サブスクリプション数の増加で取り上げられることが多いニューヨーク・タイムズ(New York Times:NYT)だが、近頃では滞在時間の伸びにも注目が集まっている。

ある広告バイヤーが主導した、インターネット調査企業であるコムスコア(comScore)のレポートによると、2017年のNYTの滞在時間は約5分で、2016年と比較すると35%も増加した。サイトの滞在時間を増やすことは、NYTにとって、ビジネスモデルの中心になっているサブスクリプション数を増やす取り組みの一環だ。

「NYTに触れる時間を増やしてもらい、さまざまな領域の記事をより多く読んでもらえれば、我々のサブスクリプションビジネスのプラスになる」とNYTのソーシャルメディア編集者のシンシア・コリンズ氏は語る。

マルチメディア化が鍵



コムスコアによると、NYTは2017年、トラフィックの増加はわずかで、モバイルとデスクトップをあわせた1カ月あたりのユニークビジター数は約8900万人だった(2016年から9%増)。ただNYTは、多くのデジタルパブリッシャーたちと違い、売上を広告ばかりに依存しているわけではない。実際、驚くべきことにデジタルサブスクリプションの売上は、この第3四半期は8600万ドル(約96億円)と、前年同期比で46%も増加している。

NYTはコンテンツをフックに、サブスクリプション登録をしてもらえるように、マルチメディアの要素を盛り込んだ記事を作成。効果測定企業のチャートビート(Chartbeat)がまとめた、2017年の滞在時間が長かったデジタルパブリッシャーの記事リストに掲載されている25本のうち、10本がNYTの記事だった。そしてその多くは、記録映像やポッドキャスト、マップ、インタラクティブなチャートなどが組み込まれたものだった。

例として、少なくとも59人が命を落とした10月のラスベガスにおける銃撃事件の記事があげられる。NYTは、襲撃が行われたエリアを、マップと画像を用いて説明することで記事を魅力的にした。また、ハーベイ・ワインスタイン氏のセクシャルハラスメントのスキャンダルの報道では、ワインスタイン氏の声明全文に加え、ポッドキャストを記事に盛り込んだ。

NYTの広報担当者は、時間的制約から数字は明らかにしなかったが、マルチメディア要素が含まれる記事のパーセンテージは2桁であることと、その数値は増え続けていることを認めた。NYTでマルチメディアの利用が増えている要因のひとつは、今年、「Oak」という新しいCMS(コンテンツ管理システム)を導入したことだ。広報担当者によれば、これにより画像やテキスト、その他のメディアを編集者が並べ替えたり仕上げたりする工数が削減されたという。また、ビジュアルジャーナリズムに取り組む人員が約25人、ニュース編集室に加わったと広報担当者は語った。

広告主も滞在時間重視



NYT読者のサイト滞在時間は、ワシントン・ポスト(The Washington Post)と同程度。メディアバイヤーによるコムスコアのレポートによると、ワシントン・ポストは2017年、読者のサイト訪問あたり滞在時間が約4.5分だった。NYTの滞在時間の増加は、滞在時間がパブリッシャーにとって、広告主への重要なセールスポイントとして考えられるきっかけになった。現に、いまではユーザーにできるだけ長い時間記事を読んでもらえるよう、パブリッシャーたちはさまざまな戦術を試している。

ブリーチャー・レポート(Bleacher Report)は、自社アプリを1日に5分以上使ってもらうため、Vineに似たループ動画のタブを導入した。また、USAトゥデイ・ネットワーク(USA Today Network)は、デジタルコンテンツの形式を変え、よりパーソナライズを進めたFacebookのような外観のWebページを提供したところ、記事あたりの滞在時間が75%増加した。アウトライン(The Outline)も、記事に3Dオブジェクトを組み込んで、滞在時間が30%増加。さらにフォーブス(Forbes)は、モバイルサイトのデザインを作り直しSnapchatのようなカードを導入したところ、滞在時間が40%近く増加した。

プロハスカ・コンサルティング(Prohaska Consulting)でバイヤー戦略の責任者を務めるエリン・ヤスガー氏は、パブリッシャーとの大きな取引をする際や、カスタムユニットを購入する際、そのサイトの滞在時間が長ければ、バイヤーたちは「より持続性の高いインプレッションを買えたと認識する」のだと語った。

Ross Benes (原文 / 訳:ガリレオ)
Photo courtesy of The New York Times