エヌビディアのファンCEOはチップボードを片手に、米ウーバーなどとの協業を相次ぎ発表

写真拡大

 自動車産業に電機やIT、半導体など製造業がこぞって触手を伸ばしている。自動運転車や「MaaS」と呼ばれる移動サービスをめぐって100年に一度の大変革期に入った“クルマ”は、異業種から見れば事業を大きく伸ばせるフロンティア。米国で開催されたの家電・IT見本市「CES」は、“クルマ”の進化を担うキープレーヤーが変化したことを強烈に印象づけている。

 「将来の車のソフトウエアは信じられないほど複雑になる。人工知能(AI)が車の未来を変える」。米半導体大手エヌビディアのジェンスン・ファン最高経営責任者(CEO)はCES開幕に先駆けた7日夜、約2時間にわたり事業説明会を開催。多くを車関連の説明に充てた。

 パソコン用の画像処理半導体(GPU)で一躍名を上げた同社だが、現在は自動運転向けの半導体チップやそれを用いた「AIプラットフォーム」で大きく成長。トヨタ自動車なども実験車両に同社の半導体を採用する。

 CESでは自動運転用プロセッサーの新製品「エグゼビア」の供給を2018年1―3月に始めることを発表。同製品は90億以上のトランジスタを搭載し、30ワットの消費電力で毎秒30兆回の演算ができる。今や同社の車関連のプラットフォームを使う企業は320社以上に達し、米インテルや米クアルコムなど強豪ひしめく半導体業界でひときわ強い存在感を放っている。

 電機メーカーの攻勢も激しい。消費者向け家電から企業向け(BツーB)に事業の軸足を移しつつあるパナソニックは、成長戦略の中核に車載関連を据える。かつてCESは家電各社がテレビなどの新商品を発表する場だったが、今年のパナソニックブースからは家電関連の展示が姿を消した。

 代わりに大きなスペースを占めたのが車関連だ。強みとする車載用電池に加え、電気自動車(EV)向けに充電器やインバーター、直流(DC)/DCコンバーターなどを一つに集約したモジュールを開発。上原宏敏執行役員は「従来の車メーカーとは異なる企業が出てくる可能性がある。当社も(ティア1の)車部品メーカーを目指す」という。

 テレビなど消費者向け(BツーC)事業を引き続き重視するソニーですら、今年のCESでは車載用イメージセンサーを大々的に展示している。平井一夫社長は自社ブースでの発表会に登壇し、トヨタや日産自動車、韓国・現代自動車など、車載イメージセンサーの協業先拡大を発表した。

 車の付加価値がハードからソフトに移る時、現在の車メーカーはどこで稼ぐのか―。米グーグルなどIT大手は自動運転車の開発を加速している。

 さらには「モビリティー」の動かす部分では音声認識AI「アレクサ」で米アマゾンのプラットフォーマー化が急速に進む。クルマ産業は自動運転車の開発を機に、従来の完成車メーカーを頂点とするピラミッド構造が崩れ、“水平分業”への道をたどっている。

 完全自動運転が実現すれば、車はその姿や形さえも大きく変わり今までにない使い方が生まれるだろう。車各社は移動に関するサービス「MaaS」企業を志向し始めている。

 CESで基調講演に登壇した米フォードのジム・ハケットCEOは「都市の道を変えれば世界が変わる」と語り、地図や無人車両の配送サービスなどを総合するプラットフォーム「TMC(交通移動クラウド)」構想を打ち出した。

 車単体から移動サービス全般を担う企業への脱皮を目指す。CESで初めて発表会に登壇したトヨタの豊田章男社長も「モビリティーサービスのプラットフォームを担う会社になりたい」と新たな領域での成長に決意を示した。

(文=杉本要)