<ソニー・オープン・イン・ハワイ 最終日◇14日◇ワイアラエCC(7,044ヤード・パー70)>
今週の米ゴルフ界は目まぐるしかった。昨年はジャスティン・トーマス(米国)が完全優勝した「ソニー・オープン・イン・ハワイ」だが、1年後の今年、トーマスの相棒キャディのジミー・ジョンソンは足を痛めてバッグを担げず、臨時キャディで戦いに臨むことになるなんて、一体、誰が予想できただろうか。
【関連】マキロイが心臓疾患を告白
しかも、臨時キャディになったのは、フィル・ミケルソン(米国)の長年の相棒で現在はTVレポーターに転身しているジム・“ボーンズ”・マッケイだった。トーマスとボーンズがタッグを組むなんて、本人たちも想像すらしていなかったことだ。
ソニー・オープンには出場していなかったが、ローリー・マキロイ(北アイルランド)は1年半ほど前のウイルス感染が原因で心臓に悪影響が出ていることを医師から告げられたと告白。2012年と2014年、世界ナンバー1に輝いたマキロイは、生涯グランドスラムに王手をかけ、“我が世の春”を謳歌しているかに見えるが、用具選びに必死になりすぎた末に昨年は肋骨を疲労骨折し、今度は心臓の異常。予期せぬ出来事が次々に起こりつつある。
そして、ソニー・オープン3日目の朝には、起こるべからずことが起こった。北朝鮮からのミサイル発射警報が誤って鳴ってしまった午前8時、選手たちの大半は宿舎にいた。
首位で第3ラウンドに臨もうとしていたジョン・ピーターソン(米国)は、ホテルの部屋のバスタブに妻と幼い息子と3人で隠れ、ベッドのマットレスで蓋をして身を潜めたそうだ。
ブレイン・バーバー(米国)という選手は自身のキャディが前夜にレストランで転倒し、頭を強打して救急搬送された。意識不明という連絡を受け、3日目の朝、大慌てで病院へ。相棒が運び込まれているICU(集中治療室)を探していたところでミサイル発射の警報を聞いた。「あの朝、あの日は、僕の人生で最も大変な日だった」。
テキサス出身のトム・ホージ(米国)は母校TCU(テキサス・クリスチャン大学)のバスケットボールの試合を観戦中に警報を聞いた。「これが僕のラストデー(最後の日)だ」。一度は、そう覚悟したという。
警報が誤報と判明して、どれほど安堵したことか。一度は人生の「ラストデー」を覚悟したホージは、その覚悟を今度は試合のラストデー(最終日)に活かす覚悟で挑んだ。
2015年に米ツアーデビュー。下部ツアーとの間を行ったり来たりしてきたホージは28歳。昨季の下部ツアー・ファイナルズ最後の12ホールで7バーディーを奪うラストチャージで上位50位の47位に食い込み、今季の米ツアー出場資格を手に入れた。
これまで米ツアーの大会で初日や2日目に首位に立った経験は何度かあった。2015年の「ウィンダム選手権」ではタイガー・ウッズ(米国)と首位に並んで3日目を迎えた。しかし、ホージはいつも3日目、あるいは最終日に持ちこたえることができず、過去75試合で未勝利。
今大会では初の最終日最終組を迎え、途中で首位の座を奪われながらも執拗に食い下がり、首位を奪還。しかし、16番のダブルボギーで後退し、優勝には1打及ばなかった。
勝利の行方はパットン・キジーアとジェームス・ハーン(ともに米国)のサドンデス・プレーオフへ。最終日に8打伸ばしたハーンの猛チャージ、虎視眈々と勝利を狙ったキジーアの冷静沈着なプレーぶり。ラストデーにおける2人の対照的なゴルフはどちらも見事だった。大会史上最長のプレーオフとなり、6ホール目でキジーアが勝利し、ハーンが敗北したことは紙一重の差だった。
何が起こってもおかしくないのがゴルフと言われるが、それはむしろゴルフそのものより、ゴルファー自身やその周辺で何かが起こることのほうが多い。予期せぬ出来事に遭遇し、喜んだり、悲しんだり、動揺したり。そのとき、自分の精神面をいかにコントロールし、いかにゴルフに集中していくか。その能力、そのメンタリティが最終的にはゴルフそのものの土壇場で発揮されるのだと思う。
2015年の「ノーザントラスト・オープン」で挙げたハーンの初優勝。今季「OHLクラシック at マヤコバ」で挙げたキジーアの初優勝。どちらも、その手前には山ほどの苦労話と予期せぬ出来事と喜怒哀楽と動揺があった。
今回はキジーアが勝利。次こそは、ホージの番がやってくる。
文/舩越園子(在米ゴルフジャーナリスト)
<ゴルフ情報ALBA.Net>

ソニー・オープン・イン・ハワイ 最終結果
パットン・キジーアのプロフィール
ミサイル警報に海軍も動いた!?  J・スピースは「車があれば逃げたかも」
R・ファウラーとの「スペシャルバトル」を勝ち抜いた「新スター」【舩越園子コラム】
P・ミケルソンが25年間連れ添った相棒と決別「互いに良いタイミングだった」