一種のはやりとなっている現状に、警鐘を鳴らす。ライブドアニュース編集部では、その意図を取材した。

−−何かと「ハラスメント」と叫ばれる現在。どのようにお考えですか?

いまはブームとまでは言わないですが、「ハラスメント」という言葉がすごい盛り上がりを見せています。「スメハラ(臭いによって周囲を不快にさせる)」や「ヌーハラ(麺をすする音で周囲を不快にさせる)」など、なんでもかんでも「ハラスメント」にしてしまえばいいという風潮になりつつある。しかし、本来は前提としてコミュニケーションを密にして解決すべき問題であるにもかかわらず、いきなり告発などの行為に出てしまうのは行き過ぎではないかと考え、この問題を提起していきたいと思っていました。

具体的には、ハラスメントだと訴えるハラスメント「ハラハラ」が今年、一気に広がるのではと危惧しています。

−−「ハラハラ」とは具体的にはどのようなものですか?

上司や異性などの発言に過敏に反応し、裏付けや根拠がないにもかかわらず「ハラスメント」だと主張することです。同僚など客観的な視点や法的な視点から見ると、ハラスメントとは思えない声掛けを「セクハラ」などと訴えることや、SNSを使って安易に名指しで世間にハラスメントを告発する行為もその対象になりうるのかなと考えています。

「世間に言わないと改革されない。変わらない」というのは分かります。ただ、いまのムーブメントに乗っかり、今後はさらに、SNS上で名指しして告発する一般人が増えていくのは危険だと思うのです。例えば「ウチの上司の◯◯さんがセクハラをしている」などというふうにです。

しかし、本来であれば弁護士や専門機関にまず相談すべきところを、Twitterという全世界に発信できるツールを武器に、過度にハラスメントを押し出すのはやり過ぎじゃないかと。もちろん、我慢して我慢して、限界となって声を出すケースはあるでしょう。その気持ちはすごく分かりますし、正当な手段になりえる場合もあると思います。

とはいうものの、安易な気持ちでハラスメントの告発をやってしまうと、名誉毀損(きそん)など別の法的問題が生まれる可能性があるのです。SNS上での名指しの告発は、そうなってしまうリスクが高い。そうすると、訴え合戦になってしまう。「ハラスメントされたので損害賠償です」「いや、告発で名誉を傷つけたから名誉毀損だ」と。これでは、トラブルにトラブルを重ねるだけで、なんの解決にもならないですよね。

−−では、どのような対策を取ることが重要になるのでしょうか?

それは、なんと言っても普段のコミュニケーションですよね。全てはコミュニケーションが基本なのです。人を思いやる視点がないと、「ハラスメントハラスメント」や「ハラスメントハラスメントハラスメント」が生まれてしまい、エンドレスで繰り返すことになります。そうなると、どんどんおかしな方向に進んでいってしまう可能性があります。ですからコミュニケーションや人を思いやることの大切さを、もう一度考えることが必要ではないでしょうか。
 
現状として、コミュニケーションを含め、男女の距離感がおかしくなっていると思います。

これをハラスメントという言葉などで分断してしまうと、コミュニケーションは阻害されますし、企業や日本社会の発展にもよくない。関係性がぎこちなくなるなど、コミュニケーションに悪い影響を及ぼすことになるのではないかと懸念しています。

−−コミュニケーションをさらに具体的に言うと…

「対話」ですね。これまでいろんな法律問題を扱ってきましたが、問題の根本にあるのは結局は対話なのです。言葉で伝えないと人間は分かりません。そして、その際に「謙虚さ」と「礼」と「思いやり」を持っていれば、そもそも「ハラスメントは起きない」はずです。ハラスメントを恐れてコミュニケーションが阻害されてしまうと、企業は育たない。企業が育たなければ健全な社会の発展もありません。

−−そこで、いまの状況を危惧しているのですか?

はい、だから「安易にハラスメントの負の連鎖を作らないように!」と言いたいのです。覚悟を持った上でSNSなどでハラスメントを告発するのであれば、たとえ名誉毀損で訴えられたとしてもいろいろと耐えられると思うんです。ただ、ムーブメントに安易に乗っかって告発するという行動に出てしまうと、予想外の手痛いしっぺ返しを受け、自分の立場さえも危うくなる可能性があります。

−−では、ハラスメントと告発していい基準などはありますか?

殴ったり蹴ったりなどの暴力行為や、人格否定などの“言葉の暴力”は絶対にダメで、パワハラになるでしょう。また、精神的苦痛を被るような過激で性的な発言、露骨にヌード写真を見せる、性的関係を求めることはもちろんセクハラです。

ただ、個人的には、会話の延長線上で恋人の有無をなんとなく聞くことなど、些細(ささい)な日常会話までをハラスメントだとするのは行き過ぎだと思っています。こうなるともう、「ハラスメント狩り」です。

例えば日常会話での些細な発言をセクハラだと主張し、過度に攻撃した結果として「セクハラをしたとする人物」がPTSD(心的外傷後ストレス障害)になったと仮定しましょう。この場合、セクハラだと主張した側が、逆に「ハラハラ」だと訴えられる可能性があるんです。気付いたら「弱者」が「強者」に、「強者」が「弱者」に入れ替わってしまうのですす。

−−ほかの問題として、SNSの使い方があります

問題提起をする場としては、TwitterなどのSNSは適しているのかなと思ってます。ただ、これまで言及してきましたが、問題提起を超えた過度な批判や特定の人物に対する過度なクレームはやり過ぎかなと考えています。

もちろん告発に踏み切るのはその人にとってはやむを得ない最終手段なのかもしれないですが、一方で、安易に正当な目的なしに他者を傷つけるのはよくありません。SNSは攻撃するツールではないのですから。もう一度、人を思いやるコミュニケーションについて考えてほしいと思っています。

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