「部下が思ったように動かない」と嘆くリーダーは大事なことに気づいていません(写真:xiangtao / PIXTA)

ITの発達によって、大手企業だけではなく極少人数のベンチャーやスタートアップが急激な発展を遂げるケースも珍しくはない。
ベンチャー企業と聞くと、圧倒的なスピードをもって急成長する華やかなIT系企業をイメージしてしまう方が多いかもしれないが、急発展を遂げる企業よりも、ひっそりと消えていくベンチャー企業のほうが圧倒的に多い。
このようなスタートアップ企業が崩壊していく原因は、「リーダーの力量不足による組織内部の崩壊がほとんどだ」と警鐘を鳴らすのは、『困った部下が最高の戦力に化けるすごい共感マネジメント』の著者、中田仁之氏。中田氏は「組織を衰退させるリーダーに最も欠けているものは共感力だ」と力説する。

拡大する組織と衰退する組織の違い

「自分に替わるリーダーがおらず、社長本来の業務に専念できない」
「うちの会社のような小さな会社には優秀な人なんて来ませんよ」
「人を育てるって難しいですね」

外から見ると順風満帆に見える小さな企業の経営者からよくこんな悩みを聞きます。創業まもない小さな会社では、1つにまとまるどころか人の入れ替わりの激しさ、ニーズに合った人材の不足に悩む経営者のほうが多いのが現実のようです。

同じような状況にありながら、爆発的な発展を遂げ拡大し続ける組織と、ひっそりと音を立てずに消えていく組織の違いは「チームの統率力」にほかなりません。ある目的に向かってチームが一致団結しているか否かの違いです。そんな統率のとれたチームとそうでないチームの違いはなんでしょうか?

創業して数年。「自分は社長に向いていないのではないか」と悩んでいる創業社長の林忠義さん(仮名)がいました。

組織に仲良しグループはいらない

林さんは起業当初こそ個人事業主のような一人会社の状態で、人材の重要性をさほど意識していなかったものの、陣容が拡大するにつれて、人材選びで何度も失敗していました。そのうち、「人材」を育てることの重要性に気がつき、指導に熱を入れます。ところが、熱を入れれば入れるほど、思うように動かない部下に対して、怒りの感情が爆発してしまい、経営者との気持ちの温度差から、辞めていくスタッフが後を絶たなかったそうです。

林さんは1人のリーダーを決め「チーム」を組ませてみました。最初こそチーム内で仲良くやっていたものの、気づくとチームは仲間割れ。当時、多忙を極めていた林さんは「もう人事がらみで面倒なことにかかわりたくない」との気持ちが強く、見て見ぬふりをしていたそうですが、その仲間割れはどんどん拡大し、取り返しがつかないほど社内の雰囲気が険悪になってしまったとのことでした。

こうした失敗は、なにも林さんだけではなく、小規模な会社の経営初期段階ではよくある事例です。一方、こうした経験を乗り越えた経営者は、林さんの採った戦略が適切ではなかったと知っています。それは林さんがつくったのが「チーム」ではなく「グループ」だったからです。

創業まもない経営者にありがちなのは、チームとグループの違いを理解していないことです。同じ組織に属しているからといって、必ずしも「チーム」とは限りません。一見、同じような意味合いにとらえられがちの言葉ですが、チームとは1つの目的に向かって一致団結して協力し合う統率のとれた組織を指し、グループとはそれぞれがバラバラの方向を向いている単なる集まりにすぎません。そのため、グループとチームには圧倒的な差が生じてくるのです。

このことを林さんにお伝えしたところ、「恥ずかしながら、今の今までそのことにまったく気づけませんでした。私は、学生時代に運動をしていたわけでもなく、会社員時代もどちらかというと自分の成績さえよければいいという、個人プレーだっだかもしれません」という答えが返ってきました。

拡大する組織と衰退する組織の違いは、単なるその場かぎりの仲良しグループなのか、それとも全員が1つの目標に向かって協力し合えるチームなのかによります。グループではなくチームであるために必要不可欠なのは、リーダーの存在です。リーダー不在のチームは、統率力を失い、いずれグループとなり、確実に崩壊していきます。仮にリーダーがいたとしても、リーダーとして機能していないのなら結果は同様です。

真のチームを創るためのリーダーのあり方


真のチームを創り上げるために、リーダーには何が求められるのでしょうか。幼少時より野球を通してチームに所属してきた私が、チーム力を高めるために最も大事にしているものがあります。それは「共感力」です。

共感力とは、文字どおり他人に共感する力のことです。他人の気持ちがわかる力ということであり、他人に自分の気持ちをわかってもらう力ということでもあります。そこにさらに、お互い共感することで発揮される力という意味も込めて、私は共感力という言葉を使っています。

具体的には5つの手段があります。

(1)感謝を伝える
(2)可能性を信じる
(3)誤った行為をしかる
(4)感情を共有する
(5)チーム心を養う

上記をさらにかみ砕いてお伝えしましょう。

(1)感謝を伝える=大切な人に、きちんと言葉で感謝を伝える
(2)可能性を信じる=大切な人の可能性を最後まで信じ、相手の自信を育ててあげる
(3)誤った行為をしかる=しかるときは人格を否定せず、誤った行いを短い言葉でしかる
(4)感情を共有する=恥ずかしがらず、喜怒哀楽を一緒に表現する
(5)チーム心を養う=「チームのために自分には何ができるのか?」を全員が自問自答できる雰囲気をつくる

最初からすべてを完璧にできるリーダーはいませんが、なんらかの組織を設け、達成したい目標があるのなら「チーム」の結束力は必要不可欠。そのためにはリーダーとしての資質をいやでも身に付ける必要があります。共感力を高めるのは、その一歩ともいえるでしょう。