インスタグラムやそこらで活躍するインフルエンサーは、2018年のファッションや高級ブランドのマーケティング戦略においても、その存在感を増すばかりだ。とはいえまだ、ブランドには不満点も残されている。たとえば、コンバージョンやエンゲージメントの価値など、インフルエンサー関連のキャンペーンやスポンサード投稿の結果の把握だ。だが、データツールがより進化し、プラットフォームがブランドやインフルエンサーに向けて、より詳細な分析を提供できるようになったいま、ブランド戦略は成熟しつつあるといえるだろう。ブランドにとってありがたいことに、このように舞台の準備が整っていくことで、ブランド各社にとってより優位な状況が生まれつつある。これまでのように、単純に多数のフォロワーを持つインフルエンサーのインスタグラムの投稿のために、ブランドが数千万円を投じるようなことはなくなりつつある。米デジタル調査会社L2で情報部門のディレクターを務めるマイク・フロガット氏は、「インフルエンサーのマーケティングが成熟することでより測定がしやすくなった。いままでブランド各社はフォロワー数の多いインフルエンサーのリストから良さそうなアカウントを選び、実際に投資したうえでどのインフルエンサーとのパートナー関係が上手くいくかを試していた。それがいまでは、より多くのデータを活用することで、どのインフルエンサーが自分たちに合っていて、実際にどのようなメリットがあるのか見出しやすくなっている」と語る。ブランドがインフルエンサー市場に資金を投じ続けるなかで(L2社の調査によると、インフルエンサー市場は2019年までに20億ドル[約2200億円]超の規模となる見込みだ)、ブランドがこれまでの不均衡な力関係を是正していくことが考えられる。そして、インスタグラムやSnapchatをはじめとするプラットフォームからも、収益を上げられるようなツールが開発されるだろう。さらに、ブランドはソーシャルメディア上のインフルエンサー名簿(登録されたグループ)を活用するようになるかもしれない。ブランドがこのようなインフルエンサーグループを用いることで、いまの不透明感がつきまとうインフルエンサーマーケティングと比べて、より透明かつ明確な目標達成が実現できるようになる。

名簿は影響力のある 「聖杯」

いままで、ブランド各社はインフルエンサーとの大した影響もない一度きりのパートナー契約に多額を投じてしまうことがあった。そんななか、ブランドが本当に求めているのは、インフルエンサーが集まった強固なグループだ。マイクロインフルエンサーにせよスーパーモデルクラスにせよ、長期キャンペーンやイベントの宣伝、スポンサード投稿に繰り返し協力してくれるような、予算に応じたインフルエンサーのグループをブランドは求めている。こうしたグループが名簿や登記簿のように、はっきりとした形をとればとるほど、ブランドにとってはありがたい。フロガット氏は、「ブランドとさらに密な関係を築く安定したインフルエンサーとの協力関係こそが、ブランドが追い求めて止まないものだ」とし、「一度きりではない長期間のパートナー関係は、全員にとってメリットがある」と語る。フロガット氏は、顕著なインフルエンサーのグループにビクトリアズ・シークレット(Victoria's Secret)のエンジェルズと呼ばれるモデルたちを挙げる一方で、小規模ブランドにとっても同様の手法は有効だと指摘する。マイクロインフルエンサーのシンディー・ユー氏は、スポーツ用品アパレルのアララ(ALALA)のアカウントに登場したり、同社製品を身にまとった自身の写真を投稿したりといった形で同社の仕事を頻繁にこなしている。「ニューヨークを拠点とするインフルエンサーと多くの仕事をこなしている。これは当社が人々との繋がりを築くためにもっとも活用している手段だ。一人ひとりが交流を深め、お互いをよりよく知るための参加型イベントに招待するなど、没入感のある体験型イベントを多数実施している」と、女性向け高級スポーツウェアブランドであるアララの創設者であるダニーゼ・リー氏は語る。「商品のリクエストをたくさん寄せてもらうとともに、ブランドの顔として目立たせることもできる。こうした関係を築き上げるのに多くの時間を割いている」。

