今回紹介する「PS-LTE」とは、警察や消防など公共での用途が想定された、LTE方式の専用ネットワークのことです。PS-LTEの「PS」は、日本語で「公共安全」という意味になる“Public Safety”の略です。

公共安全分野の「自営無線通信」

 現在、日本を始めとする各国で、警察、消防、防災などの公共安全分野をはじめとして、さまざまな分野で「自営無線通信」と呼ばれるシステムが使われています。

 自営通信とは、通信をする組織自身が運営する通信システムのことです。ちなみに携帯電話会社が提供するサービスは事業者通信という分類になります。たとえば、警察であれば警察無線がありますし、消防にも消防無線があります。しかし、これらの公共安全分野の無線は、たとえば携帯電話に比べると技術的に遅れたものを使用しています。

 2018年現在、日本の消防無線には260MHzや400MHz帯の周波数帯が割り当てられていますが、260MHz帯は、携帯電話で言うなら2G相当の古い方式、400MHz帯にいたっては現在もアナログ方式が利用されています。そのため、使い方としては音声通話が主で、データ通信などは非常に遅く限定的な使い方しかできません。

 こうした公共安全分野において、携帯電話で主流のLTE方式を導入すれば、たとえば現場の状況を写真や動画を本部へ送信しやすくなったりします。携帯電話の規格を標準化している団体の3GPPでは、2013年の規格「Release 11」から、PS-LTEに言及するようになりました。日本国内では昨年11月、総務省で開催された有識者会合で、海外におけるPS-LTEの状況も紹介されています。

応用できるものとできないもの

 写真や動画の送受信といった用途のほか、公共自営通信にLTEを用いることで、期待されるメリットのひとつに、構築費用の低廉化が挙げられます。つまり、より安くシステムを作り上げられるのではないか、ということです。

 公共自営通信は、社会的には非常に重要なシステムですが、その市場は商業サービスの携帯電話よりもずっと小さいものです。そのため、独自の技術を導入しようとすれば、コスト的には不利になります。

 PS-LTEのように、広く普及している技術を一部でも取り入れれば、いわゆる“規模の経済”によって、経済的および技術的利点を取り入れることが可能になるでしょう。また、現在使われている方式に比べて、グッと電波の使用効率もよくなります。

 ただし、PS-LTEには、技術的な課題もあります。たとえば、大規模な災害が発生すると、携帯電話各社の対策が進んだとはいえ、コアネットワークが遮断したり、基地局がダウンしたりして繋がらないエリアが出てくれば、消防や警察といった用途では困る場面が出てきます。そうした状況でも通信を確保できるよう、広い通信エリアや通信容量の確保、あるいは火災や事故などの現場でも破損しないタフネスなデバイスといったスペックも求められます。

 そうした対策のひとつとして、たとえば「プロキシミティ(近接)サービス」があります。プロキシミティサービス(ProSe)とは、近距離にいる人と通信したい場合、ユーザー間で直接通信できるようにする技術です。ネットワークリソースの節約や、エリア外でも通信できるようになります。また、不正なユーザーや、盗聴対策などのセキュリティ機能も必要になるでしょう。