昨年3月、ドイツの展示会で「コネクテッドインダストリーズ」の戦略を発表する安倍首相

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 IoT(モノのインターネット)や人工知能(AI)など、デジタル技術が新たな価値を生み出そうとしている。政府は国内のこうした動きを全面的に支援する戦略「コネクテッドインダストリーズ」を打ち出した。ロボット、自動走行、ヘルスケアなど次世代ビジネスへの期待が高まるとともに、国を支えてきたモノづくりも大きく変わりそうだ。この新戦略で主導的立場をとる経済産業省にとっては、力の見せどころとなる具体的な取り組みや課題、識者などのインタビューで分かりやすく解説する。

ドイツとの違い
 「企業と企業、機械と機械、人と人などがデータを介して“つながる”世界」-。世耕弘成経産相は、コネクテッドインダストリーズが描く産業の将来像をこう説明する。近年、IoT技術の進展などに伴い、さまざまな製品・サービスが遠隔地でも相互連携し、情報をやりとりできるようになっている。この「第4次産業革命」と呼ばれる変革を踏まえ、日本が打ち出した戦略がコネクテッドインダストリーズだ。

 新戦略には、国として産業の新たな潮流を主導しようという強い意志が込められている。「ドイツのシーメンスは、生産、在庫、販売といったモノづくり全体のIT化を横軸で押さえていっている。そして(同じくドイツの)SAPは、サプライチェーン(供給連鎖)における企業間連結を押さえていっている。まさに縦と横からドイツ企業がしっかり押さえようとしているのが実情だ」と世耕経産相は現状への危機感を示す。製造業のデジタル化で先行するドイツに対し、日本が下請け的な立場になるのではと危惧する声は、産業界でも多い。

日本の強みは製造現場のデータ
 その上で、日本は何を強みに一大変革に向き合うべきか-。コネクテッドインダストリーズの基本概念は、そんな試行錯誤の中から生まれた。「日本には、製造現場の極めて正確なデータがたくさん蓄積をされている。それはドイツにはまだない。ドイツと対等に渡り合える部分が、ここにある」と世耕経産相は日本の“勝ち筋”を指摘する。コネクテッドインダストリーズで「データ」が重要要素とされているのは、このためだ。

 2017年3月、政府はドイツで開かれた国際情報通信技術見本市「CeBIT(セビット)2017」で、コネクテッド・インダストリーズを発表した。安倍晋三首相はアンゲラ・メルケル首相との首脳会談で、「日本の産業の未来を示す新たなビジョン」としてこの新戦略を紹介。自国製造業を次世代化するため「インダストリー4・0(I4・0)」を推進するドイツ政府に対し、日本なりの構想を示した格好だ。

 CeBIT2017には世耕経産相も参加。ブリギッテ・ツィプリース独経済エネルギー相と共同声明「ハノーバー宣言」を発し、コネクテッド・インダストリーズとI4・0が積極的に連携していくことを確認した。「良い相互補完関係ができることが分かった」(世耕経産相)という。製造現場のデータという強みを維持しつつ、ドイツが得意な国際標準化などではうまく力を借り、産業の変革をリードしたい考えだ。

活用のルールづくりカギに
 新たな構想の実現に向け、経産省はデータ活用を促すための環境作りを急ぐ。一例が、活用をめぐるルールの整備だ。どこからを個社のデータとし、どこまでを共有するかは線引きが難しいところ。場合によっては、企業間の紛争に発展しかねない。

 このため、まずは「データの利用権限」の概念の普及に努める。また、データの扱いに関する契約が企業間で適正に結ばれるよう、ガイドラインも作成・公開した。

 このほかデータの記述様式が統一されていないなど、課題は少なくない。企業と企業、機械と機械などあらゆる要素を円滑につなげるため、国のリーダーシップが求められている。