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●2018年の新製品第一弾は?

2018年に入ったが、Appleは今年1年のビジネス展開をどのように描いているのだろうか。既定路線、新しいことなどを、ざっと眺め、考えていこう。まずは、ハードウェア、特にiPhoneに関して考察を進めたい。

Appleは基本的に、発売前に新製品の情報を流すことはほとんどない。が、既に発売が分っている製品がある。2017年6月に発表し、12月に発売予定だった「HomePod」は2018年初頭へとその時期を延期したのだ。よって、Appleが2018年に発売する新製品第一弾は、HomePodになるはずだ。

HomePodはApple Musicのライブラリを直接再生することができるホームスピーカーとして、WWDC 2017で披露された。もちろん音声アシスタントのSiriを搭載し、心臓部にはiPhone 6シリーズで採用されたA8プロセッサが搭載されている。

2018年第一弾になると予想されるものの、発売時期がいつになるかはまだハッキリしないが、Appleは、AmazonとGoogleが繰り広げるスマートスピーカー競争に参戦しない姿勢を見せていることから、2018年になったからすぐにリリースしなければならない、と急かされているわけではないだろう。

となると、他の新製品の発表や発売のタイミングに合わせていく可能性もある。

昨年のAppleの主な新製品発表は、3月末(第五世代iPad発表、iPhone SEの保存容量アップ)、6月のWWDC(iMac/MacBook/MacBook Pro刷新、iPad Proシリーズ刷新)、9月のスペシャルイベント(iPhone/Apple Watch/Apple TV刷新)で、6月に発表済みだったiMac Proを12月中旬に出荷開始している。

HomePodが単独で出荷開始となるなら1月下旬から2月となるだろうが、もし他の製品と同じタイミングになるのであれば、3月後半が検討されることになるのではないだろうか。

●iPhone SEに注目

2017年、AppleはiPhone 10周年を記念し、主力スマートフォンのiPhoneに3モデルを追加した。このうち、2017年11月3日に発売したiPhone Xは、既存のiPhoneからデザインやテクノロジー面で大きな変更が加えられ、次世代に向けたコンセプトモデルと位置づけられた。

現在のラインアップは2015年モデルでA9プロセッサを搭載するiPhone 6sシリーズ、同じくA9を搭載するiPhone SE、2016年モデルでA10 FusionのiPhone 7シリーズ、2017年モデルでA11 Bionicを搭載するiPhone 8シリーズ、iPhone Xとなっている。

iPhone 6sシリーズ、iPhone 7シリーズといった過去のモデルは、発売から2年はラインアップに残される法則ができつつある。よって、2018年9月に新たなiPhoneが発売されたら、iPhone 6sシリーズが姿を消し、iPhone 7シリーズとiPhone 8シリーズが、最新のiPhoneと併売されることになるだろう。

ここで問題となるのがiPhone SEだ。

iPhone SEは2016年3月に、A9プロセッサを搭載する4インチの廉価版iPhoneとして登場した。329ドルからという価格の安さから新興国でのiPhone販売の主力となっているだけでなく、先進国市場でもより小型のiPhoneを求めるユーザーから支持を集めている。割引販売なしでも他のiPhoneより価格が抑えられていることから、日本でも格安SIMとの組み合わせでの展開が幅を利かせている。

iPhone SEが搭載するA9プロセッサは、最新のiOS 11の体験を余すことなく楽しむ上での「最低ライン」に位置している。iOS 11で拡張現実アプリを実現するARKitは、A9以降のプロセッサを搭載するiPhone/iPadで利用できるからだ。最も価格が安く新品として販売されるiPhone SEの性能に合わせて、ARKitはチューニングされた、と見ることもできよう。

Appleが今後、ARKitをより高度なものにし、グラフィックスをふんだんに盛りこんだ新しい体験をアプリ開発者に提案していくなら、現在の最低ラインに位置するiPhone SEの性能を引き上げていかなければならなくなるだろう。2018年にiPhone SEを刷新するなら、プロセッサ性能の向上に取り組むのは間違いない。これに加えて、「iPhone X化」という魅力も盛りこむかもしれない。

2016年3月、iPhone SEの登場で驚いたのは、前年9月に発売したiPhone 6sと同じA9プロセッサを搭載したことだった。廉価版のiPhoneに最新のiPhoneと同じプロセッサや1,200万画素カメラを設定したことは、今振り返ればiOS 11のARKitまでのラインアップ展開を構想していたからだと分かる。しかし当時は、贅沢な仕様だと思わざるを得なかった。そして、途中で記憶容量の増加はあったが、それ以外は発売当初のままの仕様で販売が続けられて、間もなく2年がたとうとしている。

そのことから考えると、2018年にiPhone SEが刷新されるなら、A10 Fusionよりも、A11 Bionicを搭載する方がよいのではないだろうか。A11 Bionicは、4コアの効率コアと2コアのパフォーマンスコアの6コア構成で、低消費電力時の処理性能がA10 Fusionよりも7割向上している。また独自の3コアグラフィックス、機械学習処理、画像処理エンジンなどが搭載され、今後登場する高度なアプリの実行にも対応する。

これまでのように、むこう2年間、2018年モデルの新しいiPhone SEを維持するのであれば、現在のiPhone 8やiPhone Xの併売期間の最後のシーズンになるまでその性能が有効であることが望ましく、A10 FusionよりA11 Bionicを搭載する方が適していると断言できる。

●2018年発売のiPhoneは全てiPhone X的になるか?

そして、もしA11 Bionicを搭載するなら、生体認証をどうするのか、に関心が向く。

iPhone Xではホームボタンを廃止した全画面デザインと「ノッチ」と呼ばれる画面上部の切り欠きにTrueDepthカメラを搭載し、Face IDを実現した。この切り欠き部分をiPhone SEと重ねてみると、小さな4インチボディであっても、問題なく搭載できそうなことが分かる。

つまり、iPhone 5から続く4インチボディをそのままにしても、ホームボタンを排除してディスプレイを拡大させ、TrueDepthカメラを搭載するデザインは実現できそうだ、ということだ。

廉価版のiPhoneに価格の高い有機ELディスプレイは採用することは難しく、その特性を生かしたフチいっぱいまでディスプレイを配置することは期待しにくい。ただ、液晶ディスプレイであっても、外縁を極力小さくしたiPhone SEの実現は不可能ではない。

2017年モデルのiPhone 8シリーズよりも先進的なモデルとなり得るが、前述の通り、2年間継続するモデルとするなら、そしてiPhone全体がiPhone Xのデザイン要素へとシフトしていくのであれば、2017年モデルのiPhoneをiPhone Xに近い仕様へと引き上げることにも納得できる。

その上で、2018年9月のiPhone刷新の際、現在のiPhone Xに加え、大画面化したモデルを投入し、2018年モデルは全て、iPhone Xと同じようにホームボタンなし、Face IDによる生体認証という仕様に変化していくことが期待される。

(続く)

松村太郎(まつむらたろう)1980年生まれ・米国カリフォルニア州バークレー在住のジャーナリスト・著者。慶應義塾大学政策・メディア研究科修士課程修了。慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)、キャスタリア株式会社取締役研究責任者、ビジネス・ブレークスルー大学講師。近著に「LinkedInスタートブック」(日経BP刊)、「スマートフォン新時代」(NTT出版刊)、「ソーシャルラーニング入門」(日経BP刊)など。ウェブサイトはこちら / Twitter @taromatsumura