通勤や通学で使うことの多い鉄道。災害など避けられない運行トラブルもあるが、鉄道事業者自身に起因するものも多い(写真:Kamaer/PIXTA)

列車が止まる運行トラブルの原因はいろいろある。豪雨や地震といった自然災害、線路立ち入りや自殺といったものは、鉄道事業者の努力だけで100%防ぐのは無理だ。しかし、係員の取り扱いミスや車両・設備の故障といった「部内原因」は、発生ゼロを目指して、すべての鉄道事業者が努力を惜しまない。にもかかわらず運行トラブルは起きる。

昨年12月25日付記事「JR6社、車両故障やミスが最も多いのはどこか」では、JR旅客6社が公表している安全報告書に基づき、JR自体に起因する部内原因がもたらした輸送障害の発生状況について分析を行った。輸送障害とは、旅客列車が運休または30分以上遅延した事態を指す(旅客列車以外の場合は1時間以上)。今回は国土交通省が毎年公表する「鉄軌道輸送の安全に関わる情報」に基づき、2016年度の部内原因がもたらした輸送障害について、全国の鉄道事業者の状況をランキング形式で並べてみた。

対象はJR、大手私鉄、中小私鉄、第三セクター鉄道、公営の地下鉄、モノレール、新交通など。JRは国交省の発表形式に従い、在来線と新幹線を区別して記載した。また、貨物鉄道および鉄道事業の主要業務が路面電車、ケーブルカー、トロリーバスである事業者は除いた。

輸送障害件数ワースト1〜6位はJRに


輸送障害件数の上位は1位JR東日本(東日本旅客鉄道)、2位JR北海道(北海道旅客鉄道)、3位JR西日本(西日本旅客鉄道)、4位JR九州(九州旅客鉄道)、5位JR東海(東海旅客鉄道)、6位JR四国(四国旅客鉄道)と、1〜6位をJR勢が占めた。いずれも在来線だ。JRは営業距離、列車運行本数ともにほかの鉄道事業者を凌駕する規模なので、この結果は当然ともいえる。

12月25日付記事でも触れたとおり、各社の営業距離や列車運行本数が違う中で件数の多寡を直接比較するのには難がある。JRと地方の中小私鉄を比較するのであればなおさらだ。

そこで、各事業者の年間の列車走行距離の合計である列車走行キロで輸送障害件数を除して、列車走行100万キロ当たりの部内原因による輸送障害件数を算出してみた。


結果は多い順に1位銚子電気鉄道、2位福井鉄道、3位大井川鐵道、4位小湊鐵道、5位阿武隈急行となった。いずれも中小規模のローカル鉄道事業者である。

これらの鉄道事業者は営業距離が比較的短く、運行本数も少ないため、輸送障害が1件増えるだけで順位がぐんと上昇してしまう。ただし、1位の銚子電鉄、2位の福井鉄道、3位の大井川鐵道の2015年度順位はそれぞれ、1位、4位、6位と、2年連続で列車走行キロ比輸送障害発生件数ランキングの上位に位置する鉄道事業者も存在する。

利用者減による経営難も故障の一因に


千葉県東部の銚子市を走る銚子電鉄の車両。老朽化が目立つ。地方の中小鉄道事業者は経営が厳しく、車両やインフラへの投資が十分にできない状況にあり、輸送障害の一因にもなっている(写真:Mika Sugisaki/PIXTA)

銚子電鉄の2016年度の輸送障害は3件。同社の安全報告書によれば、列車の起動ができなくなった、ブレーキが緩まなくなったといった車両故障が2件、変電所の設備故障が1件。いずれもインフラ設備の故障だ。地方の中小鉄道事業者が営む路線はどこも利用者減で経営が厳しい。車両やインフラを新造する資金もままならず、古い設備を使わざるをえない。その結果が輸送障害として現れているのだとしたら、問題は深刻だ。

件数では1〜6位を占めたJR各社は、列車走行キロ比では27位JR北海道(在来線)、65位JR東日本(在来線)、70位JR北海道(新幹線)、72位JR九州(在来線)、73位JR西日本(在来線)、74位JR東海(在来線)、98位JR東日本(新幹線)、107位JR九州(新幹線)、110位JR東海(新幹線)、JR西日本(新幹線)という結果になった。JR北海道が地方の中小鉄道事業者並みに輸送障害を起こしており、しかも設備が最新であるはずの北海道新幹線でも輸送障害のレベルがほかのエリアの新幹線を上回るという事実に愕然とさせられる。

大手私鉄の順位はどうか。最初にランキングに顔を出すのは69位の相模鉄道。次いで78位西日本鉄道、87位南海電気鉄道、90位京阪電気鉄道、91位東京急行電鉄、93位東武鉄道、94位京王電鉄、97位東京地下鉄、98位西武鉄道、100位阪神電気鉄道、101位近畿日本鉄道、104位京成電鉄、105位小田急電鉄、106位京浜急行電鉄、108位名古屋鉄道、109位阪急電鉄という順になった。さすがに中小私鉄よりも豊富な資金力を有し設備投資を積極的に行っているだけあり、ランキングでは優良な結果を収めた。

ただし、運休や30分以上の遅延が少ないとはいっても、30分未満の遅延が日常的に発生しているのは、1月9日付記事「最多は月19回!『遅延の多い路線』ランキング」で触れたとおりだ。国交省への届け出義務のある輸送障害が少ないという結果に満足せず、届け出義務のない30分未満の遅延を減らすことにも力を注ぐべきだろう。

雪国の鉄道でも部内原因による輸送障害ゼロも


吹雪の中を走る津軽鉄道。部内原因による輸送障害は2015年度、2016年度と2年連続で件数ゼロだった(写真:taka/PIXTA)

今回、部内原因による輸送障害がゼロだったのは48事業者だった。東京モノレール、湘南モノレールなどモノレール事業者が多い。青森県の津軽鉄道や秋田県の由利高原鉄道が2015年度、2016年度と2年連続して件数ゼロというのも特筆される。雪深い北国にも安全運行を実践している鉄道事業者が存在するのだ。資金力や規模の上にあぐらをかいてはならないことを教えてくれる。

【1月16日14時30分追記】初出時、「列車走行キロ比で見た部内原因による輸送障害件数ワーストランキング」の1位としていた京福電鉄は主要業務が路面電車、ケーブルカー、ロープウェイであるためランキングから除外し、以降の順位を繰り上げました。それに伴い本文も修正しました。