【原ゆみこのマドリッド】こうまで試合が続くのは珍しい…

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▽「お昼時に見たい映像じゃないのに」そんな風に私が眉をしかめていたのは金曜日、ラス・ムサス駅前のベンチから、清掃員が血まみれの衣服を拾ってゴミ袋に入れているシーンがどのチャンネルのスポーツニュースでも映るのにうんざりしてのことでした。というのもワンダ・メトロポリターノでコパ・デル・レイ準々決勝1stレグがあった水曜日、メトロ(地下鉄)7号線エスタディオ・メトロポリターノ駅の1つ手前、スタジアムに至る道のりにお店が並んでいる通りがあり、こちらから歩いて行くファンも多いエリアで傷害事件が発生。キックオフ20分前にとあるバル(スペインの喫茶店兼バー)にいた22歳のスペイン人がナイフで3カ所を刺され、助けを求めて警察に保護されたのがそこだったから。

▽被害者の方は一命を取りとめたそうなので、不幸中の幸いだったんですが、すぐに捕まった犯人は元フレンテ・アトレティコ(過激なファングループ)の一員。それも1998年にビセンテ・カルデロン周辺でレアル・ソシエダのファンが殺害された時にも容疑者の1人とされ、2005年に不振を極めていたチームに抗議するため、当時、リバプール移籍前のフェルナンド・トーレスもいたマハダオンダ(マドリッド近郊)の練習場に柵を破って侵入した集団にもいた人物だったとか。おまけにここ10数年、強盗などの罪で服役し、釈放されてたったの6カ月しか経っていなかったというのには言葉もありませんが、おかげでまたしてもウルトラたちの蛮行がクローズアップされてしまったのは何とも嘆かわしいかと。

▽ええ、同じ水曜遅くに行われたコパ、エスパニョールvsバルサ戦でもRCDEスタジアムへの入場を断られた一団がスタジアム外でbengala(ベンガラ/発煙筒)を炊いて大騒ぎ、警官隊と揉み合っていましたしね。アトレティコが迎えたセビージャも先日には練習場にビリス(過激なファングループ)の訪問を受けて、どうにも落ち着きませんが、いくら取り締まってもこういう類いの人たちはサッカー周辺から消えないよう。自分としてもできるのは、そういう騒動にぶつからないことを祈るぐらいしかないんですが、それも運次第としか言えなくって…スペインに試合観戦に来るファンにとって、何のアドバイスにもならないのが申し訳ないです。

▽まあ、そんなことはともかく、今週のミッドウィークは私もコパ三昧。マドリッド勢が3チームも準々決勝に残っているため、連夜のスタジアム通いとなったんですが、格下相手だった16強対決とは違い、どちらも大勢の観客を集めての試合となりました。ちなみに水曜のアトレティコvsセビージャ戦は5万1000人とかつてのビセンテ・カルデロンなら、ほぼ満員になる数字で、木曜のマドリーミニダービーとなったレガネスvsレアル・マドリー戦は1万1000人と、こぶりなブタルケはスタンドから人が溢れんばかり。結局、ソシオ(協賛会員)に先行販売した後、当日券が80枚ばかり出たそうですが、やはり一般のファンにとっては狭き門だったかと。

▽ただ、どちらも結果から言うと、残念なもので、アトレティコなど、グリーズマンとFIFA処分明けで1月からプレーできるようになったジエゴ・コスタ、ビトロ、シメオネ監督待望の黄金コンビが初めて揃い踏みしたんですけどね。期待たがわず、前半13分にはCKからコスタがヘッドでゴールを決めたんですが、残念ながら、グリーズマンがGKセルヒオ・リコにぶつかったとして、ファールでゴールが認められず、続くコスタの一撃もリコにparadon(パラドン/スーパーセーブ)される始末。更に彼にはゴール前の揉み合いでメルカドにユニフォームを破られながら、ペナルティを取ってもらえない不運もあったんですが、セビージャもコレアの1対1やエスクデーロの意表を突くロングシュートをGKモヤに阻まれ、先制点を奪うことはできません。

