カフェのテーブルには、使用済みの容器がよく置かれたままになっている。


 東京や京都などのカフェでは、日本人だけでなく、外国人の姿も多く見られるようになった。カフェの使い方の習慣が地域によって違うため、店内での行動のとり方もさまざまだ。

 最近よく目にする光景は、使用済みの空き容器をテーブルに置いたまま退店する人たち。空いた席が使われない状態が続くこともある。店員のこまめな店内巡回は対処法の1つとなるだろうが、客側も店員に声をかけるなどの協力をできないものだろうか。

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外国人客は増加の一途、容器の“放置”を見る場面も

 訪日外国人の数は2010年代に入り、激増している。日本政府観光局の統計によると、2016年には約2403万人。わずか3年前の2013年比でも倍以上だ。政府は訪日外国人観光客数の目標人数を2020年で4000万人、2030年で6000万人としている。

年別訪日外国人数の推移。をもとに作成。


 カフェを利用する外国人客も、東京や京都などではごく普通に見かけるようになった。そして、こんな光景を目にすることもある。

 大きなキャリーバッグを引いて席に腰掛けた集団の外国人客たちが、フラペチーノを飲み、ケーキをほおばり、おしゃべりをする。そして店を去っていく。テーブル上に残されたのは使用済みの空き容器や食べかす・・・。その後、別の客がその席に近づくが、置かれたままの容器や食べかすを一瞥し、他の空席を探しだす。すぐまた別の客が来るが、やはり見切って別の空席を求めて彷徨う・・・。

 使用済み容器や食べかすがテーブルに放置されたままのため、しばらくの間その空席は使われない状態が続くことになる。

習慣の違いから来る「セルフ後片づけ」の有無

 カフェには、店員が席まで注文を聞きに来る「フルサービス店」と、客がレジスターで注文を済ませて飲食物を席まで自分で運ぶ「セルフサービス店」がある。前者では店員が後片づけもするが、後者では「セルフ」なので通常は客自身に使用済み容器の片づけが求められる。だが、日本では常識となっているセルフ店でのセルフ後片づけも、外国では習慣となっていない地域があるようだ。

 シンガポール在住の筆者の知人によると、現地のセルフサービス店のカフェでは返却口を明示していないところも多く、セルフ後片づけ率は、返却口を明示するファストフード店ほど高くはないという。セルフ後片づけがされない店では、客でなく、店の清掃スタッフがテーブル上の使用済み容器を片づけるのだ。

シンガポールのセルフサービス式のカフェにて。客が退席するとすぐ、清掃スタッフ(赤い服の女性)が使用済み容器を片づけに来る。(筆者の知人が撮影)


 海外のカフェやファストフード店などでの使用済み容器の返却法について綴られた記事を探してみると、いろいろと出てくる。

<海外のスタバでは、店員が定期的に大きなトレイ(?)を持ってきて食器やカップを回収します>*1

<こちらの人たちはスタバで後片付けはしない。(略)「置いて帰る」というのが常識らしい>(フランスや英国、2015年)*2

<ファストフード、フードコートでは片づけ係が常駐しているのでテーブルの上に食べっぱなしでOKです>(ドバイ、2015年)*3

*1:http://working-asia.com/cafe/
*2:http://brunchstyle.com/?p=4747
*3:https://blogs.yahoo.co.jp/lovechild_luckyforever/19026991.html

 カフェに限らないが、空き容器の回収を業務とする係が存在するため、客はセルフ片づけをすることなく退店するという習慣が、世界の地域によってはあるようだ。この背景には、金を払う側と働く側とを明確に区分する強い意識があるのかもしれない。

 英国のスターバックスでは、2017年にリサイクル活動の一環で、退店時には店内に設置したボックスに使用済み容器を戻すことを客側に推奨する告知を出した。セルフ後片づけが進むことにつながるだろう。

 だが、人々の習慣は簡単には変わらないもの。後片づけをしないのが当然という習慣で暮らしてきた人は、訪れた日本でセルフ後片づけが慣行されているとは思わないだろう。外国人に限らず、そう育ってきた日本人にも当てはまることではあるが。

チェーン展開の企業は「現段階では方針なし」

 カフェを運営する側に何か考えはあるだろうか。カフェをチェーン展開する企業に、空き容器のテーブル放置に対して「社として方針はあるか」と「客が協力できることはないか」を聞いた。

 スターバックスコーヒージャパンからは「今回はコメントは辞退したい」との返事が。タリーズコーヒージャパンからは「(そういう事例が)増えたら検討はすることにはなるが、現段階では社としての方針はない」とのことだった。

 両社とも、店頭スタッフの臨機応変な対応力に委ねている部分は大きいのだろう。

「置きっぱなしみたいですよ」と伝えられる

 東京など大都市圏のカフェの混雑は常態化している。座れる席が少しでも増えれば、客としては満足感が増すが、逆になかなか席に着けなければストレスが生じる。

 使用済み容器が長いこと放置されることなく処分されれば、それだけ座れるのが確実な席が増えることになる。店にいる人たちはどんなことができるだろうか。

 テーブルを拭く役割の店員に、よりこまめに店内の状況を見渡して巡回してもらえれば、放置の見逃しは減るだろうし、処分してよいかの判断もしやすくなるだろう。だが、今も忙しそうに働いている店員たちに、今以上のことを求めるのは、店をよく使わせてもらう筆者としては気が引ける。

 すると、客側のちょっとした協力が効果的となるのではないか。近くのテーブルで5分、10分、15分と使用済み容器が放置されたままであることに気づいたら、近づいてきた店員に「置きっぱなしみたいですよ」と伝えることができる。また、新たな客が席を探していれば「置きっぱなしみたいだから、店員に尋ねたらいいかもしれませんよ」と伝えることもできる。

 カフェでの座席確保を巡っては、他にも長時間利用の問題や、椅子に荷物を置く問題などもある。空き容器の放置は小さな問題かもしれないが、今後こうした場面は増えていくことだろう。

 カフェもある種の公共の場。客の“おせっかい”的な協力が、その場の使われ方を少しだけ改善することにつながる。

筆者:漆原 次郎