ads.txtは、洗練されていない名称にもかかわらず、2017年にもっとも白熱したアドテクのバズワードになった。

ads.txtとは、広告バイヤーがインベントリー(在庫)のアービトラージ(裁定取引)やドメインのスプーフィング(なりすまし)を回避するのに役立つ、インタラクティブ広告協議会(IAB)が後ろ盾のツールのこと。昨年以降、アドテク主義者たちは、この件について話し出すと止まらなくなる。

この記事では、2017年のads.txtの重要な動向を5つ取り上げる。

1.採用は当初、低調



アド・オプス・インサイダー(Ad Ops Insider)によると、公開から100日以内にads.txtを採用したのは、人気ウェブサイト1万件のうちわずか13%だった。初期に採用パブリッシャーが少なかった理由としては、テクノロジーチームがほかのプロジェクトで忙しかったこと、ads.txtの恩恵を理解していなかったこと、インベントリーを売るために非公認の再販業者を使っていることをパブリッシャーが広告バイヤーに知られたくなかったことなどがある。

ads.txtの恩恵についてパブリッシャーの理解が進み、採用していないところはブロックするとバイヤーがパブリッシャーに言いはじめ、さらにGoogleが支援を表明したことで採用が増えはじめた。

「プログラマティックのプラットフォームが支持を明らかにして、インベントリー価格への(ads.txtの)直接的な効果をパブリッシャーに説明するようになると、パブリッシャーが採用を急ぎはじめた」と、アドテク企業のコンバーサント(Conversant)でクオリティ&オペレーションズのVPを務めるレイチェル・チャーチル氏は語っている。

2.パブリッシャーに対するGoogleの影響力を反映



Googleが9月に、極めて人気の高い同社の広告製品でads.txt向けのフィルタリングを開始すると発表してから1カ月で、13%だった人気ウェブサイト1万件のads.txtの採用率が44%に急増した。この間、ほかのプラットフォームでもads.txtフィルターの採用が進んだため、この増加はGoogleだけに起因するものだとすることはできない。とはいえ、Googleがads.txtの普及に大きな役割を果たしたのは確かだ。

Googleは、「DoubleClick Ad Exchange」、「AdSense」、およびデマンドサイドプラットフォーム(以下、DSP)の「DoubleClick Bid Manager」において、許可されていないセラーの排除にads.txtを用いるとして、パブリッシャーにads.txtを採用するようプレッシャーをかけた。Googleはまた、アドサーバーのダッシュボードにads.txtの管理タブを追加したうえで、「収益への影響を防ぐため」にads.txtファイルを更新するべきだとDoubleClick Ad Exchangeを使っているパブリッシャーにメールを送った。

「ads.txtがうまくいっているのがGoogleの力であるのは間違いない」と、アドテク企業アドベルベット(Advelvet)のCEOであるムラト・デリゴズ氏は語っている(同社はパブリッシャーがGoogleのアドエクスチェンジで裁定価格を設定するのを支援する企業)。

3.ads.txtを巡る論争



広告主がads.txtを採用して無許可セラーを回避するというのは、パブリッシャーから許可を得ずにインベントリーを再販しているベンダーからすると悪いニュースだ。ads.txtが軌道に乗りはじめると、サードパーティの再販業者は、ads.txtファイルへの登録を直接取引していないパブリッシャーにも頼むようになった。

再販業者たちは、すでにインベントリーを販売しているパブリッシャーと直接的なつながりを築こうとしているだけだとしていた。しかし、ほかのアドテク企業の意見は異なる。アドエクスチェンジのオープンX(OpenX)は、このやり方は「詐欺」だとクライアントのパブリッシャーにメールしている。

「企業が規格を悪用するなら、必ずや論争になる」と、ブロックチェーン企業メタX(MetaX)のCRO、アランナ・ゴンベール氏はいう。メタXは、パブリッシャーのads.txtファイルの更新を追跡する製品を開発している。

4.価格は上昇



Googleのアドエクスチェンジでインベントリー価格が上がっており、Googleはこれをads.txtによるものだとしている。

ads.txtを採用するパブリッシャーが増え、バイヤーがインベントリーのフィルタリングにads.txtを使うようになれば、なりすましドメインに使われていたお金が正規のパブリッシャーのところに行くようになるので、プレミアムパブリッシャーのインベントリー価格は引き続き上昇するだろうと、IBMワトソン・アドバタイジング(IBM Watson Advertising)でマネタイズオートメーションのグローバル責任者を務めるジェレミー・ラバチェック氏はいう。しかし、広告のバイヤーもそのベンダーも、そうした価格の変化に対する準備ができていないと、同氏は考えている。

5.絶対確実なものではない



マーケターやパブリッシャーは、いかがわしいアドテクベンダーの排除にads.txtがいかに役立つかという話をしたがる。しかし、詐欺対策ツールとしてのads.txtには限界がある。

DSPのデータシュー(DataXu)でマーケットプレイスとストラテジーのVPを務めるローリー・エドワーズ氏によれば、ads.txtは勢いを増しているが、まだ採用していない質の高いパブリッシャーはたくさんいる。ads.txtは、サイトが公開していればドメインのなりすましの排除に利用できる。しかし、ads.txtがあるサイトのみにキャンペーンを限定すると、狙うオーディエンスに大規模にリーチする力は制限されることになるのだ。

ads.txtファイルに列挙するサプライサイドプラットフォーム(以下、SSP)のスペルをパブリッシャーが間違えることは少なくない。間違えられたベンダーはDSPに無視されるようになり、パブリッシャーとSSPの収益が低下するのだからこれは大問題だ。ファーストインプレッション(FirstImpression)のads.txtダッシュボードによると、アレクサ(Alexa)のトップ1000サイトのうち約15%は、ads.txtファイルのフォーマットに間違いがある。

「大きな資金を投じるものとしては実にお粗末な感じがする」と、プログラマティックエージェンシーのグッドウェイ・グループ(Goodway Group)のCOO、ジェイ・フリードマン氏は語っている。

また、ads.txtファイルはほとんどが、正規セラーが扱えるインベントリーの種類が指定されていない。ハースト(Hearst)やターナー(Turner)などのように、ベンダーに許可しているインベントリーの種類が限定されているのかをads.txtファイルのなかで示しているところもある。しかし、ほとんどのパブリッシャーは、ディスプレイ、動画、ネイティブなどにベンダーのアクセスが限定されているかどうかを明らかにしていない。これをはっきりさせないのならば、ディスプレイのインベントリーを許可されているベンダーが、それを動画のインベントリーとして再パッケージして、ディスプレイと動画のCPMの差によるアービトラージで稼ぐことも可能だ。

「いずれは解決する」と、メタXのゴンベール氏はいう。「ソフトウェアの開発はプロセスなので、ゼロからはじめて改善を繰り返していくしかないのだ」。

Ross Benes (原文 / 訳:ガリレオ)