※写真はイメージです。(写真=iStock.com/izusek)

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1泊程度の旅行でもキャリーバッグをゴロゴロと転がす人がいる。いったい何を持ち歩いているのか。その荷物は本当に必要なのか。多すぎる荷物は、飛行機の出発遅延の原因にもなる。ネットニュース編集者の中川淳一郎氏は「荷物を減らせば、旅行はラクになるし、周囲にも迷惑をかけずにすむ」と指摘する――。

■カンボジアの空港で経験した「初めての出来事」

これまで飛行機には何度も乗ってきたが、今年1月3日、カンボジアのシェムリアップ空港で初めての体験をした。「荷物のオーバーロード(荷物の積み過ぎ)で出発できない」という出来事である。

19時20分発のプノンペン行きの飛行機に乗ろうとしたのだが、「国内線」なので出発の1時間前に着きゃいいだろうと、18時20分ごろ空港に到着した。このアンコール遺跡にほど近い空港はかなり小さく、建物正面の入り口をくぐるとすぐ目の前にチェックインカウンターがある。

着いたところでトイレに行きたくなり、用を足して戻るまで、約1分数十秒。その間に観光バス2台が到着していた。そして、ツアー観光客の集団が一斉に空港内になだれ込んできた。皆、とんでもない量の荷物を持っている。この瞬間「あぁ……。小便を我慢すればよかった……」と激しく悔やんだ。同行者も用を足しに行っており、戻ってきたころには、ツアー客たちがカウンターに長い列をつくっていた。

■荷物の多すぎるツアー客に辟易

設備の整った空港であれば、預ける荷物がない場合、自動チェックイン機で発券手続きを済ませることができ、カウンターに出向く必要はない。しかしシェムリアップ空港にはそうした設備はなく、預ける荷物があろうとなかろうと、カウンターでの発券手続きが必要だった。

近年、カンボジアを訪れる観光客の荷物量が増大しているのかどうかは判然としないが、そのときのツアー客は、とにかく荷物の量が多かった。そのためカウンターでは職員と客がたびたびモメているようだった。おそらく「規定の荷物量を超えている。超過手荷物料金を払え」「どうしてそんなカネがかかるのか。払わない」といったやりとりが行われていたのだろう。出発時刻が近付いても、列はなかなか進まない。

■機動力重視で荷物を減量

結局、私がカウンターで発券を受けたのは19時5分のこと。手荷物検査を受けて搭乗口に着いたころには、すでに搭乗が始まっていた。

すぐに並んで機内に入り、離陸を待ったのだが、定刻の19時20分になっても機体は動き出さない。19時55分ごろ、機内アナウンスで「荷物のオーバーロードのため、出発まであと15〜20分ほどかかります」との案内があった。前の客から「荷物が想定よりも大幅に増えてしまったんだな。それで、貨物室にバランスよく配置しなおす必要が出てきたんだよ」という声が聞こえてきた。あぁ、早く飛び立ってくれ。このままだとトランジットに間に合わない……と内心焦ったが、無事20時25分に離陸し、プノンペン発成田行きの飛行機に乗ることができた。

さて、前置きが長くなってしまったが、今回のテーマは「旅行の際の荷物」についてである。

基本的に、私はひとりで出張に行くときはEASTPAKのリュックひとつで出向く。中身は1日分の着替え、ノートパソコン、クリアファイルに入った資料、書籍1冊、タオル、ニンテンドー3DS、各種電源、薬……といったところだ。動きやすさを重視するので、必要最小限の荷物しか持たない。

また、今回のカンボジアもそうだが、2人で行く場合も非常に荷物は少ない。横幅70cm、高さ50cmほどの肩掛けカバンと、私が普段使っているEASTPAKのリュックだけだ。ここに2人分のすべての荷物をパックして持ち運ぶ。飛行機に乗るときも、カウンターで預けることはない。現地では当座必要なものだけをリュックに入れて、私がそれを背負って行動する。

■旅行や出張の荷物、多すぎでは?

