2017年11月末に、OPEC加盟国とロシアなど非加盟産油国は協調減産の2018年末までの延長で合意している(写真:ロイター/アフロ)

2018年の干支による株式格言は「戌(いぬ)笑う」で、株式市場では一段の上昇期待がある。実際に年始は大笑いのスタートで、日経平均は2万3000円台が定着した。1949〜2016年で日経平均株価の年間騰落率を見ると、12種類の干支のうち戌年は第7位で9.1%高(該当5回のうち、年間の勝敗は4勝1敗)と、直近3年の未(ひつじ)7.2%高、申(さる)8.8%高、酉(とり)14.4%高と比べると、強い酉の後でも強さは続くというアノマリーだ。この先、多少は叱られて半泣きする局面もあろうが、最後は笑う状況をイメージしやすい。

中国経済と原油価格の安定が貢献した


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2018年を考える前に、まずは2017年を簡単に振り返ってみたい。2017年に注目されたことは、(1)トランプ政権の1年目(人事混迷、予算審議に振り回された)、(2)FRB(米国連邦準備制度理事会)が金融正常化を進めたこと(年3回ペースの利上げに加えて、再投資政策の縮小も開始)、(3)北朝鮮問題(ミサイル発射、地政学リスク)、(4)中国経済(秋の共産党大会もあり堅調持続)、(5)原油価格(総じて安定、年後半はじり高)の5つだろう。

(1)では、大統領選挙後からの過度な期待は春には剥落。9月の債務上限引き上げ期限は、ハリケーン対策で乗り切った。(2)は市場の当初予想よりも淡々と利上げを継続。景気回復でも物価伸び悩みの状況下、米長期金利は2%台前半にいる時間帯が長かった。低金利というフォローの風のもと、米株は2018年になっても最高値を更新している。(3)は今もくすぶり続けるリスクだ。2017年10月以降の日本株上昇の背景の1つは、地政学リスクがいったん和らいでいること。(4)と(5)は、2015〜2016年とは状況が大きく異なり、これらがゴルディロックス相場に貢献したと言えよう。

それでは2018年のテーマは何かと考えると、「日米欧の金融政策の正常化」と「世界経済の回復持続力」の2つとなろう。特に前者については2月にパウエル次期FRB議長が就任、4月に日本銀行の新体制発足(黒田総裁続投でも、正副総裁3人のうち2人は交替か)と近いタイミングで体制変更が行われる。長らく市場を見てきた筆者でも、ほぼ同時期に日米中銀の体制が変わることは初めての経験だ。誰がやっても金融政策の舵取りは大きく変わらないとの冷めた見方も多いが、何か起きるかわからない点では、今春は注意すべき時間帯と筆者は思う。

その一方で筆者は昨秋時点で、この先に世界経済の回復に死角があるとすれば、(1)出来すぎの米国3%成長持続からの減速(目先は1〜3月期、好調なクリスマス商戦後)、(2)中国の債務増加(経済のソフトランディングではなく失速が懸念される時)と考えていた。

原油価格の急上昇を警戒

(1)ではまず、新FRB議長が就任するころ、発表される1月分データに鈍さが見えてくる可能性がある。その懸念を後押しするかのように、昨年末から米国東海岸では、2014年に匹敵する寒波が到来。米国経済に悪影響を与え始めている。テクニカル要因もあり、特にリーマンショック後は米国1〜3月期のGDP成長率が弱めに出る傾向があり、2018年もその可能性が高まっていると言えよう。ただし天候要因にもかかわらず、適度な減速にとどまるものならば、米国利上げのシナリオを大きく崩すものとはならない。むしろ、昨秋以降の原油高持続の方が、物価見通しの引き上げに作用する可能性がある。

(2)の中国の見極めでは、目先は人民元動向を見守る必要がある。一部報道では、人民銀行が元高誘導を緩和したとされる。人民元の適度な安定が、中国経済のソフトランディングシナリオを支える。また1月22日発表予定のIMF(国際通貨基金)世界経済見通しでは、2018〜2019年の中国の姿にも注目したい。

最後に、2018年になって筆者が気になるのは、原油とユーロの動きだ。
ヘッジファンドの一部が、コモディティ投資(原油にとどまらず、世界経済の体温計となる非鉄金属まで)のウェイトを引き上げ始めている。その根拠は、景気後退に近づく回復局面後期に商品相場が大きく上昇するというもの。2007年から2008年夏にかけての原油相場の急上昇を彷彿させる動きとなりかねない。筆者は、WTIベースで1バレル=40〜60ドル程度が居心地のよい水準とみていたが、投機資金の流れが加速すれば、70ドル超えも十分にあり得る。

日米欧の中央銀行にとっても、2018年の原油価格は重要なカギを握ることになろう。2014年夏から2016年春にかけての原油安局面で、米国ではエネルギー産業の設備投資減少による下押し圧力が、ガソリン安の個人消費押し上げ効果をはるかに上回り、成長率の押し下げに働いた。米景気の回復長期化の中で、足元の原油ジリ高が個人消費をどの程度下押しするのか(減税効果を削ぐ可能性)、考える必要はあろう。

欧州発の金利上昇リスクに注意

一方で原油が急落した2014年夏以降、ユーロドルとWTI価格の相関係数は0.8を超える高さだ。足元の原油高に平仄(ひょうそく)を合わせるように、1月12日にユーロは対ドルで約3年ぶりの高値を更新した。ドイツの連立協議合意を好感したが、それ以外にECB(欧州中央銀行)が早い時期に緩和縮小に着手するとの観測で、ユーロ買いが継続している。「日米欧の金融政策の正常化」で、FRBは年3〜4回の利上げ観測、日銀は新体制で政策微修正の有無(9日の日銀オペ減額の反応でわかるように、海外勢の関心は高い)に注目が集まっている。

しかしながら、2018年に注意すべきはECBと思われる。世界経済の回復という言葉に隠れて、欧州経済はユーロ高の下でも堅調に推移している。ユーロ高が物価上昇を抑制しても、エネルギー価格の財価格への転嫁が進めば、想定より早く物価が上昇する可能性はある。バイトマン独連銀総裁は12日に、債券買い入れの規模縮小ペースを加速すべきとの認識を繰り返し表明した。2015年4月、2017年6月に経験したような欧州発の世界的な金利上昇リスクには注意したい。