「お店の立地もまぁまぁで、味は保証つき、それなのにお客様が全然増えない」というお店は、ターゲット設定に問題があるのかもしれません。今回の無料メルマガ『飲食店経営塾』では著者で飲食店コンサルタントとして活躍中の中西敏弘さんが、今話題の「ペルソナマーケティング」について、わかりやすく解説しています。

ペルソナマーケティング

コンセプトを作り上げるときに、最も大切なのが、「ターゲット」設定。「誰に店を利用してもらうのか」を決め、その人が「どんな時に」「いくらぐらいで」というように考えていくにあたって、コンセプトをつくっていく基盤となるのがこのターゲット。

ただ、このターゲットに対する考え方、最近は変えていく必要があると思っています。

以前は、ターゲットを設定する際に、「20代前半の女性」という具合に、比較的幅広く設定したものでした。しかし、今はよく考えてみると、「20代前半の女性」と言っても、20歳の女性と25歳の女性では今では、ニーズが全く違いますよね。

ということは、「20代前半の女性」とターゲット設定してしまうと、これだけ飲食店の数が多い現在では、ターゲット(この場合、20代前半の女性)にとっては、「ぼやけたお店」になってしまうということです。そのため、僕はご支援先には、「ターゲット像」をより限定し、詳細に、具体化した方が、「より差別化された店つくりができるよ」と話しています。この方法が「ペルソナマーケティング」です。

「ペルソナマーケティング」とは、架空の人物像を作り上げ、架空の人物のニーズによりマッチするメニュー構成、接客、販促を展開するというものです。この「ペルソナ」を明確にすることによって、「より」自店のターゲットにダイレクトにメッセージが届くようになったり、「より」ターゲットが好む商品作り、接客を行うことができ、競合店が多い中でも「とがった店」を作れるようになります。つまり、より差別化された店づくりをすることにつながるということです。

実際に、僕のご支援先にはこの「ペルソナマーケティング」に基づき、架空の人物像を作り上げ、このペルソナを皆で共有していただくようにしています。すると、今まではお店の中で「ターゲット」という意識が弱かったものが、皆で「●●(ペルソナ)はこれを好まないよ」といった話ができるようになり、商品や接客が今まで以上に「コンセプトに合致した」ものが提供できるようなりました。

僕がこの「ペルソナマーケティング」をご支援先にお勧めしているのは、これまで店のスタッフと様々なことで「もめていた」ことが要因としてあります。店に行くと、キッチンスタッフから「これ試食していただけませんか?」と言われるのですが、「味はいいけど、この商品ダメ」といった指摘をすることが多々ありました。

「味はいいけど、この商品ダメ」

この話をすると、通常多くのキッチンスタッフが怒り出します! そりゃそうですよね(笑)。料理として最も大切な「味」はOKをだしているのに、「でも違う」と言われれば、訳が分からず怒り出すのも無理はありません。

しかし、事実として「味はいいけど、この商品ダメ」なのです。なぜかといえば、こういった指摘をするときには、必ず、作り手側に「ターゲット意識」が欠けているからです。

例えば、お店のターゲット層が、「30代後半の男性」(ここでは敢えてペルソナマーケティングを使用しませんね)であるにも関わらず、提案した料理が「20代の女性が好みそうな創作料理的なもの」であれば、いくらその商品が、盛り付けがきれいでも、驚きがあっても、味がとてもおいしくても、その店の「ターゲット層」にはきっと「満足いただける商品ではない」可能性が高いからです。

意外にこういったことはどこのお店にも多く起こっていて、その原因は、「作り手側」のターゲット意識が弱いことが一番の原因です。ターゲットニーズに合わないものであれば、いくら味がよくてもダメなものはダメだということは分かりますよね!。

これまでのコンサルタント活動の中で、こういった場面がよくあり、何か対処方法がないかと長い間私の中での懸案事項になっていました。そんなときに、この「ペルソナマーケティング」のことを知り、皆で「架空」のターゲット像を作り上げ、このターゲット像を皆で共有し、このターゲット像が好むものを提供しよう、と皆でこのターゲット像を共有できれば、今までの問題は解消できるのではないかと思い、今は、僕のご支援先では、「ペルソナ像」を作りあげ、店つくり、商品開発に活かしていただいています。

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