貧困家庭の男児に寄付金が集まったものの…(画像は『Metro 2018年1月18日付「Charity gives boy with frozen hair just £900 of £56,000 raised for him」(Picture: Asia Wire)』のスクリーンショット)

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中国の雲南省魯甸県にあるZhuanshanbao小学校の男児が氷点下の気温の中で登校し、髪が凍ってしまった写真がSNSで拡散したが、その後この男児の身元が判明し多額の寄付金が寄せられた。英メディア『Metro』などが伝えている。

凍える気温の中、遠く離れた自宅から学校へと通う男児の姿はSNSで拡散した後、多くのメディアに取り上げられた。大変な格差社会の中国における貧困家庭の一例ではあるが、ワン・フーマン君という8歳男児が寒さに耐えながらも懸命に勉強に励む姿に心打たれた人も多く、この男児にと50万元(約860万円)もの寄付金が寄せられた。ところが政府が運営する慈善団体に集められたこの寄付金のうち、ワン君の家庭に渡されたのはわずか8,000元(約13万8,000円)だったのである。

ワン君への寄付金は、昭通市青少年育成財団を通して集められた。しかし1月16日、同財団は「残りのお金はワン君のような貧困家庭の子供たちに寄付する」という声明文を発表した。この取り決めに「これだけ多額の寄付が集まったのなら、他の貧困家庭の子供を救うのにもじゅうぶんなお金だろう」といった声もあるが、「ワン君のために寄付をしたのに、他人の子のために使われるのはおかしい」「なぜ寄付金を政府が管理するのか」といった疑問視するの声もあがっているようで、物議を醸している。

魯甸県教育局長のチェン・フーロンさんが『中央人民広播電台』に語ったところによると、政府当局がワン君に寄付金の全額を渡さない理由は「ワン君の家庭を保護するためと、まだ子供であるワン君が大金を手にしてしまうことで今後の彼の成長に悪影響を及ぼす可能性もあるから」というものだった。

泥で塗り固められただけの古い家に祖母や姉と暮らしているワン君は『Pear Video』の取材に、出稼ぎに出ている父親には数か月会っていないため寂しいと明かしていた。ワン君によると母親は家庭を捨て出て行ったようだ。

雲南省青少年育成財団と提携先の昭通市青少年育成財団は、それぞれの財団のサイトを通して集められた寄付金がどのように使われるかという詳細を発表すると述べている。一部メディアでは現在、ワン君の通う学校には暖房設備が整えられ、地元当局はワン君の父親にも仕事を手配したことが伝えられた。

今回、寄付を呼び掛けた昭通市青少年育成財団のスタッフは「ワン君のためだけでなく、あくまでもワン君のような貧困家庭の子供たちへの寄付が目的だった」と主張しているが、ワン君へと寄付をした人々は納得できないようだ。このニュースを知った人からも「こういうことがあるから、どんなに寄付をしたくても本人に届かないのではと思って躊躇してしまう」「他の貧しい子供たちを救うのも確かにいいことだけど、もうちょっとワン君にあげてもいいのに」「多額の寄付金だから本当に他の貧困家庭にもあげるなら、多くの子供が救われるのは間違いないでしょうね」「この子のための寄付金だったのだから他の子供たちへの寄付はまた別に設定すべきだったのでは」「寄付金が政府管理ということは最悪の場合、役人の懐に入ることもあるわけだよね」といった声があがっている。

画像は『Metro 2018年1月18日付「Charity gives boy with frozen hair just £900 of £56,000 raised for him」(Picture: Asia Wire)』のスクリーンショット
(TechinsightJapan編集部 エリス鈴子)