村田製作所会長兼社長・村田恒夫氏

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 ―スマートフォンの高機能化が進展し、使用部品が増えています。
 「特に(複数の送受信アンテナを使って性能を高める)MIMO(マイモ)技術の導入などで回路構成が複雑化し、当社の高周波モジュールの採用が増えている。第5世代移動通信システム(5G)対応として、表面弾性波フィルターやLCフィルター、パワーアンプなどが多く使われる。またIoT(モノのインターネット)市場の拡大により、デジタルデータを価値ある情報に変換する流れが強まり、センサーや通信モジュールの需要が拡大している」

 ―2017年はスマホ向け樹脂多層基板「メトロサーク」の生産が遅れ、減益要因となりました。
 「(スマホメーカーからの)性能要求が高度になっている。生産性を高めるため、材料シートを大型化したが、それが技術的にチャレンジングだった。(生産設備を)うまく使いこなすまでに時間がかかった。現在、歩留まり率は90%半ばまで改善した。メトロサークの売上高を現在の数百億円程度から、3―5年後に1000億円へ引き上げていく」

 ―車載向けの戦略は。
 「先進運転支援システムへの対応に伴い、汎用部品の需給が逼迫(ひっぱく)している。積層セラミックコンデンサー(MLCC)やインダクターの生産拡大に力を入れる。横滑り防止装置(ESC)用の微小電気機械システム(MEMS)センサーなど、各種センサー類も拡大したい。指月電機製作所との共同出資会社では高耐熱のフィルムコンデンサーを量産し、炭化ケイ素(SiC)パワー半導体の高温動作に対応する」

 ―電池事業は2―3年後をめどに、営業損益の黒字転換を目指しています。
 「スマホ向けと産業向けの市場拡大にうまく乗るため、生産能力を増強する。まずスマホ向けでは、中国工場(江蘇省無錫市)の新棟を18年中に稼働させる。産業向けも、シンガポール工場に生産ラインを増設する予定だ。21年3月期に売上高2000億円を目指す」

 ―電気自動車(EV)向け次世代電池として「全固体電池」を実用化する機運が高まっています。19年の製品化を目指していますが、狙う分野や戦略は。
 「(競合他社より)エネルギー密度が大きいものになるだろう。IoT製品向けではなく、ヘッド・マウント・ディスプレー(HMD)や腕時計型デバイスなどのウエアラブル端末市場を狙い、他社と差別化する。当社の全固体電池は車載向けではない。本格的なEV化が来る前に、車載向けではさまざまな特性の電池が要求される。既存のリチウムイオン二次電池で参入のチャンスがある。車載向け電池は中長期的に進めていく」
(聞き手=園尾雅之)