2017年12月、米金融大手のキャピタルワン(Capital One)がメディアエージェンシーのセブンスターズ(The7Stars)を採用したとき、キャピタルワンのブランドディレクターを務めるケイティー・ロマックス氏は、メディアバイイングに対するセブンスターズの「透明性へのアプローチ」を賞賛した。さらに、それから1週間もたたないうちに、フードデリバリー企業のデリバルー(Deliveroo)が共鳴するかのように、セブンスターズを「魅力的」と評した。大手エージェンシーより、独立系のセブンスターズを選択するという両広告主の決断は、企業系列系エージェンシーの損失が、独立系の利益になるという事実を示唆していた。

過去12カ月、大西洋の両側で独立系エージェンシーに、メディア予算が安定的に流れ込むという現象が確認された。調査会社コンバージェンス(Comvergence)が2017年の最初の9カ月間に、米国やドイツ、インドなど21の市場で追跡したメディア広告費147億ドル(約1.6兆円)のうち、およそ28億ドル(約3100億円)は独立系のエージェンシーに割り当てられた。さらに、最初の6カ月間に分析された42の委託案件のうち、約1/3(16案件)が独立系へと移動している。それには、ホライゾンメディア(Horizon Media)に動いた本田技研工業からの6億ドル(約660億円)や、RPA(Rubin Poster and Associates)へのスプリント(Sprint)からの6億9000万ドル(約760億円)が含まれる。コンバージェンスは、主に米国に集中している独立系エージェンシーが、2017年最後の3カ月でさらに3億〜4億ドル(約330億〜440億円)を獲得するだろうと試算している。

透明性問題の恩恵



メディアバイイングプラットフォームである、イオテック(Iotec)の最高経営責任者(CEO)であるポール・ライト氏は、独立系エージェンシーは透明性問題の恩恵を受けているという。

こうした恩恵は英国でも表面化しており、10年以上にわたり独立系というオルタナティブとして奮闘してきたセブンスターズのような独立系エージェンシーが、大手から大口のクライアントを奪ってスケールを拡大している。

広告主にとって、情報開示や監査権の付与や、ネット価格でのメディアプランニングは安心感をもたらすかもしれないが、実際のところ利己主義の網はとてつもなく深いところまで張り巡らされており、エージェンシー側も自らにメリットがあるような戦略的な提案をしなければならない以上、広告主が中立的な保証を得ることは困難だ。「セブンスターズのような企業は、常にオープンで透明性の高いモデルをもっていたおかげで、より大きな顧客を獲得している。つまり、その点は問題にはならない」と、ライト氏は話す。

透明性の問題は、2017年にもっとも議論された課題であり、現在はそれを改善するためのアクションを起こすフェーズに入っていることに、疑いの余地はないと、セブンスターズの共同創設者でCEOのジェニー・ビッガム氏はいう。同氏はさらに、独立系エージェンシーは大型のネットワークの先に目を向けている、見識ある広告主から利益を得ていると付け加える。ビッガム氏は「独立系セクターの売上高はすでに、まだ大型案件を直近に控えているにも関わらず、前年比で10%も増加している。つまりこのトレンドは2018年も続くだろう」と述べる。

料金体系における矛盾



だが、独立系エージェンシーが恩恵を受け続けられるのは、マーケターが透明性の担保に投資できることが大前提だ。現実には、世界最大規模の広告主の圧力や要求に対して、質のためにさらにコストをかけると公言するエージェンシーはほとんどいない。そんななか、誠実さを付加価値とすることは一見逆効果に見えるかもしれない。

コンサルティング会社の元幹部で、マーケティングコンサルタントのマーク・バターフィールド氏は、逆に不誠実な対応に関しては別の価格設定を設けるべきか、議論したことがあるという。正しいか間違っているかはともかく、透明性の保証は付加価値になっているようだ。縮小されゆく予算の埋め合わせに苦しんでいるエージェンシーが多いなか、彼らが現状採用している、未公開の料金体型を廃止する気になったとしても、どのみち広告主もエージェンシーに対して、より多くの費用を払わなければならない。