▽それでもスコアレスドローで迎えた後半28分、クリアされたCKをカラスコが撃ったボールが敵DFに当たって逸れ、そのこぼれ球をコスタがゴールしてとうとうアトレティコが1点を入れたんですよ! ところが35分、途中出場のヘスス・ナバスのクロスがリュカに当たって軌道が変わったため、モヤも慌ててしまったんでしょうかね。ボールは枠の外に向かっていたにも関わらず、手を伸ばして弾こうとして、オウンゴールにしてしまったから、場内も呆気に取られたの何のって。

▽ええ、これにはサウールなども「El gol del empate fue muy doloroso, de rebote, nos hizo mucho dano moralmente/エル・ゴル・デル・エンパテ・フエ・ムイ・ドローロ、デ・レボテ、ノス・イソ・ムーチョ・ダーニョ・モラルメンテ(同点ゴールはとても痛かった。リバウンドだったし、士気的に凄く影響した)」と言っていたんですが、だからって、「Hemos perdido la cabeza/エモス・ペルディードー・ラ・カベッサ(ボクらは考える頭を失ってしまい)、やみくもに2点目を取りにいった」なんて、ちょっとお。コパは180分間で決着がつくのを忘れていた?

▽うーん、思うにこれにはこの日のアトレティコが先発のアタッカートリオに加え、ベンチにはコレア、カラスコ、トーレス、ガメイロとやたらFW人口が多め。おかげでハーフにはビトロをコレアに、後半22分にはグリーズマンをカラスコへと太っ腹に代えたシメオネ監督は更に、同点になった後もコケに代えてトーレスを投入し、攻めに出たんですが、これまでのパターンだったら、ここはヒメネスで中盤の守備強化だったかと。ついつい豊富な攻撃陣に誘惑され、コケ、サウール、ガビらMFたちがまったく役に立っていなかったことに目をつむってしまったというところでしょうが、そんな彼らを最悪の災難が襲ったのは43分。

▽それは昨今のアトレティコには珍しいCB陣のダブルミスからで、センターからバネガが頭で戻したボールをゴディンがベン・イェデルに競り負け、落ちた先でサビッチもクリアし損ねてセビージャのコレアがゲット。最後はモヤも破られて、2点目を取られてしまったとなれば、もうどうしたらいいものやら。残り時間もなく、そのまま1-2で逆転負けしてしまったんですが、いやあ、まさか昨季最後のリーガ戦後、ベリッソ監督を解任。モンテッラ監督をイタリアから呼んだものの、ベティスとのアンダルシアダービーにホームで3-5とやられ、続くアラベス戦にも負けて、絶不調と言われていた相手が息を吹き返す勝利を与えるとは、まったくお人よしにも程があるってもんじゃありませんか。

▽まあ、嘆いても後の祭りで、こうなったら来週火曜の2ndレグ、すでにチケット完売のサンチェス・ピスファンでremontada(レモンターダ/逆転劇)を目指すしかないんですが、ファンフランは「No es la primera vez que hemos ido a Sevilla y hemos ganado tanto en Liga como en Copa/ノー・エス・ラ・プリメーラ・ベス・ケ・エモス・イドー・ア・セビージャ・イ・エモス・ガナードー・タントー・エン・リーガ・コモ・エン・コパ(ウヒがセビージャで勝ったのはリーガもコパも初めてじゃない)」とは言っていたものの、ホームで1-2負けからの逆転突破はクラブ史上、これまで1回のみ。それを考えると、かなり厳しそうですが、今はもう土曜午後4時15分(日本時間翌午前0時15分)からのジローナ戦に頭を切り替えないと。何せ、ワンダのオープンが遅れ、開幕からアウェイが3試合続いたシーズン序盤と逆にここから、リーガはホーム3連戦ですからね。フィリペ・ルイスにまたケガが見つかり、リュカが出づっぱりというのもちょっと心配ですが、首位バルサとの勝ち点差9を少しでも縮められるよう、全力を尽くしてほしいものです。

