自分らしさを出せず、エースのFW小川航基(ジュビロ磐田)が負傷離脱した穴を埋められなかった昨年5月のU-20ワールドカップから8ヵ月、あれから随分と変わった。

 醸し出す雰囲気も、表情も、プレースタイルも、発する言葉も――。


何本もシュートを放って存在感を示した田川亨介

 U-23アジア選手権に備えたU-21日本代表(森保ジャパン)の大阪・堺合宿で、FW田川亨介(たがわ・きょうすけ/サガン鳥栖)はきっぱりと言った。

「結果を残したからここに呼ばれたと思っているので、得点という結果だけにこだわってやりたいし、そこへの責任を感じています。今は、このチームを自分が引っ張っていくつもりでいます」

 それから8日後、田川が国際舞台のピッチで見せたのは、まぎれもなく宣言したような力強いプレーだった。

 中国で開催されているU-23アジア選手権、タイとのグループステージ第2戦。5バックで守りを固めてきたタイに対し、チーム最多となる6本のシュートを見舞い存在感を放ったのは、初先発となる1トップの田川だった。

 13分にはスルーパスを引き出して利き足の左足で、14分には相手からボールを奪って左足で、30分にはシュート性のボールを足もとに収めて右足を振り抜いた。

 圧巻だったのは、ゴールレスドローの可能性が高まっていたゲーム終盤だ。

 82分には浮き球パスを受けて左足で、86分にはマルセイユルーレットで相手DFを翻弄して左足で、88分にはスピードに乗ったドリブルから左足で、立て続けに3本のシュートを放った。いずれもサイドネットや相手GKに阻まれてしまったが、日本はタイゴールに確実に近づいていた。

 決勝ゴールを演出したのも、ゴールへの意欲をみなぎらせていた、この左利きのストライカーだった。

 90分、MF井上潮音(いのうえ・しおん/東京ヴェルディ)が右サイドからクロスを入れると、ファーサイドで待っていた田川が頭で落とし、DF板倉滉(いたくら・こう/ベガルタ仙台)が右足で合わせてゴールネットを揺らす。

「あそこにボールが来るのかな、と予測して走っていたら本当に来て、滉くんがあそこにいた。角度的に落とすしかなかったので、確実に落とせてよかった。いい仕事ができたのかなと思います」

 これが決勝点となり、日本が1-0でタイに勝利。1試合を残してノックアウトステージ進出を確定させた。

 自らゴールを奪ったわけではないため、「ゴールができなかったのがすごく悔しい」と、田川は無念そうな表情をのぞかせた。だが「チームを引っ張る」「ゴールにこだわる」という想いは、そのプレーから確かに伝わってきた。

 若い選手、とりわけストライカーは、経験に裏打ちされた自信を膨らませることで大きく化けることがある。

 昨年5月、U-20ワールドカップに出場したとき、田川はJ1のピッチに6試合しか立っていなかった。そのすべてが途中出場によるものだった。

 3月5日の川崎フロンターレ戦でプロデビューを飾り、4月8日のアルビレックス新潟戦でプロ初ゴールを決めた。その勢いを買われて抜擢された、ワールドカップのメンバーだった。

 川崎F戦のあと「めちゃ楽しかった」と初々しい笑顔をのぞかせ、「今年、5点が目標です」と無邪気に語った高卒ルーキーはそのころ、いい意味で、怖いもの知らずだった。

 しかし一方で、世界の舞台で臆(おく)せず自分のプレーを出すために必要なもの――経験に裏打ちされた自信が、田川にはまだなかった。

「ワールドカップのときは縮こまってやっていましたね。慣れない環境で、自分を出せないところがあったし、上の(年齢の)人たちに任せている部分もあった」

 だが、失意のワールドカップから帰国すると、それまで1試合もなかった先発出場の機会が少しずつ増えていく。ピッチに立つ時間が長くなるにつれ、平常心で試合に臨めるようになり、それが武器であるドリブル突破を仕掛ける勇気を生んだ。

 膨らみつつある自信がさらに大きくなったのが9月23日、埼玉スタジアムでの浦和レッズ戦である。開始早々に相手DFの背後に走り込み、ワンバウンドした落ち際をボレーで叩くと、後半にも相手のクリアミスをかすめ取り、ループシュートを決めたのだ。真っ赤に染まるホームゴール裏のサポーターに戦慄を走らせる2ゴール――。

「あの2点は本当に自信につながるゴールだったし、あれがキッカケで心に余裕が生まれましたね」

 11月にはモンゴルで開催されたU-19アジア選手権予選に臨んでいる。FW久保建英(FC東京)の次に若かったU-20ワールドカップとは異なり、年長者として臨んだこの大会ではエースとして、チームを牽引する役回りを担った。

 なかでも見せ場となったのが、グループ最大の難敵であるU-18タイ代表戦だ。守りを固めるタイのゴールを二度もこじ開け、チームを2-1の勝利へと導いた。

 そのときの経験が、U-23アジア選手権で生きた。

「モンゴルでもタイは守ってきたので、今日も難しい試合になると思っていました。でも、最後まで粘り強くみんなで戦えて、ああいうゴールが生まれたのはよかった」

 プロデビューを飾ったころ、田川の目標とする選手は、ガレス・ベイル(レアル・マドリード)だった。

「あんなドリブルができたら、マジ最高。もっとスピードつけたいと思っていて。足には自信があるんですよ」

 しかし今、田川が参考にしているのは、大迫勇也(ケルン)、ロベルト・レバンドフスキ(バイエルン)、オリヴィエ・ジルー(アーセナル)といったポストプレーの名手たちだ。

「今、求められるのが、ポストプレーやゴール前での動きなので、そういう選手のプレーを見ながらイメージを作るようにしています」

 憧れの対象の変化は、ストライカーとしての意識の変化にほかならない。

 身長181cmを誇るが、ストロングポイントはスピードに乗ったドリブルで、前線で身体を張ったポストプレーは得意ではない。だが今は、ストライカーとしての幅を広げるため、弱点克服に余念がない。

「チーム(鳥栖)ではビクトル(・イバルボ)と一緒に試合に出ているんですけど、彼の強さやキープ力は、本当にお手本になる。練習や試合で見ていて、それを自分のなかに落とし込もうと考えていて。(ポストプレーは)チームでも課題だと言われているので、(U-21日本代表で)1トップでプレーするのはいい機会。自分の持ち味にできるチャンスなので、積極的にトライしようと思っています」

 ポストプレーに磨きがかかれば、ボールは自然と田川のもとに集まってくるだろう。

「次こそ、決めたいですね」

 国際大会におけるゴールは、膨らみつつある自信をさらに大きなものにするはずだ。

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