2017年の「旅行業」の倒産は28件(前年27件)だった。前年より1件増加し、2年連続で前年を上回った。負債総額は、215億7,300万円(前年比465.0%増)と大幅に膨らんだ。
 負債が膨らんだのは、被害者9万人を巻き込んで大きな社会問題に発展し、2017年11月に社長が逮捕された(株)てるみくらぶと関連会社1社が押し上げたため。過去20年では1998年(負債総額440億6,400万円)に次ぐ、2番目に高水準となった。
 形態別では破産が25件(構成比89.2%)と約9割を占め、再建型の会社更生法、民事再生法はゼロだった。最近は、航空チケットや宿泊などの予約を個人で行う「セルフブッキング」スタイルが広まっているほか、企業がコスト削減で法人利用を縮小するなど、旅行業界は厳しい経営環境が続いている。こうした風潮への打開策を見出せず、旅行業の倒産は増勢気配を強めている。


  • 調査対象の「旅行業」には旅行業者代理業を含む。

2017年(1-12月)の「旅行業」倒産、前年比1件増加

 2017年(1-12月)の「旅行業」倒産は、28件(前年27件)で微増だった。過去20年間で最多だった1998年(79件)の3分の1と、件数は低水準だが、2015年(26件)から2年連続で前年を上回った。

大型倒産で負債は過去20年で2番目

 2017年(1-12月)の負債総額は215億7,300万円(前年比465.0%増)と、前年比5.6倍に達した。過去20年間でみると、最大だった1998年(負債総額440億6,400万円)に次ぐ2番目の水準。このうち(株)てるみくらぶと関連会社の(株)自由自在の2社で、負債合計は185億1,300万円(構成比85.8%)を占め、全体を押し上げた。
 過去20年間で最大だった1998年(負債総額440億6,400万円)は、旅行業倒産では歴代最大の(株)ジェットツアー(1998年2月破産、負債252億3,500万円)が倒産したが、2017年は負債規模でこれに次ぐ水準となった。
 負債が大幅に膨らんだ一方で、負債1億円未満が18件(構成比64.2%)と6割を占めた。また、1億円以上5億円未満も7社(同25.0%)発生した。2017年は大型倒産が負債を押し上げ、小・零細規模の企業倒産が件数を押し上げたのが特徴。

破産が9割で再建型はゼロ 販売不振が7割占める

 形態別では、事業消滅型の破産が25件(構成比89.2%、前年23件)と全体の9割を占めた。再建型の会社更生法、民事再生法はゼロ(前年ゼロ)で、取引停止処分が3件(同10.7%、前年1件)と、厳しい事業環境を反映した。
 原因別では、最多が販売不振の19件(構成比67.8%、前年23件)で、全体の7割を占めた。次いで、既往のシワ寄せ(赤字累積)が3件、他社倒産の余波と放漫経営(事業上の失敗)がそれぞれ2件と続く。
 都道府県別では東京都が14件(構成比50.0%)で最多だった。以下、大阪府と滋賀県で2件(同7.1%)発生し、10府県で1件発生した。

旅行業の休廃業・解散は倒産件数の2倍超

 旅行業の休廃業・解散は2008年以降、毎年60件以上のペースで推移し、2017年は64件だった。このうち、資本金1,000万円以上5,000万円未満が5割、1,000万円未満と個人企業で4割を占め、倒産件数が沈静化をみせるなかで小・零細規模の旅行業者を中心に休廃業・解散が高止まりしている。


 東京商工リサーチが2017年10月に実施した「旅行業の業績」調査によると、大手を含む旅行業1,700社の2016年度の売上高は約2兆6241億円で、前年度から約609億円減少した。また、利益は合計155億円で前年度から約130億円減少(45.6%減)と半減した。頻発するテロ事件による旅行の手控えやセルフブッキングの浸透で、高収益が見込めるヨーロッパなどの海外旅行も落ち込んでいる。
 こうしたなか、2017年3月のてるみくらぶの倒産は、被害者数がケタ違いに多かった。倒産時のずさんな顧客対応、挙げ句に社長が粉飾決算で金融機関から融資をだまし取った詐欺容疑で逮捕されて刑事事件に発展するなど、社会的にも大きな話題になった。
 同社は、航空会社や大手旅行代理店が販売しきれなかった航空券を安く仕入れてパッケージツアーに組み込み、格安でネット販売するビジネスモデルだった。だが、航空会社がオンライン直販に乗り出し、小型機の導入で余剰チケットが品薄になり採算が悪化。顧客からの前受けで得た金を運転資金にまわす自転車操業に陥っていた。また、激安商品など派手な広告戦略で顧客に現金入金を急がせ、被害がさらに拡大した。
 だが、厳しい経営環境はてるみくらぶに限ったことではない。「格安旅行業者」はかつて、割安感を全面に押し出した戦略で大手旅行業者と差別化を図ってきた。ところが、LCC(格安航空会社)のほとんどは自社サイトでの直販体制をとり、セルフブッキングの浸透もあって存在意義すら危うくなっている。倒産自体は低水準だが、将来的な見通しが厳しく休廃業・解散は倒産の2倍以上で推移していることからもその兆候が窺える。
 旅行代理店ビジネスが大きな曲がり角を迎えている。旅行業の倒産は資金力に乏しい小・零細規模を中心に推移しているが、中堅クラスでも厳しい経営環境は変わらず今後の動向を注視していくことが必要だろう。