昨年11月、高校の歴史教科書から坂本龍馬らの名が削られ、掲載歴史用語が半数ほどになる可能性が報じられ大きな話題となりました。今回の無料メルマガ『致知出版社の「人間力メルマガ」』では中村学園大学教授で日本教育推進財団顧問の占部賢志さんが、3人の現役教師との対談を通して、その問題点を炙り出しています。

歴史用語「半減」案に異議あり!

日本史の教科書から、「武田信玄」や「吉田松陰」などの歴史用語が消されようとしています。その一方で、「南京大虐殺」が再び取り上げられるとか。その提言にはどんな真意が隠されているのでしょうか。

日本の教育を取り戻す 占部賢志(中村学園大学教授)

教師A 「先日、高大連携歴史教育研究会というところから、高校の日本史、世界史の教科書に出てくる用語を現在の約半分にあたる1,600語程度に減らすべきだとする提言が出て議論が起きています」

教師B 「日本史教科書で言えば、戦国時代に活躍した『上杉謙信』や『武田信玄』が消され、明治維新では『吉田松陰』や『坂本龍馬』が外されているようですね。その一方で、最近の教科書からは消えつつあるはずの『従軍慰安婦』などが取り上げられています。なんだかバランスに欠ける提案だと思いました」

占部 「昔から歴史は暗記科目というのが相場です。その暗記科目から抜け出すための方法の一つとして、今回の削減案が出されているようですね。その意図は分からないでもありませんが、分量を減らせば学力を下げずに改善出来るのか、はなはだ疑問です。それに、簡略にするということは概括した記述にしなければなりませんね。そうすれば当然概念用語が多用されます」

教師B 「概念用語?」

占部 「今度の提案のなかの昭和戦前期を見ると、用語の選択は概略こんな構図になっているんです。

単元「大日本帝国の崩壊」

     ↓

内容「満洲事変から日中戦争」

     ↓

項目「満洲事変」

  「国際連盟からの脱退」

  「日中戦争の勃発」

     ↓

用語「日中15年戦争」

  「盧溝橋事件」

  「南京大虐殺」など

このように構造化すると、編集の意図が見えてくるでしょ」

教師A 「えっ、あれだけ異説がある南京事件も取り上げているんですか。しかも『大虐殺』というオーバーな表記まで使って。吉田松陰や坂本龍馬は削除しているのに……。あきれますね」

占部 「どうしてそうなるのか、かいつまんで言えば、こういうことです。昭和戦前期は『日本』ではない。あれは『大日本帝国』という、現代とは違う悪玉国家の時代である。その悪玉がどんなことをして滅びたかを学習するのがこの単元だというように、まずは前提となる枠組みを決めるんですね」

教師C 「戦前と戦後とは国が違うのだと刷り込むわけですね」

教師B 「だから、どんな誹謗中傷も多少の歪曲もいいじゃないかとなるんでしょうか」

占部 「ま、そういうことでしょうね。要するに、戦前は今の我々の『日本』とは国が違うのだと思わせることで、戦前をあしざまに言う立場を設けるわけです。だから、中韓両国の歪曲された言い分を取り入れたり、異論の多い説を採用しても心は痛まない。そんな仕掛けになっているんじゃないですか」

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