Tonight’s plans? Alala and chill ✌? @milkcyndii #alalaallday

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この戦略には、ブランドの長期的な視点と、自分たちのチームに引き入れるインフルエンサーを吟味する慎重さが求められる。だが、インフルエンサーがブランドにとってふさわしいことを確認するのに時間を費やせば、それだけエンゲージメントや売り上げも伸びていく。つまり、ブランドはインスタグラムの投稿ひとつに多額の投資を行う代わりに、このようにインフルエンサーとの関係性により多くの投資をするようになっていくことが予想される。ブランドにインフルエンサーの情報を提供するプラットフォーム、ハイパーブランズ(HyprBrands)でCEOを務めるギル・イヤル氏は、「支出全体で見れば大きくなるかもしれないが、個別の支出額は下がるだろう」とし、次のように述べた。「オーディエンスが見たいのは、インフルエンサーが本当に気に入って、長いあいだ使うような商品だ。だから、自社向けにインフルエンサーのグループを確保し、何度もそのグループ内のインフルエンサーを活用するブランドが勝ち残っていくだろう。特にマイクロインフルエンサーは非常に数も多い。毎回ゼロからはじめるのではなく、長く続いている関係性があったほうが効果的だ」。

ブランドは投資前に明確な予想を設定している

ブランドが最初にインフルエンサーとのパートナー関係から望むものをはっきりさせ、実際に測定を行うことで、インフルエンサーのキャンペーンや投稿の成功をより明確に測定可能な形で確認することはできる。「インフルエンサーのフォロワー数を盲目的に追い求める時期は終わった。ブランド各社は、どのようなリターンが得られるかに注目している」と、分析するイヤル氏は次のように語った。「いいね!やシェアの数に基づく投資から、1クリックあたりのコストやコンバージョンに基づく投資に移りつつある」。イヤル氏によるとAmazonは、インフルエンサーへの前払いではなく、インフルエンサーのアフィリエイトのリンクが一定の購入数に結びついた時点で報酬が支払われる手法を試みているという。同様の手法を採用する大手ブランドは増えるだろうと、イヤル氏は予想している。小規模なブランドは、たとえ売り上げに結びつかないとしても、インフルエンサーとともに知名度を上げることに価値を見出し、管理している。オンライン宝石小売店ストーンアンドストランド(Stone & Strand)のCEO、ナディア・マッカーシー・カヘイン氏は、インスタグラムのインフルエンサー2人とパートナー関係を結んだことで知名度は向上したが、売り上げには結びつかなかったと語る。多くの役員レベルへの予算説明が求められるような大手ブランドにとっては難しいが、小規模なブランドはより迅速なコラボレーションを行うことで利益を享受している。「反響を集めてみたところ、その点では非常に成功したといえることがわかった。当社の目的は知名度を上げることであり、フォロワーからのフィードバックを得ることだった。売り上げの観点では大成功とはいえないが」と、マッカーシー・カヘイン氏。インフルエンサーから見ても、ブランドの目的がわかることでパートナー関係を結ぶのに最適なブランドを探しやすくなる。「特にマイクロインフルエンサーにとって、適切なパートナーを選び出すことがすべてといってもいい」と指摘するフロガット氏は、次のように分析する。「さらに長所として、マイクロインフルエンサーを知るオーディエンスから実際に生の声を得られる点が挙げられる。つまりパートナー関係がうまくいっていない場合もすぐにそれが分かるということだ。それに、ブランドのマーケターが顔をつきあわせて次の流行は何かを話し合うよりも、オーディエンスの動向について、はるかに良く把握できる立場にある」。

プラットフォームの参画

インフルエンサーマーケティングへの投資が拡大を続けるなか、インスタグラムやYouTube、Snapchatといったプラットフォームがインフルエンサーとブランドのパートナー関係に参加し、自身も収益を上げることを狙っている。フロガット氏は、「プラットフォームはただの中立な存在ではなく、イノベーションやそれに伴う収益化を目指していることに注意すべきだ。今後、プラットフォームはインフルエンサーマーケティングにおいても戦略的に展開していくだろう」と予想する。2017年からインスタグラムは、スポンサード投稿についての取り組みを行っている。ブランドやインフルエンサーに向けてスポンサード投稿にジオタグを表示するオプションを設けたのだ。このジオタグは単なる情報公開のための仕組みではない。スポンサードされた投稿であることを示すこのタグから、ブランドやインフルエンサーは、エンゲージメントやクリックスルー率のデータにアクセスできる。インフルエンサーマーケティングにおける最善のデータ管理方法を模索しているブランドにとって、これは価値のある仕組みだ。だが、これは同時に、ブランドにとってのインフルエンサーマーケティングのコストがさらに上昇する可能性も示している。インフルエンサーマーケティング企業メディアキックス(Mediakix)CEOのエバン・アサノ氏は次のように述べた。「インフルエンサーマーケティングは大きく成長したが、ブランド各社がまだこれ以上ないほどの情熱を傾けているというわけではない。これからはさらにクリエイティブなやり方でさらに多額の投資を行うだろう」。Hilary Milnes(原文 / 訳:SI Japan)