百貨店のショッピング用紙袋は優れたデザインなのに、ECの段ボールは無味乾燥と決まっているのはなぜなのか(写真:saki / PIXTA)

ネット通販で注文をすると、無味乾燥な茶色の段ボールの包装箱に商品が入れられてくる。この地味な包装箱がカラー化したり、きれいなデザインや楽しい意匠が施されたりしていたら、驚くに違いない。

そんなサナギがチョウに変わるような劇的変化がいま包装箱に起ころうとしている――。

EC向け包装箱が急成長

流通小売業にとって、紙袋、包装箱などパッケージは、切っても切れない必須アイテムにほかならない。その包装用品を手掛けるのが、業界大手のザ・パック(東証1部上場)だ。

同社は板紙などを原紙メーカーから仕入れて、紙加工品として業務用に販売している。ショッピング用紙袋、包装箱など紙器では独自の商品企画提案力に特長があり、特に百貨店、専門店向けなどショッピング用紙袋で圧倒的なシェアを誇る。

ただ、主力のショッピング用紙袋は売り上げが横ばい。インバウンド(訪日外国人観光客)の「爆買い」が救いとなっているが、実店舗をベースとした国内消費は伸び悩んでおり、先行きのショッピング用紙袋への需要は頑張っても横ばいが精いっぱいというところだ。

こうした紙袋の伸び悩みを補って余りあるのが、EC(電子商取引)向けの包装箱需要の急成長だ。“消費不振”がいわれているがそれはリアル店舗ベースの話であり、ECのほうはありとあらゆる商品分野で広がりを見せている。バーチャル店舗での購入はむしろ“消費好況”という状況だ。

ザ・パックの場合、EC向けに紙器と段ボールを手掛けている。2016年12月期には紙器が7.4%増、段ボールが5.5%増とこれまでにない伸び率を達成。2017年12月期にも紙器で7%増、段ボールで3%増が見込んでいたが、旺盛な年末需要の伸びでやや上振れして着地した確率が高そうだ。

こうした旺盛なEC向け包装箱需要を追い風に、業績も2期連続で過去最高の純利益を更新する見込みなど絶好調だ。

紙加工品全体の売り上げ内訳では、紙袋がまだトップだが、紙器、段ボールのEC向け包装箱が紙袋に迫る勢い。

商品のパッケージが劇的に変化するのはビジネスチャンスにほかならない。ようやくEC向け包装箱の“進化”に着手しようとしている。それが2016年後半から手掛ける「美粧包装箱」(美粧性のある包装箱)への取り組みである。

ターゲットはアパレル企業


ザ・パックが2016年後半から販売に着手している「美粧包装箱」。アパレル業界などをターゲットに顧客の開拓を進める狙いだ(写真:ザ・パック)

紙袋については、リアル店舗の百貨店、専門店、あるいは各社の各ブランドなどの「歩く広告」といわれるほど意匠性が高く、デザインの粋が施されている。

しかし、ECなどバーチャル店舗から各家庭に送られてくる包装箱は無味乾燥な茶色というか、段ボールそのもので無機質なものでしかない。

「無機質なだけの包装箱を楽しいモノに変える。デザインや色彩などを施した意匠性のあるパッケージに進化させる。お客が配送されてきた商品を受け取る喜び、パッケージを開けたときの喜びを演出したい。紙袋で培ったノウハウを包装箱に注ぐことで、美粧性のある包装箱は“届ける広告”だということも顧客に提案していく」(藤井道久・取締役管理本部長)

ザ・パックが取引している顧客は1万4000社に上るが、「美粧包装箱」で特に狙っているのがアパレル各社だ。空前のアパレル不況の中、実店舗の統廃合に追い込まれていても、ECは拡大傾向にある。

「美粧性のある包装箱ももちろんのことだが、包装箱はすべて顧客向けのカスタムメードで一品一品異なるものとして、顧客に提案している。百貨店などの紙袋が家庭で2次利用されているように、家庭に届いた美粧性のある包装箱が当たり前に2次利用されるぐらいに意匠性を高めたい」(藤井取締役管理本部長)

ザ・パックが狙いを定めているのが首都圏市場の深掘りだ。ザ・パックの売り上げ内訳は、東日本59%・西日本41%(2010年東日本52%・西日本48%)だが、中期で東日本70%・西日本30%にするとしている。東京工場拡充も着実に進行させており、生産能力倍増がすでに完了している。

首都圏市場の深掘りでツールの1つとなるのが、「美粧包装箱」。まだ始まったばかりだが、2〜3年先には包装箱といえば、無味乾燥な茶色ではなく、カラーやデザインの施された意匠が高いものが当たり前になっているかもしれない。