デジタル広告が機能していることを証明しようと先を争うなかで、昔ながらのメディア監査で使われていた伝統あるパフォーマンス計測システムがデジタルに合わせて改良されてきた。それが、ブランド広告主とパブリッシャーの両方にとって「壊滅的な」結果をもたらしたと、DIGIDAYの告白シリーズのインタビューに応じたメディア監査会社の幹部は話す。この人物は匿名を条件に本音を語ってくれた。

この上級幹部は、エージェンシーサイドでも長年働いていて、メディア監査は完全に作り直す必要があると考えており、広告主たちがまだ堅牢なデータベンチマークだといわれるものに対して法外な金額を払っていることに苛立ちを感じている。

本文はインタビュー内容を読みやすくまとめてある。

――メディア監査プールとは?



メディア監査人は、メディアエージェンシーから、彼らが契約している特定のクライアントのデータを集める。このデータは、ほかの似たようなクライアントデータが入った匿名のプールに入れられる。各クライアントはこのデータプールで比較され、同種比較を行って、そのクライアントのパフォーマンスが市場のほかのクライアントと比べてどうなのかという意見を提供する。通常エージェンシーには、結果に備えよと言う。そこがまさに議論の出発点で、最終的には結果をどうするのかが交渉になり、それはエージェンシーのパフォーマンスの最良の側面を反映することが多い。

――交渉とはどういうものか?



クライアントから監査を求めた場合、プール内にほかの誰のデータが入っているかは教えられないので、それが正真正銘確かな分析かどうかを判断することは難しい。通常、プールは小さくて、5件分程度のクライアントのデータしか入っていない。デジタルを考えるなら、最大で20のクライアントのデータがあるべきだ。デジタルには、伝統的なメディアより多くのデータポイントがあるからだ。現実は、典型的なデジタルプールは、デジタルプロバイダーから買えるものには、1日24時間購入可能なさまざまな配置やターゲティング、フォーマットなど、多種多様なバリエーションが存在するので、クライアントが1年を通して行うキャンペーンについてのデータは全体の10%程度しかない。だから、同類比較をすることは本当に難しい。

――それがなぜ大きな問題に?



デジタルマーケットを非常に複雑にしているのは、いまではもう通用しない古い慣習だ。こうした古めかしいデータ蓄積プロセスがデジタルに応用されて、壊滅的な影響を及ぼしているが、メディア監査人は、デジタルやプログラマティックのデータをプールしていると主張する。これは笑える話だ。なぜなら、プログラマティックはオークションベースのシステムで、可能な限りの最良価格でオークションベースのインベントリー(在庫)に誰でもアクセスして購入できるからだ。エージェンシーのスケールに合わせる必要はない。とどめが、こうしたほとんど架空に近いプールを公開しているのがメディア監査人だが、そのプールはもはや比較対象ではない縮小しつつあるデータのブラックボックスだ。さらに、エージェンシーは、パフォーマンスをよく見せるデータだけを出そうとする。

――エージェンシーが数字をでっち上げていると?



そう。予算がどこで使われたかを理解する唯一のソースは、メディアエージェンシーだ。だから、オーディエンスに対して使ったものだという、彼らの言葉を信じるしかない。

――その効果は?



クライアントは、プールに対して一定の結果を基にボーナスを支払う契約にサインすることが多い。クライアントはプールの結果に基づいてエージェンシーに13万6000ドル(約1500万円)のボーナスを払うと書いた契約書を見たことがある。だからエージェンシーはボーナスを得るために可能な限り最善の監査結果を提供しようという気になる。これは慣例としてはいいことのように聞こえる。もちろん、よいパフォーマンスには報酬を支払うべきだ。だが問題は、ボーナスを払う構造、さらにプールに欠陥があるという事実のせいで、エージェンシーは往々にして数字を操作し、より強いパフォーマンスを見せようとする。クライアントは、間違った結果を基に多額の金を払っている。これは、クライアントにとっては痛手だ。改善のために金を払っていると信じているが、実際のところは改善につながっていないのだから。

――それはパブリッシャーにとっても痛手か?



メディアオーナーにとっても痛手だ。彼らもまた、常によりよい価格を提供し、そうしたプールを打ち負かそうとしているが、そうしたプールがメディアのオーナーブック全体を表すことはない。

――その点についてもう少し詳しく説明を



クライアントがプールから望みどおりの結果が得られるように、クライアントのためにメディアエージェンシーによりよい価格を提供しろと、メディアオーナーにプレッシャーがかけられるという意味だ。メディアオーナーはメディア監査人に苛立っている。メディア監査人は、メディアインベントリーについての自分たちの平均価格は、メディアオーナーが言っているよりはるかに安いと言っているからだ。これはつまり、関係するエージェンシーやクライアントに対してギャップを埋めるためによりよい価格設定を提示するよう、メディアオーナーがプレッシャーをかけられているということを意味する。どのメディアオーナーが悪い結果に寄与しているのがわかれば、メディアエージェンシーは彼らに電話をかけて、メディア監査の結果が悪かったので、価格設定を見直す必要があると伝えるだろう。

――クライアントへのアドバイスは?



契約では、結果や、エージェンシーグループ内での調査を基にエージェンシーがどうやって価格を改善するかに焦点を絞ろう。信頼できるエージェンシーならデータブックを開示できるはずだ。「メディア監査で悪い結果がでることはない」という話をよく聞くには理由がある。すべてはこの「交渉」とエージェンシーのデータ操作による。クライアントと監査人は目を覚まし、この慣例はもはや目的にかなわないと気づく必要がある。

Jessica Davies(原文 / 訳:ガリレオ)