▽そして木曜、午後9時30分という遅いキックオフだっただけに、帰りはセルカニアス(国鉄近郊路線)の終電に間に合わず。それでもグーグルマップを見ながら、サン・ニカシオ駅まで20分程歩けばメトロスール(地下鉄南線)はまだあるからと、観念してブタルケに向かった私でしたが、マドリーのBチームも相変わらずパッとしませんねえ。いえ、開始14分でCBバジェホが負傷、コパ32強対決フエンラブラダ(2部B)で退場したのに続き、せっかくのチャンスを利用できず、ナチョと代わる破目になったのは気の毒でしたけどね。レガネスは元々、しっかりした守りに定評のあるチームなんですが、ボールは支配していたマドリーだったものの、先発したマジョラル、アセンシオ、ルーカス・バスケス、セバジョスらでは上手く攻め込むことができず、前半のチャンスなど、コバチッチがGKシャンパンとの1対1で不可思議にも枠を外してしまった時ぐらいでしたっけ。

▽だからといって、お隣さんとは対照的にケガの直ったベンゼマも含め、BBCを招集しなかったジダン監督のチームの控えにはFWが1人もいませんでしたしね。さすがに0-0のまま、後半半ばにもなると、セバジョスをモドリッチにしてみたんですが、すると対するガリターノ監督も勝負に出ます。そう、24分には現在、チームで一番調子のいいアムラバットを入れ、攻勢をかけたところ、ボービューが至近距離からvolea(ボレア/ボレーシュート)。残念ながら、これはGKカシージャに弾かれてしまったため、勝負は来週水曜のサンティアゴ・ベルナベウに持ち越されるかと、スタンドを埋めたサポーターたちも思ったんですが…いやあ、才能ある選手というのは本当に油断がなりませんよ。

▽そう、残り1分、途中出場したイスコが始めたプレーから、左SBのテオがクロスを上げると、アセンシオがゴール右前、ティトに先んじてボールのコースを変えてゴール。これで0-1と、マドリーが土壇場で勝利をモノにしたんですが、ガリターノ監督も「ベルナベウでチャンスを探す。Allí daremos todo lo que tenemos/アジー・ダレモス・トードー・ロ・エ・テネモス(そこで我々の持つ全てを出すつもりだ)」と言っていた通り、安心とは程遠い結果だったのも事実だったかと。

▽いえ、ジダン監督は「Este triunfo es un punto de inflexión para seguir y sacar dos, tres o cuatro partidos adelante/エステ・トリウンフォ・エス・ウン・プント・デ・インフレクシオン・パラ・セギール・イ・サカール・ドス、トレス・オ・クアトロ・パルテイードス・アデランテ(この勝利が先の2試合、3、4試合に勝ち続ける分岐点になるだろう)」と楽観的でしたけどね。バランなども「他の日より劣ったプレーをしたけど、今日は勝った。ボクは悪いプレーでも勝つ方がいいね」と認めていたように、年が変わって以来、1部の相手には引き分け、敗戦と白星がなかったことを考えると、弟分チームとはいえ、レガネスに勝てたのは選手たちの自信回復にもなって良かったかと。

▽まあ、そんな彼らは日曜午後4時15分から、ホームサポーターの前で今度はデポルティボ相手に復調したことを証明しないといけないんですが、まあ、首位のバルサとは勝ち点差19ありますからね。焦っても仕方ないんで、1ポイント差で5位のビジャレアルに来季のCL出場圏順位の4位を奪われないように気をつけながら、グループリーグに直接参加できる3位のバレンシアとの8差を少しずつ詰めていくことが当面の目標でしょうか。

▽ちなみにこの試合の注目は今週、メッシやネイマールに年棒で激しく抜かれながら、ペレス会長が一向に契約更改をしてくれないことに業を煮やしてか、マンチェスター・ユナイテッドへの移籍を望んでいると大々的に報じられたクリスチアーノ・ロナウドに対するスタンドのリアクション。うーん、これまでならあっさりハットトリックでも挙げて、ファンの恩寵を取り戻すのに苦労はなかった当人ですが、今季はリーガでなかなかゴールが入らず。まだ、たったの4得点という悪い流れを変えないと、pito(ピト/ブーイング)が飛んできたりもするかもしれませんね。