マーケティングコンサルティング企業トリニティーP3(TrinityP3)の創設者でグローバルCEOのダレン・ウーリー氏は、払った額に見合う成果しか得られないという。場合によっては、それは均一手数料を設けるか、値上げといった形になると同氏はいうが、別のケースでは、定額料金か着手金を設けるという方法もあり得る。こうした報酬モデルはどちらも、ある種のパフォーマンスボーナスに支えられているとウーリー氏は付け加える。

投資を惜しまない広告主



透明性を担保するためのアプローチに精通している広告主のひとつが、大手銀行のバークレイズ(Barclays)だ。バークレイズは2017年に入ってすぐ、6000万ポンド(約89億円)を投じている、同行のグローバルメディア部門の会計の見直しに着手。ふたつの情報筋によると、ほかのメディアレビューとは異なり、バークレイズは、エージェンシーに対して、メディア購入のために予算がどのように使われているかを見るために、より多くを支出するつもりがあると伝えたそうだ。独立系エージェンシーのOMD(オムニコムメディアグループのエージェンシー、OMD Worldwideのこと)は最終的に大手エージェンシーのグループ・エム(GroupM)から委託案件を勝ち取った。OMDはバークレイズの予算の使い道を、非常に慎重に考えなければならないだろう。バークレイズからもOMDからもコメントは得られなかった。

もし、ブランド各社がバークレイズの考え方に賛同することになれば、大手ブランドも独立系エージェンシーの採用に魅力を感じるかもしれない。広告業界と出版業界の両方で、大手エージェンシーがあらゆる方面からの攻撃を受けて、ビジネスモデルの調整に苦しむなか、独立系エージェンシーの勢いはますます強まりそうだ。

キャピタルワンもデリバルーも、2005年の創設以降にセブンスターズが獲得した最大の契約のうちのふたつであり、英国の広告主の業界団体である英国広告主協会(ISBA)による厳格な契約テンプレートに同社が対応していることを宣伝する良い機会になった。ISBAのテンプレートは、分断が進む広告市場でより高い透明性を保証するよう考えられている。大手のエージェンシーが、さらなるマージン縮小にフラストレーションを露わにする一方で、セブンスターズは真逆の方向に敢えて梶を取り、厳しい契約で短期的にダメージを受けるとしても、結果的には恩恵を受ける道を選んだのだ。

これは基本的に、クライアントのために正しい投資をして、信頼関係を築くことの重要性と関係している、とビッガム氏はいう。メディアバイイングで透明性が確保されている前提があれば、エージェンシーは彼らのサービスや専門知識に対して、より多くを支払ってもらえるかもしれないが、ビッガム氏は、「最終的には、広告主にとってメディアにかかるコストはより低くなる。なぜならメディアの所有者がエージェンシーに対して、高額にも関わらず価値のない掲載枠を提供することもなくなるからだ」と付け加える。

独立系のウィークポイント



とはいえ、より大口の委託業務契約の獲得は、独立系エージェンシーにとって簡単なことではないだろう。メディアプランニングや購入に人口知能(AI)プラットフォームを用いることでメディアエージェンシーに取って代わろうと試みた、デンマークのスタートアップで、最近英国オフィスを閉鎖したブラックウッドセブン(Blackwood Seven)はそのよい例だ。

ディセンバー19(December 19)の共同創設者で、ディレクターのダン・ピム氏は、ブラックウッドセブンのように、市場に新規参入したエージェンシーはどこも、基盤が出来上がっていないため、困難に直面するだろうと話す。さらには自社のクライアントについてのケーススタディーができておらず、ケーススタディーを活用してクライアント候補をその気にさせることもできない。独立系エージェンシーにとって難しいのは、何もない状態から一気に駆けあがることだと、ピム氏は付け加えた。

独立系エージェンシーが台頭しているとはいえ、地位を確立している企業も現在の風潮をうまく利用するはずだ。新規に参入してきたエージェンシーは、成功するためには辛抱強く、勤勉に努力を重ねなければならないだろう。

Seb Joseph(原文 / 訳:ガリレオ)