海外旅行になると、洗濯物は5日分×2人分、書籍の冊数は4冊に増え、ガイドブックや変圧器が増えるが、基本的にはそれだけである。だから、冒頭で登場したような「荷物のやたらと多い旅行客」が、巨大なバッグやスーツケースにいったい何を入れているのか、さっぱり理解できない。

少し前、日本では中国人観光客の「爆買い」が話題となった。膨大な物品を購入したのであれば、大きな荷物になってしまうのもまだ理解できる。だが、昨今は出張を含むちょっとした旅行であっても、妙に荷物が多過ぎないだろうか? たかが1泊の出張だというのに、車輪のついたキャリーバッグを携えて新幹線に乗っている人が大勢いる。海外旅行ともなれば、巨大スーツケース+キャリーバックといった人もいる。

荷物をたくさん持つのは自由だが、冒頭で述べた例のように「オーバーロード」になって飛行機の離陸が遅れるのは、正直たまったものではない。

■荷物が少ないことのメリット5選

皆が荷物を持ちすぎると、全体最適の面でもデメリットも生じるので、できれば荷物は減らしていただきたい。そこで、私が考える「旅行で荷物が少ないことの利点」を列記してみよう。

【1】さっさと空港外に出られる

荷物を減らして機内に持ち込むバッグにすべて集約してしまえば、あの巨大回転ずしのような、荷物が流れてくるベルトコンベヤーの前で待つ必要が一切ない。人々が荷物を待つなか、自分はソッコーで税関へと進み、荷物検査を受けてすぐに外に出られるのだ。ファーストクラス、ビジネスクラスの客は機外に早く出られる特権を持ち、エコノミークラス客の荷物よりも先に荷物が出てくるものの、結局はベルトコンベヤーの前で待つ必要はあるわけで、荷物を預けなければ彼らよりも早く外に出られるのである。

【2】軽い・動きが速い

人々がゴロゴロとキャリーバッグやスーツケースを引きずっているなか、さっさと歩いて追い抜くことができる。これにより、けっこうな時間を節約できるし、体力的な負担も減少する。

【3】防犯になる

海外の街中でスーツケースを転がしていたりすると、窃盗団からすれば格好の標的になることだろう。リュックを背負っていたり、肩からカバンを下げたりするだけなら、盗まれづらい。

【4】余計なものを買わないで済む

バッグ内のスペースが限られているので、現地で買い物をしても入れようがない。そもそもいまの時代、物欲的には満足している人も多いことだろう。旅行先で新たに何かが欲しくなったとしても、荷物スペースのことを考えてちょっと冷静になれば、本当に必要かどうかをシビアに判断できる。土産を買うにしても、実際はそれほど魅力的な品物はない。「スペースに余裕がないから何も買わない」と最初から決めてしまうのも手だ。

【5】準備に時間がかからない

出発前やホテルをチェックアウトする際、荷物が少ないと最後の荷造りがほんの5分ほどで完了してしまう。パッキングに手間がかからない。乗り継ぎをするにしても、荷物を受け取り、さらに預ける必要がないためさっさと次の飛行機に向かうことができる。

このように、荷物が少ないほど旅行がラクになることを実感しつづけているので、たとえば2月に控えている愛媛出張や、3月の大阪出張なども、私はEASTPAKのリュックひとつで軽々と出かけていくことだろう。

「どうしても荷物が減らせない」という人も、次の旅行前の荷造りでは「前回使わなかったものは持っていかない」くらいの断捨離は意識してみてほしい。なお、冬の日本から季節が逆の国に行ったり、常夏の国に行ったりする場合は、空港の「コート預けサービス」が便利である。今回のカンボジア旅行では、6日間預けて1人1300円ほどだった。暑い国でコートを運ぶ煩わしさから解放されるのは、実に心地よい。

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【まとめ】今回の「俺がもっとも言いたいこと」
・旅行に多すぎる荷物を持っていくと、周囲に迷惑をかける可能性がある。
・荷物を減らす意識を持つと「本当に必要なものは、実はとても少ない」ということに気づかされる。

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中川淳一郎(なかがわ・じゅんいちろう)
1973年東京都生まれ。ネットニュース編集者/PRプランナー。1997年一橋大学商学部卒業後、博報堂入社。博報堂ではCC局(現PR戦略局)に配属され、企業のPR業務に携わる。2001年に退社後、雑誌ライター、「TVブロス」編集者などを経て現在に至る。著書に『ウェブはバカと暇人のもの』『ネットのバカ』『ウェブでメシを食うということ』『バカざんまい』など多数。

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(ネットニュース編集者/PRプランナー 中川 淳一郎 写真=iStock.com)