Doctors Me(ドクターズミー)- 最近よく目にする「胃酸過多」は俗語!? その正体を医師が解説

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私たちがよく耳にする胃腸の症状として「胃酸過多」があります。 

胃がむかむかする、胸やけがする…など、なんとなく胃腸の調子が悪いときによく言われる胃酸過多ですが、一体どのような状態なのでしょうか? 

今回は、この胃酸過多について医師に解説してもらいました。

胃酸過多とは?



胃酸過多は医師が使用する正式な医学病名ではありませんが、大辞林などの一般向けの辞書には胃酸過多や過酸症といった言葉が掲載されています。俗語なのか、もしくはかなり古い病名であるかと思われます。

胃にある壁細胞(へきさいぼう)という細胞は、神経の指令を受けるとpH1〜2という強酸性の胃酸を分泌します。この胃酸の役割は食物の殺菌と消毒です。胃にある主細胞(しゅさいぼう)からは、ペプシノーゲンという消化酵素が分泌されており、この酵素はタンパク質を小さく分解する役割をもっています。

胃は粘液を分泌することで、こうした胃酸やペプシノーゲンから自身の細胞を守っています。

胃酸過多という言葉は、「胃酸の量が多すぎる」という意味で使用される場合と、「胃酸の酸性度が強い」という意味で使用される場合があるようです。しかし、胃酸の量を計量するような検査はなく、また胃酸の酸性度を計測することも現在の臨床医学ではほとんど行われていません。

胃酸過多の症状は? 



胃酸過多の症状としては、空腹時にひどくなるみぞおちの痛み・胸やけ・酸っぱいげっぷ・胃もたれなどが代表的な症状と言われているようです。

胃の内容物が胃から食道や喉に逆流すると、食道や喉の粘膜は胃酸から身を守ることができないため、胸やけや酸っぱいげっぷが起こります。

これが胃酸過多によるものとよく思われていますが、実際には胃酸が多くても胃と食道の間にある筋肉の締まりが良ければ胃の内容物が胃から逆流することはありません。食道裂肛ヘルニアなどの病気があったり、太り過ぎ、食後すぐ横になる、といった習慣があると胃と食道の境目のしまりが悪くなり、胃酸が逆流しやすくなります。

胃酸過多になる原因は? 



胃に飲食物が入っていない空腹の状態では、胃酸の酸性度を緩和するものがないため酸性度が高くなりやすいと考えられます。また食後では、胃に食物が入った刺激から反射的に多量の胃酸が作られるため、食後に胃酸が多くなることも考えられます。

胃液の分泌は脳や神経、様々なホルモンで調節されています。例えば、おいしそうなものを見ると脳から「胃液を作れ」という指令が出て、迷走神経という神経が興奮し、胃の細胞が胃液を作ります。ストレスがあると迷走神経の働きが狂い、胃液を作り過ぎたり、胃を胃酸から守る粘液の産生が落ちたりします。

また、ゾリンジャー=エリソン症候群という病気では膵臓に腫瘍ができ、腫瘍から胃酸を作れという指示のホルモンが大量に分泌されるため、胃酸が多く作られることで胃・十二指腸の粘膜を溶け、潰瘍を引き起こします。

胃酸過多になりやすい食事・食生活は? 



香辛料やカフェイン、アルコールは胃酸分泌を促進するとされています。

一度に大量に食べ、食事と食事の間が長時間空くというような食習慣は、胃酸過多を招きやすいと考えられます。少しずつ小分けにして食事の回数を増やす「分食」が胃には優しいと考えられます。

胃酸過多から発展しやすい病気は何がある? 



胃を守る粘膜の働きより、胃酸の働きが上回れば胃粘膜が傷つき、胃潰瘍となります。胃の内容物が流れ込む十二指腸での潰瘍も起こることがあります。

胃カメラ(胃内視鏡)にて検査をしても、胃・十二指腸に潰瘍はないけれど、胃潰瘍に似たようなみぞおちの痛みや不快感がある場合、「機能性ディスペプシア」という病気が考えられます。機能性ディスペプシアにも胃酸の働きや量が過剰であることが関係しています。

また、胃酸が逆流すると「胃食道逆流症(GERD)」となります。これは胃酸が食道や喉の粘膜を傷つけ、バレット食道という状態を引き起こすため、食道がんのリスクにもなります。副鼻腔炎、喘息、慢性的な咳にも、胃食道逆流症が関係していると言われています。

胃酸過多の治療法や予防法は? 



治療には、胃酸の分泌を抑える薬、胃酸を中和する薬、胃粘膜を保護する薬、胃の働きをなめらかにする薬の他、漢方薬や抗不安薬や抗うつ剤を使用する場合もあります。

予防については規則正しい食事時間を守り、長時間の空腹やドカ食いを避けることが重要です。ゆっくりよく噛んで少量ずつ食べ、食後はすぐ横にならないことを心掛けましょう。また、ストレスをコントロールしたり、十分な睡眠時間の確保することも効果的です。

最後に医師から一言

みぞおちの不快感や痛み、酸っぱいげっぷといった症状がある場合は消化器内科でご相談ください。

(監修:Doctors Me 医師)