原油価格がジワジワと上昇している。今後の需給次第では、ガソリン価格も上がるのだろうか(写真:bee/PIXTA)

原油価格が年初から大きく上昇している。代表的な指標であるWTI(ウエスト・テキサス・インターミディエート)原油先物価格は1バレル=60ドルの大台に乗せた。1月11日には一時65ドル手前まで上昇しており、ほぼ3年1カ月ぶりの高値をつけている。

原油価格高止まりの一方、米国は過去最高の供給へ

昨年後半に上昇基調に転じてから弱気から急に強気に転じた市場関係者が少なくないのだが、それでも「60ドルを超えて、さらに上昇する」と考えていた向きは、世界的に見ても少数派である。

無論、筆者が少数派であることは言うまでもない。昨年の今頃は「40ドル割れ」や「20ドル台にまで下げる」といった見方まであったことは記憶に新しいところだ。しかし、残念ながら、結論から言えば、こうした見通しを示した向きは、コモディティや原油のことをほとんどわかっていなかったわけである。

つまり、コモディティ価格や原油価格を形成する本質的な材料である「ファンダメンタルズ」、つまり需給動向に関して、正しい判断ができなかったわけだ。いうまでもなく、今回の上昇局面は、相場として買われたのではなく、ファンダメンタルズが反映されている。一時的なポジション需給やテクニカル主体で判断していては、今回の上昇局面を理解することは難しい。やはり根本的な判断材料であるファンダメンタルズをよく見ておくことが肝要である。

いまの原油市場は、OPEC(石油輸出国機構)主導の減産の取り組みが効いてきている。しかし、一方で米エネルギー省(EIA)は最新の月報で、「米国内の産油量が日量1000万バレルの大台を2月にも突破し、従来予想よりも数カ月早く過去最高水準に達する」との見通しを発表している。

これまで生産量が日量1000万バレルを上回るのは今年第4四半期と見込まれていたが、大幅な前倒しとなる。月間ベースの従来の最高は1970年11月に記録した1004万バレルだが、それ以降は米国の輸入原油依存が強まって、生産は減少基調が続いていた。

「供給が需要を上回る」と読む、EIA予想は正しいのか?

さらに、ここ数年は「シェール革命」によって状況は変わりつつあったが、想定以上に生産が増えている。また、EIAは米国での2018年全体の生産の伸びの予想も、日量78万バレルから同97万バレルへと大きく上方修正している。さらに「2019年も増産が続き、同年末には生産量が1100万バレルを突破する」としている。一方で、今年の米国の需要の伸びを日量41万バレルから47万バレルの予想に引き上げ、2019年の需要はさらに34万バレル増えると見込んでいる。

EIAの予想をもとにすれば、「需給バランスからみれば、供給が需要を上回るため、原油在庫が増えるか、輸出を拡大させてバランスを取るしかない」ということになる。そうなると、OPECなどによる減産の効果は薄れるため、世界的に石油需要が拡大しない限り、在庫調整が進まないという話になる。こうなると、「やはりシェールオイルが原油価格の上値を抑える」といった弱気な見方が再び強まるということになりそうだ。

しかし、シェールオイルの生産はそれほど極端には増えないだろう。「生産コストは徐々に下がっている」との話もあるがようだが、筆者はこうした予想ほど増えるとは考えていない。

いずれにしても、重要なのは、将来の販売価格を決める「売りヘッジ」ができるかどうか次第だということだ。現時点では、2020年以降は売りヘッジが55ドル以上ではできない状況だ。つまり、将来の原油の販売価格が下がっても収益を確保するための先物市場での売りヘッジを行っても、いまは55ドル以下でしかできないため、生産を積極的に行うとの予算が組めないということである。

このように、いまはかなりの逆ザヤになっており、生産者泣かせの先物市場のカーブの形状になっている。こうなると、原油価格が高止まりする中、毎月の販売で高く売れることを祈るしかない。無論、生産を増やし過ぎて価格が急落すれば、採算割れとなり、生産は継続できなくなる。

ひとことで現状を語れば、シェールオイルの生産者には、非常に難しい判断が求められるというわけである。つまり、むやみやたらに生産はできないということになり、増産にも慎重にならざるを得ない。いずれにしても、このような状況では、原油価格はいったん上昇できるところまで上昇し、その後シェールオイルの増産が進んで、下落に向かうと考えるのが妥当であろう。

一方、米国内の石油需給に関しても、いまいちど理解しておく必要がある。実は、米国内の需給が原油高を支えている可能性があるからである。

どういうことか。EIAが発表した1月5日までの週の米国内の原油在庫は前週比490万バレル減と8週連続で減少した。一方、石油製品在庫はガソリンが410万バレル増、ディスティレート(留出油)が430万バレル増といずれも大幅増となり、統計全体では強弱まちまちの内容だった。

米国内の原油在庫の減少ペースはかなり早い

しかし、寒波の影響で米国内の原油生産が日量94万バレルと、前週比29万バレル減少している。このように、現状はやや複雑な内容ではあるが、ここで注目したいのは、原油在庫の減少ペースが相当早いということである。直近では4億1951万バレルであり、2017年の同時期は4億7901万バレル、2016年では4億5095万バレルであり、これらを下回っているのである。

さらに注目すべきは、石油製品在庫の需要に対する在庫日数である。最近はガソリンやディスティレートなどの製品在庫が増えているため、需要が弱いと思われているようだが、これは大きな間違いだ。米国内の石油需要は2008年の金融危機以降で2008年に次いで高い水準にある。また、現在の在庫日数は約18.4日分で、これも2008年と2009年に次いで2番目に少ない水準となっている。このように、実態を見ると、米国内の石油需給はかなり引き締まっていることが理解できる。しかし、市場関係者の多くはシェールオイルの増産ばかりに目を向けており、明らかに視野が狭いといえる。

OPECの減産を米国のシェールオイルの増産が相殺するとの見方が多いが、それは一見正しいかもしれない。しかし、それ以上に需要が増えれば「問題がない」わけである。現在の世界経済の好調さを考慮すれば、2018年も日量160万バレル程度の需要増が見込まれるだろう。

そうなれば、むしろ相当量の増産をしないと需給バランスが合わないことになる。その結果、OPEC加盟国・非加盟国による減産が効いてきて、原油価格は徐々に下値を切り上げるだろう。筆者が考えるWTI原油のフェアバリューは65ドルから75ドルであることは、本欄で何度も示してきた通りである。また、年末までに最大で79ドルまでの上昇を見込んでいるが、ファンダメンタルズが現状のまま推移すれば、到達は十分に可能であると考えている。