福島地裁は、生活保護世帯の高校生の給付型奨学金を収入認定(召し上げ)した福島市の処分を違法とする判決を下した。原告の母子は勝訴したが、まだ心から安心はできない。市が控訴する可能性もあるからだ。母子と支援者たちは判決後も、福島市役所の前で控訴しないことを求めるスタンディング・アクションを行う

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福島市が高校生の奨学金召し上げ
原告勝訴でも失った時間は戻らない

 2018年1月16日、福島地裁は「生活保護世帯の高校生の給付型奨学金を収入認定(召し上げ)した福島市の処分は違法」とする判決を下した。この裁判の原告は、2010年から生活保護で暮らすミサトさん・アスカさん(いずれも仮名)母子、被告は福島市だ。

 あらゆる意味で不安定な生活を余儀なくされていた母子は、ミサトさんが心身を病んだことから、生活保護で暮らさざるを得なくなった。そのとき、小学6年生だったアスカさんは、「少し落ち着いたかな?」という感じがしたことを記憶している。

 まもなく中学生になったアスカさんは、「建築家になりたい」という希望を抱き、「夢に向かって進むことをやめたらダメになる」と猛勉強を始めた。そして2014年、希望する高校への合格と給付型奨学金を手にした。ところが、高校に入学したばかりのアスカさんを襲ったのは、「福島市が給付型奨学金を収入認定(召し上げ)する」という事態だった。アスカさんは体調を崩しながらも、真面目に通学し、学び続けた。しかし体力気力は、少しずつ削がれていったようだ。

 母子が福島市・福島県・厚労省に審査請求を行ったため、福島市は態度を軟化させ、「用途と目的を明らかにすれば実費分だけは出す」という対応をするようになった。さらにアスカさんが高校2年だった2015年8月、厚労省が福島市の収入認定を「不適切」とした。しかしそのころ、アスカさんは大学進学を断念しようとしていた。そして高校3年の秋、「もう、高校に通い続ける自信がない」と、別の高校へ転校した。

 精神的ダメージを心療内科で治療しながらも、アスカさんは間もなく高校を卒業できそうだ。しかし、高校を卒業した後に何をするかを考えられるほどの心の余裕はない。

 金澤秀樹裁判長による福島地裁判決は、福島市の「収入認定」という決定を違法とするだけではなく、生活保護制度の実施にあたっての考え方や態度とともに厳しく批判している。精神的苦痛に対する賠償金は、要求した100万円から10万円に減額されているが、この賠償金は全額が収入認定の対象となるため、ミサトさんは「そこには、あまり興味がなかったんです。福島市が払って、福島市に戻るんですからね」と笑う。

 判決は、母子の主張を全面的に認めた上、「一時的とはいえ、それ(奨学金)を事実上没収され」たことの影響に対して、「思春期の多感な時期に、生活保護受給世帯に生まれたという本人には如何ともしがたい事情で自らの努力を否定されたとも受け取れる経験を余儀なくされた」という深い理解を示している。

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