男性型脱毛症(AGA)や若白髪は冠動脈疾患のリスクに(depositphotos.com)

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 常日頃、頭髪問題で悩む方々からすれば、さらに毛が抜けたり、白いものが増えたりしそうな酷な最新知見が、インド心臓病学会(CSI2017:2017年11月30日〜12月3日)で発表された。

 「男性型脱毛症(AGA)や若白髪については、冠動脈疾患のリスク因子として考慮すべきである」

 学会注目の研究成果を発表したのは、インドのU.N.メータ研究所心臓研究センター(UNMICRC)のKamal Sharma氏だ。

若白髪の心疾患リスクも5倍強

 Sharma氏の研究対象に選ばれたのは、「冠動脈疾患を抱える40歳未満のインド人男性」が790人と、「年齢幅を同じくする健康的なインド人男性」が1270人。

 被験者全員に対して血液検査をはじめ心電図や心臓超音波検査、要の冠動脈造影などの検査が実施され、各自の病歴を一様に聴取した。もちろん、頭髪事情に関しては「男性型脱毛症(AGA)」および「白髪」の個人差(程度)の評価を行なった。

 結果は「病を抱える層」と「健康な同世代層」との比較において明確に示された。まず、冠動脈疾患患者は健康層に比べ、男性型脱毛症の割合が「49%対27%」と高かった。

 また、冠動脈疾患患者は健康層に比べて、若白髪がある割合も「50%対30%」と高い点が認められた。

 さらに、年齢に応じた他の心血管リスク因子で調整を施した後の冠動脈疾患リスクに関しては、「男性型脱毛症がある場合は5.6倍」、「若白髪がある場合は5.3倍」と、いずれも高い数値が弾き出された。

 男性の白髪増加と心疾患リスクの関連については、カイロ大学(エジプト)の心臓専門医による先行研究もあり、アテローム性動脈硬化症(一般的な動脈硬化)が「白髪の発生」と似たような原因(ホルモン変化/細胞の老化/DNA修復機能の低下/炎症/酸化ストレスなど)を持つことが示唆されている。

 40歳未満のインド人男性を対象に実施された今回の研究でも、冠動脈疾患の最も強い予測因子が「男性型脱毛症」と「若白髪」のいずれかだった。それらに続く強い予測因子が、4.1倍の「肥満」だった。

 冠動脈疾患の予測因子としては他にも、糖尿病や高血圧、高いBMIや腹部の肥満、冠動脈疾患の家族歴や脂質異常症、喫煙もあったが、いずれも最強の脱毛症&若白髪に比べると関連は微弱だった。

「斎藤さんだぞ!」はリスク上昇なし

 東京大学の研究班が、米国内における11年以上の追跡調査など3つの先行論文をメタ解析したところ、男性型脱毛症患者の心疾患リスクが、そうでない男性よりも「33%」高かったとの報告がある。しかも年齢を重ね、55〜60歳の時期を迎えると「44%」にもなるとの結論が下された。

 さらに別種の3つの過去研究をメタ解析したところ、男性型脱毛症男性の心疾患リスクは、健康な同性層よりも「70%」も高く、とりわけ若年時から男性型脱毛症を発症している男性においては「84%」も高いとの違いが読み取れた。

 それも、リスク上昇が顕著なのはなぜか「頭頂部」に生じる男性型脱毛症に限られており、「生え際後退系」には上昇傾向がないという点も不思議といえば不思議だ。トレンディエンジェルの斎藤さん型の方々は安心というわけか......。

 「男性型脱毛症と若白髪は、全体的な心血管リスクに影響をあたえる生物学的年齢の指標である可能性が否めない」(前出・Sharma氏)。

 やはりU.N.メータ研究所心臓研究センターの同僚である、Dhammdeep Humane氏は、次のように語る。

 「男性型脱毛症や若白髪のある男性を診る現場の医師たちは、冠動脈疾患の監視をより強化し、健康的な食事や日常の運動、ストレスへの対処などを通した生活習慣の改善を指導すべきです」

 もっとも今回の研究は、これらの予測因子と冠動脈との関連を示しているに過ぎない点も研究陣は強調している。

 しかし、その上で「その因果関係がさらなる研究を通じて証明されるまでは、男性型脱毛症や若白髪のある男性に関しては(コレステロール低下薬の)スタチン療法は奨めるべきではない」との見解を、彼らは述べている。

 なお、学会発表された研究報告は査読を受けた後、医学誌に掲載されるまでは予備的なものとみなされて扱われる。
(文=編集部)