スケールの大きさ、という点で言えば、かつて稲本潤一や福西崇史を見たときに覚えた衝撃、期待感に近いものがある。

 U-23アジア選手権のグループステージ第3戦、北朝鮮戦の28分のことだった。


チーム最年少の18歳で招集されたジュビロ磐田の伊藤洋輝

 左シャドーのFW旗手怜央(はたて・れお/順天堂大)がアタッキングサードで仕掛けると、左の外側を疾風のごとく駆け抜けてパスを受け、左足でシュートまで持ち込む選手がいた。

 いわゆる、3列目からの飛び出し――。

 それが、もともとアタッカーであるボランチのMF森島司(サンフレッチェ広島)や、左ウイングバックのMF浦田樹(ギラヴァンツ北九州)だったら、驚きはない。

 しかし、ゴール前に現れたのは身長188cmのボランチ、MF伊藤洋輝(ジュビロ磐田)だったのだ。しかも、一度のみならず二度までも。

 43分、似たようなシチュエーションでふたたび伊藤がロングランで旗手を追い越してスルーパスを受けると、中央でマークを外したMF三好康児(コンサドーレ札幌)の動きをしっかりと確認してマイナスのクロス。正確なフリーキックをDF柳貴博(FC東京)に合わせた32分の先制点に続き、伊藤は連続アシストをマークした。

 こうしたダイナミックな攻撃参加に、コンビを組んだ森島も驚きを隠せない。

「洋輝、意外と攻撃好きなんですよ。練習のときにちょっと気づいていたんですが、ビックリしました」

 もっとも、伊藤のプレーをよく知るジュビロ磐田サポーターやユース年代の観戦者なら、なんの驚きもないだろう。ボランチとして恵まれた体躯、正確な左足のフィードやプレースキック……。しかし、それ以上の魅力が、ロングランからゴール前に飛び出していく「縦のベクトルの太さ」なのだ。伊藤自身が振り返る。

「あれを出せなかったら自分じゃないですから。狙っている形をうまく出せてよかったと思います」

 伊藤が見せた数的優位を生み出す大胆な飛び出しを、森保一監督も奨励する。

「局面でチャンスと思うシーンがあれば、ボランチであれ、DFであれ、リスクを冒して積極的に攻撃に絡んでほしいと思っています。そういう意味では、洋輝がああやって上がっていってくれたこと、得点に絡んでくれたことはいいプレーだったと思います。これからも選手たちにはどんどん見せてほしいですね」

 1997年以降に生まれた選手で構成されるU-21日本代表(森保ジャパン)において、1999年5月生まれの18歳の伊藤は、今大会のチーム最年少である。だが、ピッチで披露したのは、およそ最年少らしからぬプレーだった。

 21分には左足でミドルシュートを見舞った。そうした精度の高い左足のキックや前述したダイナミックな飛び出しだけでなく、素早く相手に寄せてパスコースを限定し、空いたスペースを巧みに埋める。そのポジショニングにも非凡なものを感じさせた。

 もっとも、前半の立ち上がりと2-0で迎えた後半の立ち上がりには北朝鮮に押し込まれ、1点を返される展開だっただけに、試合の翌日、伊藤の口からは反省の言葉が次々と出てきた。

「ボランチから高い位置に1本パスを通せれば、もっと状況が変わっていたと思うんですけど、北朝鮮のプレッシャーにハマってしまって……」

「自分の持っているものを出し切る、持ち味を常に出す。昨日も(旗手)怜央くんが運んでくれたところで2回飛び出していけたので、その回数をもっと増やしていきたい」

「昨日みたいにガチャガチャ守ってくる相手(北朝鮮)には、逆サイドに逃げる、逃しのボールをもっと増やしてもよかった。そうすれば、もっと速い攻撃ができたんじゃないかと思います。ポジショニングや受ける前の準備をもっとよくしていかないといけない」

 プレーヤーとしての矜持(きょうじ)をのぞかせたのは、こちらが「大型ボランチ」という言葉を口にしたときだった。その言葉に即座に反応した伊藤は、きっぱりとこう言った。

「大型ボランチと言われるのは好きじゃなくて。ヨーロッパだったら普通のサイズだと思っているので」

 最近、プレー映像を見て参考にしているのは、自身と同じ身長188cm、パリ・サンジェルマンの22歳のMFアドリアン・ラビオだという。

 ラビオもまた、大柄ながらボールを一気に持ち運び、左足から強烈なミドルを放つボランチだが、ただ参考にしているだけではない。「これからマッチアップするかもしれない選手なので、いろんなところを盗んでいければいいなと思います」と、しれっと口にした。その視線は常に、ヨーロッパでのプレーに向けられているわけだ。

 そんな伊藤にとって、磐田は理想的な環境だろう。

 磐田U-18に所属する高校3年生だった昨年5月からトップチームに帯同し、今年から正式にトップチームの一員となった。

 言うまでもなく、チームを率いるのは日本を代表するボランチで、伊藤と同じレフティの名波浩監督である。「居残り練習に付き合ってくれて、キックの球種をいろいろ教えてくれる」という指揮官からのひと言、ひと言が、伊藤にとって財産になっている。

「自分のサイズで視野が広いのは武器だと。それをなくしたらストロングがなくなるぞ、と言ってくれる。守備の部分では、ガチャガチャ取りにいくよりも、コースを限定しながら味方に取らせることをもっと意識して増やせ、と言われますね」

 一方、チームメイトにはヨーロッパでのプレーを経験した中村俊輔と山田大記がいる。彼らから聞くヨーロッパの話が、伊藤にとって刺激にならないはずがない。

「大記くんから、ドイツではデカい中盤が多くてガチャガチャしていると聞いて、そういう守備も必要なんだろうなと思う反面、コースを限定するところをもっと磨いてヨーロッパで勝負できればいいなって。ほかにも(川又)堅碁くんもいますし、去年は3バックの左に入ることが多かったので、アダ(アダイウトン)とマッチアップすることが多くて成長につながった。毎日吸収することばかりでした」

 北朝鮮戦で伊藤が見せたダイナミックな飛び出しは、同じポジションの先輩にも影響を与えていた。1戦目、2戦目に連続スタメンを果たし、攻撃の組み立てを担ったMF井上潮音(いのうえ・しおん/東京ヴェルディ)が、伊藤から得た刺激について明かす。

「試合終盤でも前線まで行って、シュートまで持ち込んだ場面があって、あれを見ていい選手だなって。僕はボールに関わりながら前に行く感じですけど、昨日の洋輝のプレーを見て、自分もああいうプレーを増やしていきたいなと思います」

 1月19日に行なわれるウズベキスタンとの準々決勝のボランチは、おそらくこれまでどおりMF神谷優太(愛媛FC)と井上のふたりになるだろう。しかし、チームがその先のステージに進出したとき、伊藤が2ボランチの牙城を崩してもおかしくない。

 正確な左足のキックと大胆不敵な攻撃参加――。18歳のボランチの可能性は、無限大だ。

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