これまで、エコノミスト(The Economist)の動画部門であるエコノミストフィルム(The Economist Films)は、ビュー数のほとんどをFacebook上で獲得してきた。しかし、ほかのパブリッシャーと同様、現在、その関心はYouTubeへ移りつつある。なぜならYouTubeはFacebookよりもオーディエンスが継続して訪れ、かつエンゲージメントも高いからだ。

エコノミストフィルムは、2015年なかばに長編動画シリーズの作成を目的にした、現在20人編成のチーム。代表作としては、サンタンデール銀行(Santander)のサポートによる、起業家に注目した「ザ・ハブ(The Hub)」やトムソン・ロイター(Thomson Reuters)のサポートによる「ザ・ワールド・イン・2018(The World in 2018))」などが挙げられる。2017年は1週間に3本、5分以内のエディトリアル動画を公開するという試みを開始。具体的には、男女間における賃金格差に注目した動画や、外国への支援の配分についての動画などだ。

また、最近ではFacebookとYouTubeのエンゲージメントを高めることを目的とした、2人のスタッフを採用している。これは短編動画を両方のプラットフォームへと対応させるためだ。動画の序盤には、ユーザーの注意を引くような「これが世界で一番パワフルな人物なのか?」といった問いかけが盛り込まれている(動画は中国の習近平についてのものだ)。また、YouTubeのエンドクレジットを利用して、エコノミスト上のコンテンツに遷移させるためのリンクを設置している。

事実、YouTube上での彼らの取り組みは成果を見せはじめており、2017年6月からチャンネル登録者数は約140%も成長し、40万人になった。同年11月には、平均的なビューワーたちは動画が投稿されるたびに、その75%を視聴している。これは6月と比べると44%の上昇だ。また、エコノミストによると、YouTubeのトップページからのビュー数も190%増加している(6月からの比較)。合計のビュー数は公開されていない。

YouTubeの強み



チューブラーラボ(Tubular Labs)によると、エコノミストは11月に2000万の再生回数を稼いでおり、そのうちの83%はFacebook上となっている。しかし、新しいオーディエンスを獲得するという点では役に立っているものの、測定指標におけるミスや3秒という短いビュー数カウント基準が批判を呼んでもいる。再生回数の本当の価値とは何であるのか、その透明性を要求する広告主が増えるにつれて、2018年はYouTubeへの注目はさらに大きなものになるだろう。また、パブリッシャー各社は、AmazonやFacebook、サムスン(Samsung)、そしてNetflixといった配信プラットフォームとも交渉を行っているという。

エコノミストグループの戦略・マーケティング部門シニアバイスプレジデントであるジェイミー・クレッドランド氏は次のように語った。「YouTubeにはエンゲージメント獲得のチャンスが存在している。これまでYouTubeは、ほかのプラットフォームに比べて、サイトへのサブスクリプションへどう繋げるかが見え辛かったため、あまりコストを投入してこなかった。しかし動画のエコシステムが進歩するにつれて、YouTubeにおけるオーディエンスは高いエンゲージメント率を見せるようになった」。

エコノミストフィルムで、エグゼクティブプロデューサーを務めるヒューゴ・ウォード氏は、YouTube動画に付くコメントは価値が高いと述べている。バルフォア宣言(第1次世界大戦中の1917年11月2日に発表された、イギリス政府によるシオニズム支持表明)を扱ったこの動画に付いた約700件のコメントや、ジンバブエの元大統領であるロバート・ムガベを扱ったこの動画に付いた1000件のコメントが例として挙げられる。彼らによると6月以降、YouTube動画に付くコメント数は228%も増加したとのことだ。なお、実数は明かされていない。

体制変更も追い風に



2017年は、エコノミストフィルムのビジネスオペレーションの面においても、進展のあった年だった。もともとは、コマーシャルチームを内包する独立部門としてスタートした同組織。2017年に本社が移転したことで、他部門と同じフロアに移り、さらに広告営業部門に統合されたため、広告主にとってはキャンペーンや広告オペレーションの問い合わせ先が統一された形になった。また、エコノミストフィルムにとっても、サンタンデール銀行やクレディ・スイス(Credit Suisse)といった、エコノミストの顧客リストへのアプローチが可能になったため、ブランド各社とも長期的、かつ深い関係性を築くことができるようになった。

エコノミストフィルムは2017年、5つのブランドスポンサードのシリーズを制作。そのうち4つはグループ全体で取り組んだ、億単位の予算規模の大型キャンペーンの一部であった。多くの場合、こういったキャンペーンにおいては、エコノミストフィルムのクリエーションには30万ポンドから50万ポンド(約4500万円から7600万円)の予算がつくという。

また同年、高級時計ブランドであるブランパン(Blancpain)とEY(Ernst & Young)も、エコノミストフィルムとの契約を更新。それぞれのブランドのために制作したシリーズごとに、全プラットフォーム合計で100万ビューを保証している。クレッドランド氏によると、この100万ビューという数字は、これまでも常に達成してきたという。

Lucinda Southern(原文 / 訳:塚本 紺)
Image via The Economist Films