▽え、コパ生き残り勢の様子はわかったけど、初ラウンドで敗退したため、ミッドウィークはカヤの外となっているマドリッド勢、ヘタフェのことも知りたいって? いやあ、実はそうでもなくて、今週はCBカブラル(クロトーネからレンタル移籍)の入団プレゼンがあったり、水曜には私も練習を見て来たんですけど、ここ2週続けて金曜に試合というのはもしや、彼らに疎外感を与えたくないというスペイン・プロリーガ協会の思いやりだったりする?おかげで私もとうとう、3夜連続でスタジアム通いをしてしまったんですが、コリセウム・アルフォンソ・ペレスにアスレティックを迎えた一戦はペナルティが3つも吹かれる珍しい展開に。

▽いえ、前半12分には落ちてきたクロスをウィリアムスがすくい上げ、ファーサイドの味方に合わそうとしたところ、今年になって負傷中だか、プレミアリーグへの移籍を待っているのだか、よくわからないGKグアイタに代わり、ゴールを守っているエミ・マルティネスが掻き出しきれず、アスティックにリードを許してしまったヘタフェだったんですけどね。21分にはホルヘ・モリーナがGKエレリンに倒され、そのPKを自ら決めて1-1に追いつきながら、後半序盤にはケガをしたダミアンの代わりに入ったモリネーロがセットプレー中にラポールを倒してしまい、こちらはラウール・ガルシアがPKを沈めて再び、ヘタフェは1-2の劣勢に陥ります。

▽するとその3分後、またしてもエレリンがホルヘ・モリーナにペナルティを犯してしまったんですが、ここはボルダラス監督もキッカーを変えても良かったかもしれませんね。度重なるファールの影響もあったか、今度はPKをエレリンに弾かれてしまい、ヘタフェは同点に追いつけず。そんな逆境時、チームに勢いを与えてくれたのはアンヘルで、いえ、代わって退いた柴崎岳選手も頑張っていたんですけどね。「ケガが治って前節初めて先発で、今日はリズムの激しい試合だった。No estaba cómodo, lo ha intentado y no encontraba esa posición para recibir y participar/ノーエスタバ・コモドー、ロ・ア・インテンタードー・イ・ノー・エンコントラバ・エサ・ポシシオン・パラ・レシビール・イ・パルティシパール(いい感じがつかめず、試みはしたものの、ボールを受けて、プレーに加わるポジションが見つからなかった)」(ボルダラス監督)だったようで、何にしても28分にはそのアンヘルが、ポルティージョが頭で落としたボールをゴールに流し込み、待望の同点弾を決めてくれたとなれば、まさに的確な交代策だったと言わざるをえないかと。

▽ただ残念ながら、アンヘルも勝ち越し点のチャンスには決めることができず、結局、2-2の引き分けで終わったんですが、暫定7位で、ヨーロッパリーグ出場圏の6位セビージャにも少し近づきましたしね。次節はそのセビージャと直接対決、続いてお隣さんのレガネスとの弟分ダービー、バルサ戦としばらく茨の道が続く彼らには、悪くないシーズン後半戦のスタートになったはず。そうそう、こちらも午後9時の遅い試合だったんですが、嬉しいのはブタルケと違い、コリセウム・アルフォンソ・ペレスはすぐ側にメトロスールのロス・エスパルタレス駅があること。マドリッド中心部に戻るには1時間ぐらいと、ちょっと時間はかかるんですが、暗い道を延々と歩かなくて済むのはありがたいですね。【マドリッド通信員】 原ゆみこ 南米旅行に行きたくてスペイン語を始めたが、語学留学以来スペインにはまって渡西を繰り返す。遊学4回目ながらサッカーに目覚めたのは2002年のW杯からという新米ファン。ワイン、生ハム、チーズが大好きで近所のタパス・バルの常連。今はスペイン人親父とバルでレアル・マドリーを応援している。